フジテレビは、SNSによる出演者やスタッフへの誹謗中傷対策を担当する「コンテンツ・コンプライアンス室」と傘下の「SNS対策部」を、今月8日付で新設した。
リアリティ番組『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』に出演していたプロレスラー・木村花さんが、SNSでの誹謗中傷により亡くなったとされる問題を受け、組織的な対策を強化していく狙いだ。
■出演者・スタッフへの誹謗中傷監視システム導入
昨年5月に木村さんが亡くなった問題を受け、同局では同年7月末、制作過程の検証報告書を公表。ここでは、SNS対応について「誹謗中傷は絶対に許さないという強い姿勢」を打ち出すとした上で、出演者に対しては幾重にも重なるケアの実現することを明記し、8月から「SNS監視システム」を導入した。
このシステムでは、出演者やスタッフへの誹謗中傷を、24時間体制で監視。「まだ法的措置までには至っていませんが、実際に何度か、ご出演頂いた方への誹謗中傷を検知し、速やかに社内共有して出演者の方への対策に役立てています」(広報局、以下同)と成果を上げているという。
■制作部門をバックアップ
さらに、10月には社内横断の「SNS対策委員会」を設置し、各部署、各番組との連携を図るとともに、既存のガイドラインを見直し、最新のガイドラインの策定など、様々な意見を集約。その提言を受け、対応策を主導・運用する部署として、総務局内に今回新設されたのが、「コンテンツ・コンプライアンス室」、そして「SNS対策部」だ。室長兼部長には、バラエティ制作、編成、コンプライアンス関連、番組審議会を担当してきた坪田譲治氏が就任した。
この部署では、「フジテレビが放送・配信する番組の制作部門をバックアップする理念の下、速やかに相談できる弁護士、精神科医などの専門家との連絡体制を構築しています」と説明。
また、新たに策定したガイドラインでは、「SNS上のリスクについての注意点を明確化し、また出演者や関係者、コンテンツに関わる炎上等が発生した時の対応方針や対応フローを盛り込みました。さらに、ガイドラインが制作現場で十分に活用されるとともに、SNS上のリスクを確実に集約、共有できるようにするべく、利便性の高い仕組みを整えてゆく予定です」としている。
その上で、「今後はSNS対策部を中心に、コンテンツ制作に関わるすべてのセクションと連携しながら、組織的に最新状況に対応してゆくべく準備を進めています」と、体制をさらにアップデートしていく方針だ。
■BPO議論「演出、放送とSNSにおける誹謗中傷の関係」の論点はまとまる
BPO放送人権委員会では、木村花さんの母親が、娘の死は番組内の「過剰な演出」がきっかけでSNS上に批判が殺到したためだとして人権侵害を申し立て、審理を行っている。
2月に行われた議論では「リアリティ番組の特性、番組における演出、放送とSNSにおける誹謗中傷の関係などの論点については、概ね意見がまとまった」と報告。委員会の最終決定に向けた取りまとめが進められている。