東武アーバンパークライン(野田線)が通る千葉県野田市では、鉄道によって市街地が分断され、市内に踏切が11カ所存在していた。踏切を除却して交通渋滞や踏切事故を防止し、歩行者の安全を確保することに加え、市街地の一体化による地域の活性化を図るため、清水公園駅から梅郷駅まで約2.9kmの区間で高架化工事が進められている。
2005年に都市計画が決定。2008年3月末に「東武野田線(野田市)連続立体交差事業」が認可された。仮線を設けた上で2013年度から高架橋の工事が開始され、いよいよ3月28日から高架線へ切替えとなる(荒天の場合は3月29日に変更)。これにより、愛宕駅は高架駅に生まれ変わる。この変更を前に、愛宕駅新駅舎の見学会が3月26日に行われた。
■帆を張り未来へ向かう様子を表現
愛宕駅の新駅舎は、「『現代から未来へ』~生まれ変わる愛宕~」をデザインコンセプトに、江戸川の流れに高瀬舟が帆を張って未来へと進むイメージを表現した。見学会では、「歴史遺産をイメージした野田市駅とともにデザインを考えました」との説明も。「愛宕駅はモダンなデザインにしたい」と考え、「河川の発展の様子を表現しました」とのことだった。
中央のホーム外壁は、船の帆をイメージした素材を用い、光を取り入れた明るい空間に。1階の外壁は船の形をあしらった。川の水面が揺れるような、緩やかに折り曲げた連続パネルのデザインとなっている。
■列車交換可能な2面2線のホームに
見学会が行われた3月26日の時点では、自動券売機や自動改札機、精算機など未設置だった。3月27日深夜の終電後に移設する予定だという。
3月28日の新駅舎開業後は、仮設通路をこれまでの地上線路上と柏方面への下り仮ホームを使用して東口へ行き来できるようにする。将来的にこれらは除却される。
ホーム階へ上がる際、階段の他にエスカレーターやエレベーターを使用でき、バリアフリーにもしっかり対応している。仮設駅舎では踏切の一方の側からしか入れず、しかも改札口の内外に階段があり、また大宮方面への上りホーム側に旧駅舎が存在したころも階段でしか行き来ができなかったが、すっかり変わることになった。
ホームにはベンチが備え付けられ、東武アーバンパークラインの列車の少し長い待ち時間にも対応できるようになっている。乗車位置は普通や区間急行、急行のみならず、特急「アーバンパークライナー」のものも表示されている。
今回の見学会では、線路に降りることもできた。まだ架線は銅色で、線路も鉄がすり減っていない。分岐器は大宮側・柏側ともにY型分岐だ。バラストも新しい。
改札階に戻り、トイレなどを見ると、温水洗浄便座が完備されている。女性用の洗面スペースに鏡が多く設置されていた。
■2023年度の事業完成をめざす
清水公園駅から梅郷駅まで高架線に切り替わると、道路16カ所が立体交差化される。今後は地上の仮線を撤去し、野田市駅の新駅舎は2023年度の使用開始をめざすとのこと。その際、野田市駅は2面4線となり、この連続立体交差事業は完成する。なお、今回の愛宕駅高架化工事と並行して行われている愛宕駅西口駅前広場は、2023年度の完成をめざし、整備を進めているところだった。
東武アーバンパークラインの愛宕駅は、旧来型の郊外私鉄スタイルの駅から、より多くの人にとって使いやすい駅へと変貌する。光の入る明るいデザインが、駅と利用者を未来へと向かわせることを期待したい。