マットレスを中心とした寝具の製造・販売を行っているEmma Sleep Japan(以下エマ スリープ)は16日、オンラインで記者発表会を開催。睡眠に関する興味深い調査結果を公表したほか、睡眠研究の第一人者が登壇し、日本人が陥りやすい睡眠に関する誤解について説明した。
エマ スリープとは?
エマ スリープ(Emma Sleep GmbH)は2013年にフランクフルトで起業した、ドイツのスリープテック企業。現在、同国で最も成長の早いスタートアップのひとつに数えられている。日本に進出したのは2020年。現在は世界26カ国で展開している。
今年(2021年)1月には欧州各国で、スマートマットレス「エマモーション」の販売をスタートした。ニューラルネットワークを活用したAIセンサーを内蔵した製品で、熱の変化、僅かな圧力の変化を検出しながらリアルタイムで就寝者のデータを分析。寝姿勢を調整するモーションフィールドに指令を出して睡眠の質を向上させるという。
睡眠に関する意識調査
ここで、オンライン発表会に登壇したエマ スリープの小原氏は「コロナ禍における日本人の睡眠に関する意識調査」の結果を公表した。これはインターネットにて20~60代男女の1,028名を対象に2021年2月22日~2月24日に実施したもの。コロナ後に関心を抱いたものとして、免疫力、運動不足、体重増加があがった。男性より女性の方が関心が高い傾向があるという。
普段から健康について気を付けていることを聞くと、睡眠時間の確保、食事の栄養バランス、適度な運動、といった回答が上位に。ストレスを貯めない、生活のリズム、などにも関心が集まった。また「充分な睡眠が取れているか」という問いかけに「充分に取れている」「取れている」と回答した人の割合は、コロナ前が61.8%、コロナ後が64.4%と、2.6%アップしている。
起床時間は、全体的に遅くなっている傾向が見られた。就寝時間は、少しだけ早くなっている。全体の平均睡眠時間は、コロナ後に5分程度増加した。
いまのマットレスに「とても満足」「やや満足」と回答したのは56.5%、「あまり満足していない」「まったく満足していない」は25%ほど。買い替え意向は低い(72%が検討していない)とのこと。
小原氏は「日本は、世界でトップクラスの"睡眠負債国"。睡眠時間には限りがありますが、フィット感が高くて快適なEmma Sleepのマットレスで、ぐっすり熟睡していただけたら」と説明し、日本市場での展開に期待を寄せた。
寝だめの誤解に注意!
続いてゲストとして、睡眠研究の第一人者である江戸川大学の福田一彦教授が登壇した。福田氏はその冒頭、あらためて日本、台湾、韓国は世界で最も睡眠時間の短い国々であると指摘。日本人は夜ふかしをしており、週末に寝だめをする特徴があると指摘する。そのうえで「では果たして、寝だめは効果があるのでしょうか」と疑問を投げかけた。
福田氏によれば、平日に早寝早起きをしても、週末に朝寝坊をするだけで身体の調子は落ち、抱えている病気の症状は悪化する傾向があるという。「生活にはリズムの側面があるからです。これを考えないと、時差ボケと同じ状態になります。例えるなら、週末だけ日本からインドに旅行して、月曜日に日本に帰ってきているようなもの。週の前半は、時差ボケで具合が悪い状態が続いてしまうわけです」(福田氏)。睡眠は「時間」よりも「規則性」が大事、とまとめた。
このほか、心地良い眠りを得るために見落としがちな"住宅照明"についても説明した。「日本のリビングは夜も非常に明るい。この白い明かりにはブルーライトがたくさん入っており、脳の中の生物時計に働きかけるので、夜、眠れなくなっています。一方で、欧米の夜は暗い。オレンジ色の照明を使っているからです。照明を直すだけで、睡眠の質も変わってくるでしょう」(福田氏)。寝室の照明には気をつけているが、リビングの照明には気を付けていないのが日本人の特徴。福田氏によれば「寝室に行ったとき、すでに勝負はついている」とのことだった。
スマホのブルーライトは注意?
このあと再び、小原氏が登壇してエマ スリープ実施の調査結果を紹介した。寝付けないと感じることはありますか、という質問に、多くの人が「ストレス」「寝る直前のスマホなどの操作」「運動不足」などで寝付けていないと回答している模様。このほか、日本人の5割以上が就寝前の1時間で仕事、お金、将来の不安などを考えてしまう傾向があると話した。
これについて、福田氏は「寝る直前のスマホのブルーライトを気にされる方が多いと思います。実は、スマホに含まれるブルーライトは大した量ではありません。リビングの住宅照明の方がはるかに多く含んでいます」と追加で補足。寝る前にスマホを操作することによる覚醒が問題ではないか、との考えを示していた。