ビジネスシーンにおいて自分の性質や決意を表す場合に、四文字熟語を使って表現することがあります。例えば、まっすぐ目的に突き進んでいく行動力や実行力を取引先に買ってもらうために、「猪突猛進」を使うのもそのひとつです。
しかしながら、猪突猛進はそのまま使ってしまうと「この方は向こう見ずに行動するのかもしれない」と、取引先から不安に思われかねず、注意が必要な言葉です。本稿では「猪突猛進」の意味や類語、英語表現を紹介します。言葉の正しい意味や使い方を理解して、ビジネスシーンで良い方向に活用してみましょう。
「猪突猛進」の意味とは
「猪突猛進」とは、他のことについて考えることなく、ただひたすら目標を目指し全力で突き進むという意味の言葉です。読み方は「ちょとつもうしん」で、後先を考えずにがむしゃらに行動を起こすという性質を表すときに使います。
また、猪年には「猪」という漢字が含まれていることから、今年の抱負という意味で年賀状に使われることもあります。
「猪突猛進」の由来
「猪突猛進」は、動物のイノシシの行動が由来となっています。イノシシは、標的を定めると脇目もふらずに標的に向かって真っすぐに突き進みます。こうしたイノシシの行動から「猪突猛進」という四字熟語ができました。
ビジネスシーンにおける「猪突猛進」の使い方と例文
性格や勢いのあることを表現したいときによく使われる「猪突猛進」は、ビジネスシーンでもよく耳にします。具体的にどのように場面で使われるのか、例文とともに紹介します。
猪突猛進する
猪突猛進を動詞化した「猪突猛進する」は、使い勝手のいい言葉です。
<例文>
- 彼は猪突猛進するところはあるが、実行力があるため信頼できる。
- 猪突猛進すると失敗も多くなるため注意して業務を遂行しよう。
最初の例文では、彼の性格を表現するため、ポジティブな意味として使っています。一方後者の例文では、勢いのまま仕事しないようにといった注意喚起の意味で使われています。
猪突猛進型の行動
「猪突猛進型の行動」は、ある行動を形容した使い方です。
<例文>
- 業務の早い遂行には、時に猪突猛進型の行動を取ることも必要だ。
- 猪突猛進型の行動をする方ばかりが参加しているチームのため、気持ちがバラバラで一つにまとまらない。
最初の例文では、猪突猛進は勢いを表す意味で使われています。そして後者の例文では、チームの人員がどのようなタイプのメンバーであるのか、性格を表現するために使われています。
「猪突猛進」を使う際の注意点
「猪突猛進」は、相手によって受け止め方や捉え方に違いが生じ得る言葉です。そのため、自分の長所をアピールしたいと思って使う場合には、使用時の注意点を知ってから、正しく使いわけましょう。
例えば、「がむしゃらに突き進んでいくという性質」をアピールするために使いたい場合は、行動力や実行力があることや裏表がないことを猪突猛進に絡めて文章で表現できます。ただし、後先を考えない軽薄さがあるといった印象を相手に植え付けないよう、前後の文脈には工夫が必要です。
「猪突猛進」の類語
「猪突猛進」の意味と似ている四字熟語はいくつかあります。猪突猛進を使うと「向こう見ずだと」誤解されてしまいそうな場面などに類語で言い換えれば、こちらの意図が正しく伝えられるでしょう。そのため、猪突猛進の類語の意味やニュアンスを理解することは大切です。
勇往邁進
「勇往邁進」(ゆうおうまいしん)とは、脇目もふらず前進するという意味の言葉です。勇往邁進は猪突猛進と違い、誤解を与えることなく良い意味として使えます。
また、勇往邁進と同じくわき目もふらず前進していくといった意味の言葉に「直往邁進」もあるので、あわせて覚えておきましょう。
<例文>
- 私が尊敬している上司はどんなことでも勇往邁進していた。
- 夢を叶えるためには勇往邁進しかないだろう。
直情径行
「直情径行」(ちょくじょうけいこう)とは、自分の感情のままに行動するという意味の言葉です。
直情径行は、他人や周囲の事情を考慮せず、自分の思ったままに行動するときに使われることが多いため、使い方によっては誤解を与えかねない言葉なので注意しましょう。
<例文>
- 直情径行なところは私の短所だ。
- 直情径行なリーダーの元ではこの案件は暗礁に乗るだろう。
一心不乱
「一心不乱」(いっしんふらん)とは、心を乱すことなく一つのことに集中するという意味の言葉です。元は仏教の言葉で、悟りを開くために仏道に精進する姿を表現したことが由来となったとされています。
<例文>
- 志望校に合格するため一心不乱に勉強した。
- 無事であるよう一心不乱に祈る。
一意専心
「一意専心」(いちいせんしん)とは、他に心を動かさずひたすらに一つのことへ集中するという意味の言葉です。
上述した「一心不乱」に似ていますが、「覚悟をもって集中する」ことが一心不乱であり、一意専心にはそのニュアンスはありません。
<例文>
- これからも一意専心の気持ちで業務にあたります。
- 一意専心の思いで努力する。
「猪突猛進」の対義語
「猪突猛進」の対義語は、「落ち着いてじっくりと考えている様子」を表現する言葉となります。対義語を知ることで、自身の表現力の幅も広がるため、積極的に覚えましょう。
沈思黙考
「沈思黙考」(ちんしもっこう)とは、黙ってじっくり深く物事を考えるという意味の言葉です。口語ではあまり使わない言葉であるため、文書やメールなどで使いましょう。
<例文>
- 打開策を沈思黙考する。
- 沈思黙考した後のアイデアを提案した。
深慮遠謀
「深慮遠謀」(しんりょえんぼう)とは、遠い先々のことまで考えて計画し準備をするという意味の言葉です。
この言葉はビジネス会話の中で用いると「ぬかりなく戦略を立てる」といった意味が強くなります。そのため、場合によってはネガティブな意味に取られてしまうこともあるので、使う相手やシーンは注意しましょう。
<例文>
- 取引先は深慮遠謀で考えがつかめない。
- プロジェクトは深慮遠謀に進めていく必要がある。
「猪突猛進」の英語表現
「猪突猛進」を英語で表現するときは、「向こう見ず」や「無謀」といった意味をあらわす英単語を使うとニュアンスが伝わります。ここからは、それぞれ例文を交えて猪突猛進の英語表現を解説していきます。
rush recklessly
rushは日本語で「突進」、recklesslyは日本語で「無謀」という意味です。そのため、「rush recklessly」を直訳すると「無謀に突進する」といった日本語の意味になります。
<例文>
- rush recklessly action(猪突猛進な行動)
make a headlong rush
headlongは「向こう見ず」という意味の英単語です。そのため猪突猛進は、「make a headlong rush」という英語表現もできます。
<例文>
- He is the type who make a headlong rush.(彼は猪突猛進する性格だ)
foolhardy
「foolhardy」は「無鉄砲」という意味の英単語です。猪突猛進の「目標に向かって突き進む」というニュアンスとは若干意味が異なります。無鉄砲は「先のことを考えずに行動する」という意味があるため、使い方には注意しましょう。
<例文>
- Don't go foolhardy.(猪突猛進しないように)
猪突猛進を正しく使おう
他のことを考えず目標に向かって進んでいくという意味をもつ「猪突猛進」は、ビジネスシーンでも活用される言葉です。
注意点としては、猪突猛進には「向こう見ずな性格」と相手から不安に思われかねない言葉でもある点です。誤解を与えそうと思ったときは、猪突猛進の代わりに類語を活用してみましょう。