「交代」と「交替」は、何かを入れかえる、または入れかわることを表す言葉です。どちらも「コウタイ」と読み、似た意味で使われます。
本記事では、両者の違いやそれぞれの言葉の意味について紹介します。シーンに合わせて正しく使えるようになりましょう。
交代と交替の言葉の違い
「交代」とは、「誰かと誰かが入れかわって役目を引き継ぐ」という意味の言葉です。一方、「交替」とは、「役目をかわるがわる行う」という意味の言葉です。
両者は、役目や位置を入れかえるという同じ意味を持つ言葉ですが、1回限りでかわるか、何度も繰り返しかわるかという違いがあります。
例えば、「交代」は「世代交代」「社長が交代する」のように使用しますが、「交替」は「1日交替」「交替で運転する」のように使用します。
交代の意味
「交代」は、「世代交代」「社長が交代する」のように、その役目が1回限りで次にかわることに使います。「代」の漢字には「入れかわる、交代する」のほかに「時代、人間の一生涯」の意味があり、その誰かの番が終わり次に引き継がれる意味が含まれます。
交替の意味
「交替」は、「1日交替」「交替で勤務する」のように、その役目が繰り返されることに使います。「替」の漢字には「かわる、入れかわる、とりかえる、他のものにかえる」という意味があります。
交代と交替の使い方や例文
「交代」と「交替」の意味の違いがわかったところで、例文を使ってより理解を深めていきましょう。具体的な場面を想定することで、シーンに合わせて「交代」と「交替」を正しく使い分けられるようになります。
交代の例文
「交代」は、その役目が1回限りで次にかわることに使います。「交代」を使うシーンは、役職や役割を次の代に引き継ぐような場面が多く見られます。引き継がれた役職や役割は、再び元の人間に戻ることはないというニュアンスが含まれます。
役員を交代する
会社で現職の役員が退いて、新しく次の方が引き継いで就任するという場面を想定してみましょう。
この例文の場合、退いた前職の役員が再び就任することは考えにくいため、役目が1回限りで引き継がれることを表す「交代」が使われます。議長や会長といった役職を引き継ぐ人事異動については、「交代」を使います。
世代交代する
世代交代とは、活躍の中心が次の若い世代に入れかわることを意味します。若い世代が中心の環境から、その上の世代中心の環境に戻ることは考えにくいため、この例文の場合、「交代」が使われます。
選手を交代する
選手を交代する場合、交代した選手が再び競技に戻れるかどうかは、スポーツによって違います。例えば、野球やサッカーで一度交代してベンチに下がった選手は再び競技に戻れません。したがって、この場合は「交代」が妥当です。
一方、バレーボールやバスケットボールでは、一度交代してベンチに下がった選手も再び競技に戻れます。この場合でも、「交替」ではなく「交代」がよく使われます。スポーツ競技においては、かわる回数にかかわらず「選手交代」と表すほうが一般的です。
交替の例文
「交替」は、その役目が繰り返されることに使います。「交替」を使うシーンは、引き継いだ役割が再び元の人間に戻ってくるような場面が多く見られます。時間帯や日によって、次々と人間が入れ替わってローテーションするイメージです。
シフトを交替する
シフト勤務の場合、時間帯や日によってそれぞれに仕事が割り振られます。自分の当番が終わっても、次の自分の当番が来れば再び勤務に当たります。役目が何度も繰り返される状況なので、この場合は「交替」を使うのが適切です。
交替で運転する
長距離ドライブで、長時間の運転は危ないので何人かでかわりばんこに運転する、という場面に使える例文です。
この場合、一度運転をかわった方も、少し休憩したらもう一度運転することが想定されるので、「交替」を使います。同じ方が何度も繰り返し運転の役目を引き継ぐからです。
交代と交替の使い分けにおける注意点
実は、「交代」と「交替」の2つの言葉に明確な相違はありません。どちらもかわることを表し、「代」と「替」の漢字に大きな意味の違いはないからです。「コウタイ」という言葉に2通りの書き表し方がある、と考えられます。
「交代」と「交替」が使い分けられている場面がある一方、「交替」の意味で「交代」を使うような場面もあります。例外があることも理解した上で、臨機応変に「交代」と「交替」を使い分けましょう。
かわる回数による使い分けは絶対ではない
かわる回数による使い分けには、いくつか例外があります。例えば、江戸時代の大名に対して江戸と領地に交互に住むことを義務付けた「参勤交代」という言葉があります。これは、1年ごとに江戸と領地を行き来するため、繰り返し行うことですが、「交代」が使われています。
また、かわる回数による使い分けに従えば、前述しているように、何度も選手を交替できるバレーボールやバスケットボールは「選手交替」となりますが、多くの場合「選手交代」と記載されます。
交代も交替も大きな違いはない
辞書をひくと、「交代」と「交替」は「代わり合うこと。入れかわること」と同じ項目として記載されています。どちらの漢字を使っても同じ意味を表せると言えます。
「参勤交代」「選手交代」の例のように、「交替」の意味で「交代」を使う場合もあります。かわる回数にかかわらず「交代」を使うように例外があることも理解しておきましょう。
交代と交替の英語表現
昨今のグローバル社会においては、英語で「交代」と「交替」を伝えたい場面も出てきます。英語で「交代」と「交替」を表現するにはChangeやTake turnsを使います。おおまかには「交代」=Change、「交替」=Take turnsと使い分けられます。
これらのニュアンスを理解するため、例文を交えながら紹介します。
交代はChange
Changeは「変化、移り変わり」「変更、改変」など、別のものにとりかえる、という意味をもつ単語です。役目が1回限りでかわる「交代」の英訳にはChangeが使われることが多いです。
<使用例>
- change the members of the board
役員を交代する - Change the pitcher
ピッチャー交代 - the change of generations
世代交代
世代交代は、「alternation of generations」という表現もあります。「alternation」は「交互、かわるがわる」という意味で、どちらかというと「交替」に近い単語です。
交替はTake turns
Take turnsは「~を交替でする」という意味の熟語です。名詞のturnには順番という意味があります。役目が順番に繰り返される「交替」の訳にはtake turnsが当てはまることが多いです。
<使用例>
- take turns working
交替で働く - take turns driving the car
交替で運転する - an eight‐hour shift
(シフト勤務などで使う)8時間交替
交代と交替の意味の違いや使い分け方を理解しよう
どちらも「コウタイ」と読み、似た意味で使われる「交代」と「交替」は、1回限りでか入れかわるか、何度も繰り返しかわるかで使い分けられています。
「交代」は「役員交代」や「世代交代」のように使い、「交替」は「シフト交替」「交替で運転する」のように使います。ただし、「交替」の意味で「交代」を使うことがあるなど、例外を理解した上で使い分けることが大切です。
「交代」と「交替」を状況に応じて正しく使い分け、伝えたい内容を正しく伝えられるようになりましょう。