「配布」と「配付」、違いをご存知でしょうか。
似た言葉である「配布」と「配付」ですが、この2つの言葉には明確な使い分けがあります。
同じ「配る」という言葉を用いる言葉ですが、その後ろにつく漢字によって、配る対象が変わるのです。そのため、意味を考えずに使用してしまった際に、意味の取り違えなどが起こる可能性もあります。
この記事では、「配布」と「配付」の使い分けや意味の違い、英語表現について解説します。2つの言葉の違いを把握し、ビジネスシーンをはじめとする多くの場面で的確に使っていきましょう。
「配布」と「配付」の違いとは
配布とは、「広く行き渡るように配ること」という意味の言葉です。一方、配付とは、「1人ずつに配る」という意味の言葉であり、両者には「配る相手」の違いがあります。
例えば、配布はチラシ配りや学校でのプリントなど不特定多数の人に使用しますが、配付は特定のイベント参加者や会議の出席者などに使用します。
配布の意味
「配布」とは、学校で全生徒にプリントを配ったり、政府などが全国民にものやお金を配ったりするときに使います。
「配布」の「布」という漢字には、一面に広げて行き渡らせるという意味があるため、「配布」という言葉は、不特定多数の大勢に配るという意味になりました。
配付の意味
次に、「配付」の意味について見ていきましょう。
「配付」とは、手渡しで数名に手紙を配ったり、飲食店や小売店などで整理券を配ったりする場合などの「特定の人たちに配る」ことを指します。
「配付」の「付」という漢字は、「手と手で人にものを渡す」という意味です。そのため、「配付」という言葉は、「限られた人たちだけに」紙などの資料を配るという意味の言葉になりました。
「配布」と「配付」の使い分け・例文
何気なく使っていた言葉も、意味をきちんと知ることで正しく使用することが可能になります。例文を知ることで、具体的にどのような場面で使えば良いのか、より理解も深まるのではないでしょうか。
ここからは、「配布」と「配付」それぞれの例文を紹介していきます。
配布の例文
ここからは、「チラシ」「イベントでのサンプル」を使った「配布」の例文を紹介します。実際に使われる場面を想定しながら考えてみましょう。
チラシを配布する
チラシは、「限られた関係者」ではなく「不特定多数の人たち」に配布するものです。そのため、チラシを配るときは「配布」を使用します。
<使用例>
- 新しくオープンするお店の宣伝をするため、駅前でチラシを配布した。
- 映画館で、来月公開される映画のチラシを配布した。
イベントでのサンプル配布
イベントでのサンプル配布は、ほとんどの場合限られた特定の人たちではなく、不特定多数の来場者に広く配られます。
<使用例>
- シャンプーのサンプル品をイベント会場で配布した。
- 新作発表会のイベントで、サンプルを配付した。
配付の例文
「配付」とは、「限られた人たちにのみ配り渡す」ことを指す言葉です。ここでは「資料」「配付資料の扱いに注意する」を使った例文を紹介します。
以下で具体的な例文を見ていきましょう。
資料を配付する
ほとんどの場合、資料は代表者が各メンバーに配ることが多いので、「配付」を使います。
<使用例>
- 町内会のメンバーが揃ったので、関連資料を議長が配付した。
- 班長が班のメンバーたちに資料を配付した。
このように、「班」や「町内会」という特定の人たちが集まる場所で、1人1人に手渡しで資料を配るときは「配付」を使います。
配付資料の扱いに注意する
取り扱いに注意が必要な重要な資料は、不特定多数に配られることはありません。そのため、扱いに注意が必要な資料を指すときは、「配付」資料と記載するようにしましょう。
<使用例>
- 重要な内容が載っているので、配付資料の扱いに注意してください。
- 取り扱いに注意しなければならない配付資料にパスワードをかけた。
【例外表現】公用文の場合、「配布」と「配付」どっち?
「不特定多数の大勢に配る」ことを意味する「配布」と、「特定の相手に配る」ことを指す「配布」。通常はこのルールに従って使い分けをすればよいのですが、公用文や公文書においては、「配布」で統一することが決められています。そのため、新聞やテレビで用いられるのは「配布」という表現になります。
一部例外として、「交付税」「譲与税配付金特別会計」などの名称においては「配付」が使用されます。
「配布」と「配付」の類語・言い換え表現
意味も似ているため、最初のうちは混乱することも多いですが、ひとつひとつ意味や使い方を確認していくと、きちんとした使いこなしができます。
それぞれの言葉の違いを知ったうえで使用することで、表現の幅も大きく広がるのではないでしょうか。
配賦
配賦(はいふ)は、1人1人に細かく割り当てることを指します。資料などを配る際の「配付」とは違い、負担金を配る際や会計など、金銭を伴う場面で使われることが多い表現です。
<使用例>
- 社員ひとりひとりに負担金を配賦する。
頒布
頒布(はんぷ)は、配布とほぼ同義です。しかし「配布」は無料であることが前提ですが、「頒布」は有料・無料を問いません。有料の頒布は「販売」ともいえますが、利益目的かどうかという点が異なります。
<使用例>
- 大型ドームで、書籍が頒布されるイベントに参加する。
配分
配分(はいぶん)は、分け前などを割り当てて配ることを意味します。つまり、あるものを何人かで分け合った分の取り分を表し、割合に重きを置いた言葉です。
<使用例>
- スタッフで分ける売上金の配分を考える。
分配
「配分」は分け前などを割り当てることを指す言葉でしたが、「分配」は分けて配ることを指します。「割合」が重視されている「配分」に対して、「分配」は「分ける行為」そのものに重きを置いている言葉です。
<使用例>
- 売店の売上金を全スタッフに分配する。
「配布」と「配付」の英語表現
英語で「配布」と「配付」を表現するときは「distribute 」という英単語を使います。日本語のような使い分けはなく「配る」という大きな意味として使用することが可能です。
<使用例>
- Distribute pocket tissues.
ポケットティッシュを配布する。 - Distribute important documents.
重要書類を配付する。
さらに、「distribute」のほかにも、「give out」や「hand out」も「配る」という意味で使えます。
「配布」と「配付」の違いや使い分け方を理解しよう
「配布」と「配付」はよく似た言葉ですが、それぞれに使い方や意味が異なります。いざというときに正しく使い分けるには、普段から意識してそれぞれの言葉を使うことが大切です。
この記事を参考にして、「配布」と「配付」をビジネスシーンに役立てましょう。