「エスカレーター効果」という言葉をご存じでしょうか。営業職であれば、「顧客に対して効果的に使える心理学用語」などと、説明を受けたことがある人もいるかもしれません。この記事では、ビジネスシーンで活用可能なエスカレーター効果の意味や使い方を紹介します。

  • パソコンで何かの作業をしている人

    エスカレーター効果をビジネスに活用しましょう

エスカレーター効果の意味

エスカレーター効果とは、日常生活において「常識」あるいは「当然」と思っていることが突然そうではなくなった際に感じるギャップを指します。

「動く階段」として私たちが日ごろから認識しているエスカレーターを、故障時の動かない際に歩くと何とも言えない奇妙な感覚に陥ることがあります。人によってはバランスを崩す人もいるかもしれません。この現象がエスカレーター効果の語源と考えられています。

エスカレーター効果のメカニズム

停止したエスカレーターを歩くと足に違和感を覚える現象は、「エスカレーターは動くものである」と脳が無意識に認識したうえで体のバランスをとっていることと、実際にエスカレーターが動いていないことの間に乖離があるため起きます。

人間の思考には無意識の「思い込み」があり、その思い込みが覆されたときにギャップや違和感が生じます。これが、エスカレーター効果が起きるメカニズムです。

エスカレーター効果の使い方

エスカレーター効果をビジネスで使う際は、顧客の思い込みを把握し、その思い込みを覆すことが要になるでしょう。ここからは、エスカレーター効果がポジティブに働くシーンを具体例を挙げて解説します。

■あえて自社商品を否定する

営業シーンにおいて、買い手側は「売る側は自社製品の良い面しか言わない」という思い込みをしているケースが往々にしてあります。その思い込みを覆すかのように、自社商品の悪い面を挙げた際、エスカレーター効果によるギャップが生じます。

この使い方でポイントとなるのは「商品をおすすめしないことで信頼感が増す」という点です。この行為によって買い手側は「本当の情報を的確に伝えてくれる人」というラベルを売り手側につけることになり、売り手側に好印象を持ったり、提案された別の商品を肯定的に受けやすくなったりします。

■契約後の手厚いサービスを設ける

「契約が完了したら、今までの良いサービスや対応は終了する」というルールもビジネスの世界では常識としてまかり通っています。

そういった思い込みをしている人に対し、契約後や商品販売後も手厚いサービスや顧客対応を行えば、エスカレーター効果が生じやすくなります。その結果、会社や商品に対する信頼感や安心感を持ってもらいやすくなるでしょう。

■安くて良い商品を販売する

一般的に安い商品に対しては、「安かろう悪かろう」という考えが無意識のうちにあり、「安いのに良い商品」を購入した場合、メーカーやその商品を買ったお店に対するイメージが覆されます。

次回もお店に足を運んだ際、「この間は安くておいしかったから、今回選んだものも期待できるはずだ」というように、もともと無意識に抱いていた「安かろう悪かろう」というリミッターが外れやすくなるのです。

セットで覚えておきたいアンカリング効果とは

「アンカリング効果」とは、人間は最初に提示された数字や条件などの情報を基準としてしまい、その後の判断も無意識のうちにその「基準」に従ってしまいがちな傾向があるということを意味する心理学用語です。船がいったん錨(アンカー)を下ろすとそこから動けなくなるように、定めた「基準」に引きずられることを表しています。

もしも何の情報のない最初の段階で、エスカレーター効果を上手に活用して顧客に好印象を与えられれば、アンカリング効果によってその好印象を定着させやすいということになります。

エスカレーター効果を理解しよう

エスカレーター効果とは、人間の脳の思い込みによって引き起こされるギャップということを解説しました。

このエスカレーター効果はさまざまな場面で活用でき、思い込みが強いほど、ギャップも大きくなります。良い方に覆ったイメージを定着させられれば、営業などのビジネスに活かせるでしょう。