ビジネスシーンにおいて用いられる「スコープ」という言葉について紹介します。スコープはうまく活用できれば、日々の業務から無駄やミスをなくし、プロジェクトを成功させる鍵となるのです。
スコープの意味を正しく理解し、実務に活用できるようになりましょう。
スコープの意味
スコープ(scope)とは、範囲や視野という意味を持つ単語です。しかしITではシステムの影響範囲のこと、ビジネスではプロジェクトの作業範囲のことなど、使う場面で微妙にニュアンスが異なります。使われる場面によって違うスコープの意味について理解しましょう。
ビジネスシーンでは
ビジネスシーンにおいて、基本的にスコープは「範囲」という意味で使われます。
例えば、プロジェクトや計画などでその範囲を設定する際、スコープを用います。スコープをしっかり定義することで、手を広げ過ぎて想定より規模が大きくなってしまった……といった失敗がなくなるのです。
IT業界では
特にIT業界においては、スコープは「影響範囲」という意味でも使われます。
プログラミングの際に使用し、定義されている変数や関数などの名前を参照できる範囲のことを指します。その結果スコープ外からは、変数や関数が認識されなくなってしまいます。
スコープの本来の意味でもある「見る」というイメージで捉えると分かりやすいです。つまり、「見える範囲」という意味になります。
スコープの英語での意味
スコープの英語表記は「scope」です。意味は、「(知力・研究・活動などの及ぶ)範囲」や「視野」、「(活動や思考などを働かせる)余地」や「機会」という意味を持ちます。
<例文>
- Expand the scope.(範囲を拡大する)
- A scheme of vast scope.(膨大な計画書)
ビジネスでも使われるスコープのIT用語
スコープと言っても、「プロダクトスコープ」や「プロジェクトスコープ」など、様々な用語があります。スコープする対象によって、用語の意味が変わってくるのです。それぞれの意味や使い方の違いをしっかり把握していきましょう。
プロダクトスコープ
「プロダクトスコープ」とは、プロジェクトが生み出す成果物を定義したものです。工程毎に作成する仕様書や作成されたシステム等、実際に作成されたすべての物が対象となります。実際の成果物であるため、プロジェクトの達成度が把握しやすいことが特徴です。そのため、「成果物スコープ」と呼ばれることもあります。
プロダクトスコープを定義することで、必要なもの、作成するもの、達成することがしっかりと整理されるため、作成物の無駄や漏れをなくすことが可能です。
プロジェクトスコープ
「プロジェクトスコープ」とは、プロジェクトで成果物を生み出すための課程にある作業を定義したものです。
工程毎に、必要な作業を明確化することで、すべての作業が対象となります。どのような作業が必要となるのか、一つひとつの工程を細分化し、省略することなくすべて明記していきます。そのため、「作業スコープ」と呼ばれることもあります。
プロジェクトスコープを定義することで、作業に漏れをなくし、余分な作業をなくすことも可能です。
スコープマネジメント
「スコープマネジメント」とは、プロジェクトを成功させるために、プロダクトスコープでゴールをしっかりと見据え、プロジェクトスコープで作業過程でのブレや漏れが出ないようにする、管理手法のことを指します。
つまり、プロダクトスコープとして必要な成果物を洗い出し、プロジェクトスコープとして必要な作業を洗い出すことです。マネジメントは、プロジェクトの成否に大きく影響を与えるため、とても重要な項目です。
ビジネスシーンにおけるスコープの使用例
スコープは、様々な場面で登場し、多様な表現方法があります。ビジネスシーンにおける、それぞれのスコープの意味や使い方について例文を紹介します。
スコープを設定
「スコープを設定する」という言葉は、プロジェクトスコープやプロダクトスコープなど、スコープを作成し設定することを指します。
<使用例>
- プロジェクトを進める上で、スコープを設定することは、非常に有効だ。
- チームで共有するためのスコープを設定する。
スコープ外
「スコープ外」とい言葉は、プロジェクトが進んでいく中でよく使われる表現です。設定されたプロジェクトスコープの範囲外となるものを指しており、プロジェクトで行う作業の範疇にない、別の作業をスコープ外と呼びます。
<使用例>
- この作業はスコープ外です。
- スコープ外の作業を独断で進めてはいけない。
スコープを可視化
「スコープの可視化」という言葉は、設定したスコープを書類や資料として共有できるものにしておくことを意味します。これらを、担当者や関係者に共有しておくことで、認識のズレをなくし、変更が必要となった場合にも情報を比較しやすくなります。
<使用例>
- プロジェクトのスコープを可視化したため、関係各位へ共有しておく。
ビジネスでスコープを確定する際のプロセス
スコープを確定する際、成果物の質や量、タスク量などをすべて把握する必要があります。そのためには、プロジェクトの成果物に対する要求を明確にすること、そして要求を達成するための要件を定義しなければなりません。
これらのプロセスをクリアしないと、曖昧なスコープとなってしまい、プロジェクトの成否に影響を及ぼしてしまいます。では、どのようなプロセスを踏むべきなのでしょうか。
要求を明確にすること
プロジェクトには、目的や目標があります。しかし、これらが本筋からずれていたり、目標が明確でなかったりした場合、曖昧なスコープしかできません。本当の目標を探り、要求を整理して、明確にしましょう。
例えば、「ウェブサイトを作りたい」という要望があっても、それがどのような目的のサイトなのか、これだけではわかりません。通販サイトとしての役割なのか、お店紹介としての役割なのか、同じウェブサイトでも大きく目的が変わってきます。しっかりと要求を明確にすることが重要なのです。
要件を定義すること
プロジェクトでは、期限や予算、技術など様々な制限があり、その制限の範囲内で可能なこと、つまりは要件を定義しなければなりません。
要件定義を行い共有しておかなければ、希望していた目的を達せられない等のトラブルを招いてしまいます。また、要件定義は際限なく出てきてしまうため、期限を決めて行うことが重要です。
例えば、「ウェブサイトを作りたい」という要望があった場合に、スマートフォン専用の表示を用いて閲覧ができるようにするか、パソコン用の閲覧のみにするかだと、大きく作業が変わってきてしまいます。
要件によって作業が増減するため、しっかりと定義し把握することが重要となります。
スコープを確定した時の注意点
スコープを確定した時に注意すべき点として、スコープの確定とプロジェクトマネジメントは別であるということを明確に持つようにしましょう。スコープは範囲であり、その範囲が的確にできたとしても、プロジェクトは必ずしもその通りに進むとは限りません。
スコープ確定後、実際の作業スケジュール管理や、問題が起きた際の課題解決管理など、プロジェクトマネジメントが的確に行われなければ、プロジェクトを成功へと導くことは難しいです。
プロジェクトマネジメントの役割が曖昧だと、プロジェクト期限に間に合わなかったり、不具合が解決できなかったり、様々な問題が起きてしまうかもしれません。そのようなことにならないように、注意して進めていきましょう。
スコープの正しい意味や活用法を理解して使おう
スコープは、プロジェクトを成功に導くために重要であることが分かりました。
成果物を定義したプロダクトスコープと作業を定義したプロジェクトスコープは、共にスムーズな実務を行うためにも活用したいスコープです。また、これらを使用したマネジメントも、漏れやズレのない成果物への重要な手法と言えます。
スコープを確定させる上で、やりたいことと目標を明確にする要求の洗い出しや、要求からやれることを絞りだす要件定義も、とても重要なステップです。その際には、スコープの確定とプロジェクトマネジメントとは違う、という点を意識しておきましょう。