角換わりの将棋で優位に立ち、永瀬王座の勝負手を冷静にかわし切る

渡辺明王将に永瀬拓矢王座が挑戦する将棋のタイトル戦、第70期王将戦七番勝負(主催:スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社)の第6局が3月13、14日に島根県「さんべ荘」で行われました。渡辺王将が3連勝の後、永瀬王座が2連勝で迎えた第6局は、千日手指し直しの末渡辺王将が勝利。タイトルの防衛に成功し、王将位3連覇を達成しました。また、通算獲得タイトル数が27になり、谷川浩司九段と並んで史上4位タイとしています。


渡辺王将のタイトル戦全成績

13日の9時に始まった対局は角換わりの将棋となり、先手の永瀬王座が早繰り銀を採用しました。中盤、永瀬王座は交換した角と銀を敵陣に打ち込んで、渡辺王将の飛車を追いかけます。飛車を逃げる渡辺王将とそれを追う永瀬王座。同一手順が繰り返され、14時11分に千日手が成立しました。

指し直し局は同日15時11分から開始されました。先後が入れ替わって今度は渡辺王将が先手番に。戦型はまたしても角換わりとなり、途中までは前局の第5局と同一手順で進行していきます。自身が敗れた対局と同じ形になってしまったことに対し、「ほかにプランがなかったので」と渡辺王将。流石に千日手を事前に想定して準備はしていないのでしょう。

前例の進行から手を変えたのは、意外にも勝った側の永瀬王座でした。永瀬王座は馬を作ることに成功。一方の渡辺王将は駒得が主張です。

その後、渡辺王将は角を切って飛車を敵陣に成り込むことに成功します。また、永瀬王座の馬を敵陣奥深くの端へと追いやることもでき、優位に立ちました。

しかし、ここから永瀬王座は勝負手を連発します。飛車をタダで取らせる位置で渡辺王将の竜にぶつけます。取れば王手竜取りの角打ちがあるという狙いです。渡辺王将は竜をかわしますが、永瀬王座は歩打ち、銀打ちと次々にタダ捨ての強手を放ちました。

対応を誤れば一気に形勢が混沌とする局面で、渡辺王将の指し手は冷静でした。永瀬王座の勝負手にすべて冷静に対応し、厳しく反撃に出ます。粘る永瀬王座でしたが、渡辺王将の寄せは正確。あっという間に永瀬玉を受けなしに追い込んで、勝利をつかみました。

この勝利で渡辺王将はシリーズ成績を4勝2敗とし、防衛に成功。王将位3連覇を達成です。3連勝後の2連敗という悪い流れにも「最後の1勝は遠かったですが、こうなってしまった以上は仕方ない。3勝0敗だったことは忘れて、臨もうと思っていた」と切り替えられていたようです。

また、タイトル通算獲得数は27期となり、谷川九段と並んで史上4位タイとしています。「シリーズ前から目標にしていた。並ぶことができたのは大変うれしく思います」と喜びを語った渡辺王将。17日には糸谷哲郎八段の挑戦を受けて立っている、第46期棋王戦五番勝負第4局が行われます。こちらも2勝1敗と防衛に王手をかけており、単独4位は目前です。

防衛を決めた直後の渡辺王将(提供:日本将棋連盟)
防衛を決めた直後の渡辺王将(提供:日本将棋連盟)