皆さん、キックボードに乗ったことはありますか? 今は小学生くらいの子どもが乗っている姿をよく目にしますね。
ところが、ヨーロッパやアメリカでは電動キックボードがシェアサービスとして普及し、街中でもよく見かけるようです。実際、コロナ禍前に訪れたベルギーの首都ブリュッセルでは、通勤時間にキックボード「Lime」で街中を駆け抜ける大人を多数目撃しました。
ただ、日本では道路運送車両法で定められた安全基準を満たす必要があるなど、公道を走行できません。
裏原でキックボードを知る
ところが、警視庁が電動キックボードの関連法を整備すると発表するなど規制緩和の動きが。そんな中、電動キックボード「FreeMile」(17万3,800円)を試乗する機会がありました。いろいろと話を聞けたので紹介します。
筆者がキックボードを初めて見たのは90年代後半、いわゆる裏原ブームの時期に、ストリート系のショップ店員さんたちが乗っていました。
当時(今でも)ミーハーだったので、どこぞの店で購入し、周囲の目も気にせず、ガー・ガー乗っていましたね。たしか、すぐに熱が冷め、引っ越しの際に捨てた記憶が。
この時は、ホイールが小さいので路面からの衝撃がモロにくるのと、小さい段差でも引っかかるなど、乗り心地は正直良くなかったです。しかしFreeMileのホイールは直径25.4、幅8センチと大型。悪路でも安定して走ることができます。
またそれ以外にも、日本では普及に対する課題が幾つかあるようです。
電動キックボードが日本で普及しない背景
本製品を販売するクリエイティブジャパン 代表取締役CEO 三本茜さんに詳しい話を聞いてみました。
――日本で海外ほど普及しないのはなぜでしょうか。
三本さん: まずは法規制です。日本では原動機付自転車(原付)にあたるので、ナンバー登録が必要。あと、個人的に一番煩わしいと思うのはヘルメット着用でしょうね。
ここで注目したいのは、警察庁が2月4日、シェアリング事業者が認可を受けている地域に限り、電動キックボードのヘルメット着用無しでの走行を認可する方針を明らかにしたこと。
電動キックボードを小型特殊自動車(トラクターやフォークリフトなど)に位置付けることで、認可区間で「ヘルメットは任意」となるのです。
なお、最高時速は、原動機付自転車扱い時の20キロから小型特殊車両では15キロになります。この流れを受けて、2021年4月より公道を時速15キロの速度制限で、ヘルメット無しでの実証実験が開始。これが追い風になるのでは? と三本さんは期待を寄せていました。
――他に何がありますか?
三本さん: 目に付くのがクオリティの低さです。海外製品は自転車と同じ扱いなので、ミラーやブレーキが無いなど「乗り心地<耐久性」がほとんど。例えばブレーキの効きがよくなく、坂道の多い日本では速度制御に不安を覚えることあります。またホイールも小さいですよね。
これらの課題を解消し、「誰もが安心して、安全に乗れて、便利な楽しい乗り物」を実現したいと想いを語ってくれました。
電動キックボードで日比谷を駆ける
ということで、試乗してみました!なお筆者、原付は未経験。果たしてうまく扱えるのか? 一抹の不安を持ち、ドキドキしながら臨みます。今回走ったルートは2ブロックをぐるっと回るルート。
ルートを走る前に、人のいない歩道でレクチャーを受けましたが、操作はいたって簡単。イグニッションキーでスイッチを入れ、軸足を車体横のステップに乗せ、軽くグリップスロットアクセルを回すと、スッと走り始めます。
おっかなびっくり、へっぴり腰状態で乗る筆者でしたが、歩道で何度か乗るうちにバランス感覚をつかめました。思っていたよりも、スピード切り替えや、ウインカーも分かりやすく、操作に戸惑うのも最初だけ。これはいいですね。
歩道で数回左右のターンを行い、スムーズに曲がったり止まったりすることを確認し、その流れで公道デビューしましたよ。
インストラクターの先導に続き走っていると、春の暖かさと日差しが気持ちいい! 交通量はそれなりですが、前後輪のディスクブレーキも効きがよく、危なげなく車間距離を保ちながら短い旅を楽しめました。
メンテナンスも手間いらず
実際乗ってみると、確かに快適です。ちなみにメンテナンスはどうなんでしょう。これも聞いてみました。
三本さん: 例えばウインカーが切れたとしても、取り外せるので交換できます。見える電気系統の部品はだいたい取り外しでき、公式部品を注文すれば自分で取り替えして修理できます。
専門店や修理店に出さないので、時間や修理代をそこまで意識せずにすむのはいいですね。また、これにより「修理で預けるのが手間、交換しないまま乗ってしまおう」という自分勝手なユーザーを出すことも防げそうです。
また肝となるバッテリーも取り外し可能で、家の中で充電できます。
電動キックボードを高齢者の足に
オジサンの筆者でも乗りやすいと思えた本製品。しかし、三本さんはまだ「年齢・性別問わず、誰もが」乗れるものではなく、比較的男性が乗るイメージだと言います。
――万人向けではない理由は何でしょうか。
三本さん: 全体的に無骨な印象はありますよね(笑)、そこが男性向きかなと思います。あと、二輪だと自立しないので、安定性で万全とは言えません。私は老若男女問わず乗れる形にしたい。ですから、三輪電動キックボードを現在開発しています。
実は同社、数年前に私有地や施設内モデルとして、公道走行はできない三輪の電動キックボードを発表していました。それに満足できず、改めて新機種を開発する三本さん。その情熱の理由は?
――あくまで公道走行にこだわるのはなぜでしょう。
三本さん:電動キックボードを自動車免許返納後の高齢者の足として、通院や近所への外出に使ってもらいたいのが私の願い。それにはやはり三輪なのです。信号待ちでも、自立するなら降りる必要もありませんから。
子ども向けのおもちゃでは? と侮るなかれ。次世代パーソナルモビリティとして期待できる手ごたえを、三本さんは感じています。
近々発表されると言うので、こちらも楽しみですね。