APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載したミラーレスを展開する富士フイルムのXシリーズ。APS-Cフォーマットのメリットのひとつといえば、フルサイズのカメラや対応するレンズと比較して小型軽量化が容易なことです。今回紹介する「XF70-300mm F4-5.6 R LM OIS WR」も、超望遠域をカバーする4.2倍の望遠ズームながら、コンパクトに仕上がった交換レンズです。加えて、最大5.5段分の補正効果が得られる光学式手ブレ補正機構の搭載と、防塵防滴耐低温仕様としているのも本レンズのポイントとなります。
コンパクトな設計ながらスキのない描写を見せる
XF70-300mm F4-5.6 R LM OIS WRは、最大径φ75mm、全長はもっとも短いワイド端時で132.5mm、もっとも長いテレ端時で205.5mm、質量については580gとしています。フルサイズ判換算で107~457mm相当の画角をカバーするレンズとしては、きわめてコンパクトと述べてよいでしょう。今回、同社の最新ミラーレス「X-T4」で本レンズのトライアルを行いましたが、望遠ズームとして絶妙な重量的バランスで扱いやすく感じることが多かったように思えます。なお、フィルター径はφ67mmとしています。
レンズ構成は12群17枚。このなかには、非球面レンズ1枚とEDレンズ2枚が含まれます。同社の交換レンズはクラスや価格にかかわらず、いずれも高次元で優れた写りをするものばかりですが、本レンズも例外ではありません。写りの詳細については掲載した作例を見てもらえれば分かるとおり、絞り開放からエッジが立ちコントラストも上々。画面周辺部の写りについても、ズーム全域でしっかり結像しており、スキを感じさせない描写です。赤バッジを付ける上位クラスのモデルとそん色ない写りが楽しめるといっても過言ではないでしょう。
テレコンバーターに対応しているところも見逃せないところ。1.4倍の「XF1.4× TC WR」、2倍の「XF2× TC WR」のどちらにも対応しており、1.4倍のテレ端の場合420mm(35mm判換算640mm相当)、2倍の場合で600mm(同914mm相当)の撮影が楽しめます。強力な光学式の手ブレ補正機構により、どの焦点距離でも手持ちでの撮影を容易としているところも心強く感じられます。
強力な手ブレ補正と優れた近接撮影も注目
手ブレ補正機構は、前述のとおり補正効果は5.5段分としています。Xシリーズのミラーレスのなかには、センサーシフト方式のボディ内手ブレ補正機構を搭載するX-T4やX-S10などがありますが、シリーズ全体から見ればまだまだ少数派。そのようなことを考慮すると、光学式の手ブレ補正機構の搭載は当然のことでしょう。まして、超望遠域をカバーするレンズであれば、今やマストと言わざるを得ません。もちろん、センサーシフト方式の手ブレ補正機構を搭載する前述のカメラであれば、より強力で安定した補正効果が得られることも特徴です。
近接撮影もこのレンズの得意分野です。最短撮影距離はズーム全域で0.83m。テレ端では約0.33倍としており、間近にいる野鳥や水面に浮かぶハスの花など、寄ることが難しい被写体でもテレマクロレンズとして大きく引き寄せることができます。レンズ鏡筒は、このレンズの名称に付く“WR”でも分かる通り、防塵防滴で耐低温仕様としています。要所にシーリングが施され、雨天時での撮影でもためらうことなく撮影に臨めるのはたいへんありがたく感じられます。ちなみに、本レンズの焦点距離をワイド寄りに振ったXマウントの望遠ズームとして「XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS」が以前から存在していますが、WRの称号は付かないので、気象条件等を問わない撮影が多いようであれば迷わず本レンズを選択するのがベストでしょう。
得られる画角を改めて考えると、テレ端457mm相当の画角はたいへん魅力的に感じられます。しかもテレコンバーターを使えば、これまで手の届かなかったような領域の画角も手軽に得られ、スポーツや野鳥、鉄道など、超望遠レンズを必要とすることの多い被写体の撮影では重宝すること請け合いです。実売価格は税込み108,900円。筆者個人としては、焦点距離や写りなど考慮すると決して高くないように思えますが、この記事を読んだ皆さんはいかがでしょうか。