日本各地の企業からノミネートされた食材・商品をコンテスト形式で審査し、優れたご当地食品を認定する「食べるJAPAN 美味アワード」授賞式が、3月15日に都内で開催された。授賞式には審査委員長を務めた服部学園理事長の服部幸應氏らが出席。「温泉ワインうなぎ蒲焼き」(甲信食糧)がグランプリに輝いた。

  • 「食べるJAPAN 美味アワード」授賞式が都内で開催された

    「食べるJAPAN 美味アワード」授賞式が都内で開催された

■アワードが認定した54品が発表

「美味アワード」は味やものづくりに優れた国内の食品を発掘し、認知向上・ブランド化を支援する「食べるJAPAN」の新たな取り組み。日本全国の生産者・中小食品製造業者・流通業者・生活者をつなぎ、各種基準を満たしたものを認定する。

審査対象は安定した品質を提供できる食品が中心で、大手メーカーのナショナル・ブランド商品は対象外。先月23日には予備審査を勝ち抜いたご当地食品142品を実食・審査する審査会が行われた。15名の審査員には服部氏や片岡護シェフ、「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」(2017年公開)の映画監督・滝田洋二郎氏など、日本トップクラスのシェフや有識者が名を連ねている。

  • グランプリに選ばれた「温泉ワインうなぎ蒲焼き」(甲信食糧株式会社)

    グランプリに選ばれた「温泉ワインうなぎ蒲焼き」(甲信食糧)

このほど認定されたのはグランプリ、準グランプリ、特別賞を含む54品。準グランプリには「TOFUMEAT」(フェリーチェ)、「さば塩辛」(岡富商店)、「ローズシロップ」(奥出雲薔薇園)が選ばれた。特別賞には「旨いにこだわり牡蠣一筋 かきすき」(寺本水産)、「北海道岩宇なまこ 特級 干なまこ「宮比」」(キットブルー)、「青森県産1本釣りイカ天日干」(赤羽屋)、「つがる豚ロース」(木村牧場)、「活蛸の炙り焼き」(マルカ高橋水産)が選出。

  • 「みかんグラノーラ」(株式会社ニュウズ)

    「みかんグラノーラ」(ニュウズ)

また、全国のお取り寄せグルメを紹介するサイト「おとりよせネット」賞として「炙りのどぐろめし」(ハートピアコーポレーション)が、マイナビニュース賞として「みかんグラノーラ」(ニュウズ)が受賞した。

  • 甲信食糧代表取締役・中込武文氏

    甲信食糧代表取締役・中込武文氏

「私どもの地域では20年ほど前から地産地消に取り組んでいますが、その中でも私たちは地域の文化・歴史・風土を踏まえたメニュー開発を続けてきました。そうした経緯もあり、運営委員会の考え方に深く共感するところがあったので、今回応募いたしました」とは、グランプリに輝いた「温泉ワインうなぎ蒲焼き」の企画・販売を行ってきた甲信食糧代表取締役・中込武文氏。

「プロの方々に試食していただき、評価されたことは大変嬉しく思います。第1回のグランプリということで、我々にできる役割もあるのかなと。有名なシェフの方たちと一緒にメニュー開発や全国から集まった商品とコラボできるような機会があれば、積極的に取り組みたいですね」と、喜びを語った。

美味しさや安心・安全はもちろん、「商品のストーリー・特徴」「コストパフォーマンス」「SDGsへの取り組み」もアワードの審査基準となっているが、環境に配慮した取り組みなどについては、次のように紹介した。「自社商品を通じた地域支援も20年近く行っていますが、ひとつは三國清三シェフや地元・山梨県の料理人たちを招き、小学校で食育に関する出張授業をここ10年ほどやっています。また、冷凍食品を取り扱う関係で物流センターがあるんですが、日本初の地中熱を使った施設であることなども評価いただけたのかなと」

■海外展開も視野に支援を継続

授賞式で片岡シェフは、「今回の『美味アワード』はかなり規模が大きくなり、地方の皆さんの努力の積み重ねが実ってきていると思っています。日本の食の文化を海外へ広めていくことは大切なことだと思いますし、これからの課題だと思います。海外展開を目標にさまざまな面で僕らも貢献していきたい」とコメント。

  • 審査委員を務めた東京・西麻布の人気イタリア料理店「リストランテアルポルト」の片岡護シェフ

    審査委員を務めた東京・西麻布の人気イタリア料理店「リストランテアルポルト」の片岡護シェフ

審査委員長を務めた服部氏は日本の食文化などが海外で高く評価されている一方、「残留農薬の問題などで日本の食品の輸出が難しいといった問題もある。60年前に比べて現在の日本の農業従事者は9分の一、漁業従事者は27分の一ほどで、カロリーベースの食料自給率は38%まで落ちている。人手不足を補うためにも化学肥料や農薬に依存しなければならないのが現状」と、課題についても指摘した。

  • 審査委員長を務めた料理評論家の服部幸應氏

    審査委員長を務めた服部学園理事長の服部幸應氏

「そうした中でも近年はEU基準に沿った形での改革の動きも国内であり、安全な食を提供される機会が増えていくことを期待しています。特に我々は味の良し悪しが基本にはありますが、食育の観点からもいいものを選ぶという視点を持ち続けていきたい」

また、授賞式後に受賞商品以外の印象的だった商品を服部氏に聞いたところ、「発酵食品でも素晴らしいものがけっこうありました。どうしても地味な面があるので、こうした賞を選ぶ際は入賞しにくいんですが、その地味さの中に素晴らしい旨味や美味しさにつながるものがある。今後はそうした食品もしっかり押さえていけるよう、授賞のジャンル分けなどの改善を進めていきたい」と述べていた。

今後、「食べるJAPAN」は受賞・認定された各種商品のPR支援・販路開拓支援に注力。子ども食堂への寄贈といった社会貢献活動を通じ、アワードの周知なども行っていくという。