歌舞伎俳優の市川海老蔵が、主演を務めるフジテレビ系スペシャルドラマ『桶狭間~織田信長 覇王の誕生~』(26日21:00~23:32)への思いを語った。
――信長を演じてみての感想。
信長が斎藤道三に言う台本のセリフが印象的で、そのセリフに私自身が感化されました。人の価値観の大きさの違いにすごく影響を受ける、求めるべきものは何なのかっていう。戦も商いも明日すらもわからないのだから、明日を求めてはいけないのだという話を信長と道三が二人でします。明日を求めてしまうとみな、どんどんいろいろなことをかかえこんで苦しくなってしまう。それももちろんあるべき姿ではあるけれど、信長の言っていることは、求めるべきことは、自分が死んだ後に明るいすてきな未来がくること。そこには変化があるし、みんな変化をこわがるけれど、変化をこわがらずに、自分の滅びた後のことを想像することを求めるという。あれはすごいセリフだと思いました。
――今川義元とのシーンはいかがでしたか。
今川義元という、ものすごい大きな存在と対峙(たいじ)せざるをえない状況になるときに、自分が負けるか、勝つか、限りなく勝つ可能性が低い中で勝ちを探りだす。それは信長が今まで経験してきたことや、生きてきたことがそこにつながっていくのでしょう。義元にはもちろん勝つつもりで挑むのですが、その強い思いの結果、勝ってしまったのだと思います。そしてこの勝利は“勝った”ということだけではなく、時代が変わる瞬間を作った、はじめて次の時代を背負うことを体感したシーン。彼がずっと望んでいたことでそれを実際やったことで、すごく歴史が動いた瞬間だと思います。あの瞬間に、冷静になることを知るというか、ひとつ大人になって、ものすごくわずかな数秒もない刹那に信長が成長する、そういう大事なシーンでもあったし、そういう表現をしたつもりです。セリフも、“変わらないのだったらこの世ごと討ち取ってしまえばいい、受け継ぐにあらず。新しい世は自分で創り出すものだ”と義元に言うのですが、そこは(脚本家の)大森さんが私自身の襲名に対して、意識して書かれたのかと感じました。三上博史さんとの共演は1日ではありましたが、わずかな時間でわかりあえる瞬間があったと感じました。そこが画面にうまく出ているといいと思っています。
――佐藤浩市さんとの初共演の感想。
(お父様も同じ役者ということで)若い時から自分の信念をしっかり持たれている方とご一緒できたことはうれしかったです。そして、娘のぼたん(帰蝶)との共演シーンがありましたが、終わった後に私に優しい言葉をかけてくれて。“彼女の(四代目市川ぼたん襲名披露後の)デビュー作で相手役ができて、私も歴史にひとつ名を連ねることができました。”と言ってくださったことがうれしかったです。
――ぼたんさん、勸玄さんの出演に関して。
今回の出演は自分たちで決めさせました。プロデューサーにどうするか聞かれて“やります”と自分で言ったので、私は受け入れただけです。親と子ではなく、いち俳優さん、いち女優さんとして接したと思っています。
――他の共演者の印象はいかがでしたか?
松田龍平さんは、彼の世界観が面白いと思いましたし、かわいらしい面もときどきのぞかせていました。中尾明慶さんは、まっすぐでいいお芝居をされていたと思います。今回中尾さんとは、京都では、一番一緒にご飯を食べる機会をいただきました。
――視聴者の皆様にメッセージをお願いします。
今の時代に必要なヒントをこの『桶狭間』という作品の中の織田信長は持っていると思います。生きるということとか、さまざまなことが起こる世の中でどうあるべきかだとか、そういうヒントがこの人の生き方の中にはあるなと思います。信長の人としてのあり方、考え方、存在、周りの巻き込み方は共感できる部分がたくさんあると思いますので、そういうところを視聴者の方には感じていただきたいです。織田信長、今川義元、斎藤道三、木下藤吉郎、濃姫・・・彼らが生きてきた歴史の中で、信長という、変化を求めた一人のカリスマが昇りつめていく。その姿は、変化が必要とされている今の世の中でも何かの役にたつのではないかと思います。
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