俳優の三上博史と女優の広瀬すずが、フジテレビ系スペシャルドラマ『桶狭間~織田信長 覇王の誕生~』(26日21:00~23:32)への思いを語った。

三上が演じるのは、織田信長(市川海老蔵)にとって最大の強敵で、圧倒的有利と思われていた“桶狭間の戦い”において、まさかの敗北を喫し、思わぬ形で時代の転換の扉を開けてしまう今川義元。一方の広瀬は、政略結婚で信長の元に嫁ぐが、実母の愛に飢え、誰も信じることができないでいた信長を優しく包み込み、本当の信長を理解する唯一無二の存在となる正妻・濃姫を演じる。

  • 三上博史(左)と広瀬すず=フジテレビ提供

三上博史

――放送が決まった時の感想。

テレビドラマは即時性だと思っているので、作った作品は本当はすぐに見てほしいのが希望ではあります。でもこういう(コロナ禍という)ご時世で、撮影からは日が経ってしまいましたが、思いを込めた作品ですので、やっと皆様に見てもらえることができてうれしいです。

――今回のお話がきた時の感想は?

桶狭間の戦いは歴史として知っているのですが、今川義元という人物はほとんど知らなかったので、まずはそこから調べ出しました。実際に会うことができるわけではないので、どこまで知ることができるのか?結局はたどり着けないのかもしれないのですが、撮影前に“今川ツアー”を行ったんです。まず合戦地の桶狭間に行って、そこから埋葬された場所がいくつかに分かれているので、静岡に向かって3カ所くらい、まず首塚(東向寺)から最後に菩提(ぼだい)寺を周って。友人の住職が“お墓参りをするのなら“とつきあってくれたので、二人で行脚して供養をしました。それが昨年3月でしたね。どこもひっそりと弔っていた場所なので、ちょっとした丘の裏側とかにお墓はあったのですが、ちゃんとお花が手向けられていました。“あ、よかった、ちゃんと見守ってくれている人がいるんだ”って思って、二人で“よかった、よかった”となごやかにお参りをしました。

――今回の役を演じるにあたって。

言葉は違うかもしれませんが義元はとても家柄が良く、貴族ですので、その品格のようなものは演技では出せると思うのですが、一方で武将でもある。私は時代劇自体がほとんど経験がなく、特に武将の役の経験がないので、今までの役者人生で刀を持ったことがないんです。これは殺陣をやらなくてはいけないと思い、早めに京都に入ってずっと練習していました。殺陣師の方と相談しながら、本番までにいくつか(パターンを)想定して作り上げていったのですが、意外と本番はあっという間に終わってしまいました。他に思い出深いのは、美術スタッフさんの準備でした。事前に、“こういうものがあったらお芝居で使えると思うので用意してもらえたら”と、東京と京都でやりとりをしていたのですが、すごく気持ちをくんでくださって、あれもこれも用意してくださったんです。とてもスタッフさんの愛情を感じましたし、演じる上で助かりました。それは衣装にも言えることで、“こんな生地、今川は着るかもね”と、いろいろ考えて仕立ててくださって、本当に幸せな気持ちで撮影に臨めました。

――桶狭間の戦いのシーンの感想。

その時に実在した“魂”のようなものが、うすら見えたらいいなあと。義元の魂に僕が入っていくのか、僕の魂に義元の魂が入っていくのかわからないですが、何か少しでもその“魂”を見てくださる方が体感していただけたら作品として面白いのではないかなと思います。合戦シーンは、監督がどういうアプローチ、切り口で撮ろうとしていたのか・・・スペクタクルに撮りたいのか、心情よりで撮っていきたいのかわからなかったので何とも言えませんが、僕としてはその“魂”のアプローチが映ってくれたらいいなあと思います。舞台の世界でも、遠く離れていて、クローズアップしなくても魂が浮き出る場合もあります。これはもうできあがりを見てみないとわからないのですが。

――海老蔵さんとの初共演の感想。

これまでご一緒したことがなくて、とても興味がありました。本番中は対峙(たいじ)するわけですが、それだけでは物足りないので、スタンバイの合間でいろいろな話をしました。監督も入って三人で話すと、三人ともてんでばらばらですごく楽しかったです(笑)。僕は断片的にしか見ていないのですが、僕が対峙(たいじ)させていただいたシーンでは、“あっ、信長ってこういう人だったんだ”という魂のエッジのようなものを海老蔵さんには感じました。僕の義元の魂の形とは違う対峙(たいじ)の仕方だと思います。

――久しぶりの河毛監督の現場はいかがでしたか?

これまで時代劇でご一緒したことがないのでどうなるのかなあと思っていましたけれど、撮っているときは特に(普通のドラマと)変わらなかったように感じました。でもできあがってみたらきっと違うんだろうという予感はしています。監督は映画『ダンケルク』(2017年)をやりたいと撮影前におっしゃっていたんですけれど、どのような感じにできあがっているのか?楽しみです。

――視聴者の皆様にメッセージをお願いします。

僕は信長以外の方とのシーンがあまりなかったのですが、存じ上げている方ばかり出演されているので、その皆さんがそれぞれのシーンでどのようなお芝居をされて、この作品を作りあげているのかがとても楽しみです。きっとどのシーンを切りとっても面白いとと思いますし、ぜいたくな、すごく見応えがある作品だと思います。その中で僕は相変わらずちょっと狂気に走りますけれど(笑)。もちろんそうではないところもありますが、“あ、またやってる”と十八番(おはこ)だと思って見ていただけたらと思います。生き生きとお芝居できましたし、本当に楽しかったです。

■広瀬すず

――今回のお話がきたときの感想は?

実は、“舞台と時代劇は向いていないかもしれない!”と思っていました(笑)。でも『なつぞら』(2019年NHK)を終えた後に、何か新しいこともやってみたいな、と考えていたので、このタイミングでこのお話がいただけてよかったです。

――今回の役を演じるにあたって。また、実際演じられてみて。

所作が決まっているので、先生に細かく聞いて、練習の時間を設けていただきました。他にも、登場人物の関係性を把握したいと思い、本を読んだり時代劇のドラマを見たりもしました。(実際演じてみて)所作が入ってくるので(現代劇のように)自分の心情だけで自由に芝居ができない、セリフも難しい中で、その奥を読むことが難しかったです。それは今までにない感覚で、“これが時代劇か”と思いました。

――海老蔵さんが演じる信長について。

信長のことをしっかりと調べたわけではないのでイメージでしかないのですが、海老蔵さんが演じられる信長は、“きっとこういう人だったんだろうなあ”と思わせるようなたたずまいでした。つい目で追ってしまうような存在感も、多分共通しているところだと感じました。お芝居になると、絶対に目をそらせてはいけない、負けたくないという気持ちになるほどの目で見つめられるので、“絶対、目をそらさないぞ”という気持ちで演じました。以前、イベントでお会いしたことがあったのですが、その時も、絶対的なオーラやつい目で追ってしまう存在感を感じたことを思い出しました。

――『なつぞら』の大森さんが今回も脚本を手がけられました。

今回のお話をいただいた時に、大森さんが『なつぞら』執筆の後も休まずにこの脚本を書かれていたということも聞いて、さらにやってみたいなとも思ったんです。大森さんの脚本は、セリフが優しくて、毎回読むのが楽しみになる単語も多くて。『なつぞら』の時も、ストレートなセリフとそうではない表現の微妙なニュアンスが私はすごく好きでした。でも今回は時代劇なのに、全然違うお話をこんなふうに描けるなんて、とびっくりしました。

――印象に残っているシーンは?

父の斎藤道三が討ち死にした後に、“私は信長様にとって役に立てない身になった”というシーンです。実はクランクインして二日目の撮影だったので、正直、“難しいな”とも思ったのですが、すごく考えながら演じました。土田御前とのシーンも、黒木さんは一言しゃべられた瞬間に、“やっぱりすごい方だな”と思いながら演じさせていただきました。

――初時代劇を終えられての感想。

時代劇には、現代劇ではあまり感じることのできない、はかなさがあって。今回は撮影の日数が少なかったので。まだまだ知らないこともたくさんあるだろうなと感じました。今回演じた濃姫は、独特の存在感があるイメージだったので、演じられたことがとてもうれしかったですし、別の作品でまたこの役をやってみたいなと思いました。そういうのも時代劇ならでは考えられることですよね。

――視聴者の皆様にメッセージをお願いします。

濃姫の強くて、でもどこかはかないところはとても魅力的で、その表現には悩みましたが、現代の女性にも共感していただけるところだと思います。戦のシーンは私も一視聴者として楽しみにしています。

(C)フジテレビ