ビジネスシーンにおいて、修正や訂正という言葉を使う機会は少なくありません。文書作成や取引先との連絡で使われたことのある方も多いのではないでしょうか。修正と訂正は、すでに伝えた言葉を変更するという目的では同じ意味を持ちますが、使うべき場面はそれぞれ異なります。
本記事では、修正と訂正のそれぞれの違いや使い方を紹介します。情報を円滑にアップデートするために、状況に応じて正しく言葉を使えるようにしましょう。
修正と訂正の違いとそれぞれの意味とは
では早速、修正と訂正の違いを見ていきましょう。
修正と訂正の違いは「明確な誤り」があるか
修正とは、不十分・不適当と思われるところを改め、直すという意味の言葉です。一方で訂正とは、誤りを正しく直すという意味の言葉であり、両者には明確な誤りがあるかどうかという違いがあります。
例えば、「修正」は、よりよい表現へ書き換えや改善したい場合などに使用しますが、「訂正」は書類の数字や請求書の金額の誤りを直す場合などに使用します。
修正の意味
より細かく、それぞれの言葉の意味を見ていきましょう。
「修正(しゅうせい)」とは、不十分・不適当とされるところを改め直すことを指す言葉です。意図が不明瞭な文章や、誤解を与えるような文章を手直しする際に使われます。「修」という字には飾りつける、正しく整えるなどの意味があります。
<使用例>
- 履歴書の志望動機を修正する
- 発表用のスライドを見直したところ、色が多過ぎてうるさいので修正しよう
- 提出した資料の説明がわかりづらかったので、修正を求められた
訂正の意味
「訂正(ていせい)」とは、誤りを正しく直すことを指す言葉で、記載内容の間違いや誤字脱字を手直しする際に使われます。訂正の「訂」という字には約束をとりきめる、文字や文章の誤りを正しくするなどの意味があるのです。
<使用例>
- 図面の数値計算の間違いを訂正する
- この契約書は元号を間違えているから訂正が必要だ
- 年末調整の記載違いを訂正するために訂正印を押す
ビジネスシーンにおける修正と訂正の使い方や例文
修正と訂正には明確な違いがあるため、相互の誤解や認識のズレを生まないようにするためには、ビジネスシーンにおいて正しく使い分けることが肝要です。ここでは、具体的な使い方や例文をご紹介します。
伝える側と受け取る側がこの2つの言葉の差を理解していると、お互いの意図するところがスムーズに伝わるようになり、結果として手間や時間といったコストの削減につながる可能性があります。
修正の例文
修正は「よりよくする、より分かりやすくする」というポジティブな意味が含まれる言葉です。依頼する際にも自分が行う際にも、その側面を押し出すと良い印象を与えやすくなります。
相手に改善を依頼するときなどに使用するのが一般的です。
■相手に間違いがあったとき
相手に間違いがあった際に本来用いるべきなのは「訂正」という言葉ですが、強い表現になりやすいため「修正」を使うのが望ましいです。
「訂正」には「間違いを指摘する」という性質があるため、求められることに不快感を覚える方もいます。そうした不測の事態を回避するために、形式的なビジネスシーンでは、意図が伝わりにくくても、修正を使った方が無難です。
<例文>
- お客さまにご提出いただきました書類につきまして、下記の点で不備がございましたので、修正していただけますか
- ご修正いただいた資料は早急に差し替えいたします
■事務的な改善依頼をするとき
金額や見積書など、事務的な間違いに対しても修正が使われる場合があります。訂正を使うと、相手の間違いを指摘する強い言い方になってしまうため、ビジネスシーンにおいては改善を依頼するという意図を相手に伝えるのがベターです。
<例文>
- 見積書の金額に誤りがあったため正しい金額に修正をお願いします
- カタログの商品写真を添付したものに修正してください
訂正の例文
誤りを直すという観点から見ると、訂正という言葉はビジネスの成否に関わる重要なものです。契約や数値の誤字脱字、不備をそのままにしておくと、後に重大な影響を及ぼすことも少なくありません。
訂正は「間違いを正す」という力強い言葉のため、ビジネスシーンでは重要性を伝えたり緊張感を与えたりする効果が期待できます。
■部下の指導のために使いたいとき
部下の間違いを指摘する際は、訂正の言葉を使うだけで「それは間違っている」と伝えられます。
しかし、こういう方法で指導するためには、上司だけでなく部下も「修正」と「訂正」の違いを理解していることが重要です。
<例文>
- 提出された日報の訂正を求める
■自分に間違いがあったとき
自身の発言や文章の間違いを認めてそれを正す場合には、「訂正」が適しています。仮にそれが修正の意図であったとしても、公の場やビジネスシーンにおいては「訂正」を用いた方が無難なケースもあります。
<例文>
- お名前の記載ミスに関しましては、直ちに訂正いたします
- 先ほど不用意な発言があったことを訂正し、謝罪申し上げます
修正と訂正の類語・言い換え表現
修正と訂正には、類語や言い換え表現が多数あります。こうした表現を知ることで、修正と訂正に対する理解が深まります。
また、状況に応じて表現を使い分けることで、相手に誠実な印象を与えることも可能でしょう。
変更
「変更(へんこう)」とは、決められた物事を変えることです。ビジネスシーンにおいては、主にそれまで決めていたことや作りあげていたものを、他の状態に変える際に用いられます。
日常的に使われることが多い言葉ですが、ビジネスシーンにおいてはコロコロとルールや状況が変わると良くないイメージを与える可能性もあるので気を付けましょう。
<例文>
- 内容を変更いたします
- デザインについて変更をお願いいたします
校正
「校正(こうせい)」とは、文字や文章を比べて、誤りを正すことという意味です。ここでの誤りとは、誤字・脱字や誤植、体裁の誤りなどのことを指しています。
<例文>
- 今後、原稿はリリース前に2人以上で校正するようにしましょう
是正
「是正(ぜせい)」とは、悪いところや不都合な点を改め正すことです。是正は、規律やルールを守っていない場合に用いられます。個人に対してよりも、方針や仕組みに対して正される場合に使われることが多いです。
また、是正は強い印象を持つ言葉でもあります。
<例文>
- 格差を是正しなければならない
- 是正勧告を受けた
改訂
「改訂(かいてい)」とは、書物の内容や法律、取り決めなどの一部を改めて正すことです。今の情勢に適した新しいものに正す際に使用されます。
同音異義語に「改定」という言葉がありますが、こちらは法律や制度などすでに定まっていた物事を決め直すときに使われる言葉です。
<例文>
- 改訂版を出版した
- 計画の改訂で新たな問題が発覚した
改修
「改修(かいしゅう)」とは、道路や建物などの悪い部分を直すことです。改修は、インフラ設備や施設などの老朽化や故障などを直す際に用いられます。
<例文>
- 改修工事が始まる
- 道幅を改修する
修正と訂正の英語表現
日本語に「修正」や「訂正」の類語が多数あるように、英語にも修正を表す言葉や訂正を表す言葉がいくつか存在します。正しく意図が伝わるよう、それぞれの英単語が持つ複数のニュアンスや、使い分けについてご紹介します。
修正の英語表現
日本語の「修正」にあたる英語表現には、主に「modify」を用います。
■modify
modifyは、修正する、部分的に変更する、改造するという意味を持った単語です。modifyには「緩和」や「加減」という意味もあり、条件や要求を軽いものにするというニュアンスが含まれています。また、部分的な変更を加えてより良くするという意味もあるため、修正の英語表現に適しているでしょう。
<例文>
- Please modify it as needed.
必要に応じて修正してください。
訂正の英語表現
日本語の「訂正」にあたる英語には「amend」と「revise」が存在します。それぞれが「訂正」以外の意味を含んだ単語であるため、細かいニュアンスの違いを伝えるには意図的に使い分けることが必要です。単語の意味を理解することで、より適切な英語を選択できます。
■amend
amendは、修正する、改めるという意味です。修正と訂正の両方の意味合いを持っていますが、重要度の高いものを正すというニュアンスを強く持つamendは、主に法律や法的文書を訂正する際に使われることが多いです。
<例>
- to amend a plan
政策を訂正する
■revise
reviseとは、改訂する、訂正する、修正するという意味を持った単語です。
文書そのものを全面的に大きく改定、更新するといったニュアンスがあり、書籍や資料、書類などを変更する際に使われることが多いです。
<例>
- the revised edition
改訂版
修正と訂正の意味の違いや使い分け方を理解しよう
修正と訂正は場面によって適切な使い方があり、それらを正しく使い分けることで、直したい点やお互いの意図を素早く正確に伝えられるというメリットがあります。
業界や状況によっては、訂正や修正以外に是正や変更、改訂などのさまざまな言葉が使われます。こうした言葉の使い分けをしっかりと理解し、ビジネスシーンに生かしましょう。