キリンは、「キリン 生茶」「キリン 生茶 ほうじ煎茶」から、再生ペット樹脂を100%使用した「R100 ペットボトル」採用商品と、ラベルレス商品を新たに発売する。それにともない、新商品発表と、キリンの「環境・容器包装」に関するCSV活動の報告を3月19日に実施した。
「生茶」でプラスチックの社会課題解決への貢献を目指す
同社では、再生ペット樹脂を100%使用した「R100 ペットボトル」を採用した「キリン 生茶」「キリン 生茶 ほうじ煎茶」(各600ml)を3月中旬より全国のコンビニエンスストアで、また「キリン 生茶 ラベルレス6本パック」「キリン 生茶 ほうじ煎茶 ラベルレス6本パック」を全国の量販店で、「キリン 生茶 ラベルレス」と「キリン 生茶 ほうじ煎茶 ラベルレス」をEC限定にて、それぞれ3月23日より発売する。
今回、「生」ならではのおいしさや、現代的でナチュラルなイメージを持つ「生茶」ブランドから環境に配慮した商品を発売することで、従来の愛飲層に加え、若年層を含めた幅広いユーザーの共感を得てさらなる接点拡大を狙う。また、今後は「生茶」をCSVのフラッグシップブランドとし、無糖茶市場の活性化への貢献とともに、プラスチックに関する社会課題解決への貢献も目指すという。
今回の「R100 ペットボトル」採用商品とラベルレス商品の発売により、プラスチック樹脂の使用量は年間約1,400トン、CO2排出量は年間約1,300トンの削減が可能となる(※製造計画に基づく同社試算)。
また、キリングループでは、CSVにおける「環境」の取り組みの一環として、2020年2月に「キリングループ 環境 ビジョン 2050」を策定、「容器包装を持続可能に循環している社会」を目指すことを宣言している。そのうちの「キリングループ プラスチックポリシー」では、2027年までに「日本国内におけるPET樹脂使用量の50%をリサイクル樹脂にする」ことを掲げている。
キリンビバレッジ マーケティング部ブランド担当 部長代理 松井のり子氏は「今起きている地球規模の問題に対して生茶ができることは限られているかもしれませんが、始めないと始まらない。生茶は100 年後も健やかな自然と一緒においしさを届け続けるために、できることから始めていきます」とコメントを寄せた。
ペットボトルのリサイクルが抱える課題とは?
また、キリンビバレッジ 企画部企画担当 担当部長 大谷浩世氏より「企業を取り巻くペットボトルに関する環境課題」に関する解説が、キリンホールディングス パッケージイノベーション研究所 主務 大久保辰則氏より「キリンのCSV『環境:容器包装』に関する取り組み」の発表が行われた。
海洋プラスチック問題を機に、プラスチックを取り巻く環境課題が注目されている。しかし、プラスチック製品の生産量に占める割合や、漂流ゴミ(プラスチック類)に占める割合、またリサイクル・熱回収による有効利用率を見ると、ペットボトルは環境課題の中では優秀な容器であり、むやみに使用を止めるのではなく、科学的・合理的に考える必要があると大谷氏は述べた。
一方、日本の課題としては、世界最高水準のリサイクル率を維持しているものの、多くのペットボトルは1回しかリサイクルされておらず「ペットボトルの持続的な環境」は未完成だという。ペットボトルからペットボトル(ボトルtoボトル)へのリサイクル率はわずか12.5%であり、大半は衣類の繊維やフィルム・トレイへのリサイクル、燃料として使われ、再びペットボトルに戻ることはない。
「ボトルtoボトル」が進まない課題として、大きく2つ挙げられた。ひとつはペットボトルの回収時にたばこの袋やゴミなど異物が混入することで、再生プロセスのコスト増や品質・量に悪影響があること。もうひとつは現在のリサイクル技術の主流「メカニカルリサイクル」において「循環利用」に課題があることだ。「メカニカルリサイクル」ではリサイクル毎にペット樹脂の品質が下がり、さらにペットボトル以外のペット製品からペットボトルに戻せないという。
「プラスチックが循環し続ける社会」の実現を目指すキリングループ・キリンビバレッジでは、この課題を受け、三菱ケミカルと共同プロジェクトを開始している。このプロジェクトでは、ペット製品からペットボトルへのリサイクルができ、さらに繰り返し品質も維持し続けられる「ケミカルリサイクル」の技術検討・事業化を行う。
「ケミカルリサイクル」の実現によりリサイクル量の拡大が可能となり、廃ペットボトルのみならず廃ペットを回収し、ペットボトルに使用されるペット樹脂約63万トンをふくむ、約191万トンのペット樹脂がリサイクルの対象になる。
大久保氏は「ペットボトル製品化の技術・経験を持つキリンと、ペット樹脂・製品製造の技術と経験を持つ三菱ケミカルが主要技術をカバーし、現状の課題となる『廃ペットボトルの回収量不足』『ペットボトル"解重合"技術の未確立』を解決していきます。『キリングループ プラスチックポリシー』の目標達成に向け、ケミカルリサイクル再生ペットボトルの使用開始を目指す」と語った。