日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’21』(毎週日曜24:55~)では、障害を持つマネージャーと野球部員たちの絆を追った『陸と隼瀬とプレーボール―伊香高校野球部 終わらない夏―』(読売テレビ制作)を、きょう28日に放送する。
近畿の最北端・滋賀県木之本町にある県立伊香高校。公立高校ながら過去には甲子園に通算5回出場したこともある“古豪”だ。マネージャーの山本陸さん(18)は、先天性の脳性まひのため歩くことができず、両手を動かすのが精いっぱい。1年生の時に留年したため、現在2年生だ。
幼いころから野球を見るのが大好きだった陸さんを野球部に誘ったのは、ピッチャーの隼瀬一樹さん(18)。プロのスカウトマンからも熱い視線を集めるエースだ。1年生の時、すぐに打ち解けた2人は、時間さえあれば野球の話をしていた。「野球部に入りたいけど勇気がない」と打ち明けた陸さんに、隼瀬さんは「障害があるから野球部に入ったらいけないという理由はない」と伝え、監督との間に入り、陸さんの入部を取り付けた。
マネージャーになった陸さんは、ノックのボールを渡す役目。障害のためボールを持つことだけでも大変だが、病院でのリハビリや女子マネージャーのサポートで、立派に任務を果たすようになった。陸さんのボールは「絶対に落とせない!」部員はノック1本1本に全集中する。部員たちの士気はあがり、チームとして1つにまとまっていった。
しかし、2020年夏。新型コロナの影響で甲子園の大会は中止に。伊香高校は8月、滋賀県独自の大会に出場する機会を得たが、大会前、ピッチャーの隼瀬さんは体調を崩し、マウンドに立つことができなかった。エースなき大会での初戦敗退。でも、本当の意味での“対決”は、その直後に……陸さんは、隼瀬さんやチームの仲間に、1球1球、感謝の思いを込めて球を投げ込んで伝えた。「隼瀬ありがとう、僕を野球部に誘ってくれて」
春から、新たな進路へ向かうチームメイトたち。陸さんの存在に影響を受け、介護や医療の道を目指す人もいる。そして、エースの隼瀬さんは、大学に進学して野球を続けることを決めた。
新型コロナによる逆境で育まれた高校球児とマネージャーの絆。白球がつないだ“友情”と、それぞれの門出を伝える。