企業が生々と成長を続けていくためには、働く社員のモチベーションが非常に重要であることは論をまたないだろう。しかし、形のないモチベーションを高めるのは簡単なことではない。

この難題のコンサルティング事業を行うリンクアンドモチベーションが、「日本一モチベーションの高い会社」を選ぶアワードを先ごろ開催した。同発表会からエンゲージメントの重要性が見えてきたので紹介したい。

  • 働きがいのある会社とは?

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従業員満足度からエンゲージメントへ

発表会はまず、同社の代表取締役会長である小笹芳央氏のメッセージから始まった。

「アワードは今年で11回目を迎えました。当初はエンゲージメントと言ってもほとんど理解されていない時代でしたが、今日ではあらゆる企業、組織にとってエンゲージメントが非常に重要であると叫ばれる時代になりました。実際、アカデミック界でもエンゲージメント状態と労働生産性との相関性が証明されています」。

「エンゲージメント」は一般的には約束や婚約といった意味だが、人事領域では「愛社精神」「仕事に取り組む熱意」といった意味で使われ、最近よく耳にするようになった。かつては従業員満足度がモチベーションを測る指標にされていたが、近年はエンゲージメントが主流になってきたようだ。

エンゲージメントスコアは企業と従業員の相思相愛度合い

その使われ方だが、社員のモチベーションに関するコンサルティングを行うため、依頼した企業に対して「従業員エンゲージメント調査」を実施。結果から「どのファクターがエンゲージメントを向上させ、どのファクターがエンゲージメントを低下させるのか」を明らかにするのだという。

この調査データをもとに、「組織への期待」「組織への満足」などから総合的にエンゲージメントスコアを算出。ここで興味深かったのは、エンゲージメントスコアを「企業と従業員の相互理解、相思相愛度合い」と位置付けていたことだ。

確かに、従来の従業員満足度では職場における満足度は数値化されるが、それが「会社に貢献したい」という気持ちにストレートにつながるわけではなかったそうだ。

しかし、エンゲージメント状態が良好であれば、企業と従業員の想いが一致しているから強力なモチベーションになるという。

これを的確に数値化できれば、組織改革の大きな武器になると言えそうだ。

  • 「従業員エンゲージメント調査」で対象になる16のファクター 提供:リンクアンドモチベーション

    「従業員エンゲージメント調査」で対象になる16のファクター 提供:リンクアンドモチベーション

エンゲージメントを高める意味

それでは、大手企業部門(従業員2,000名以上)からスコアの高かった企業TOP10に注目してみよう。まず驚いたのは、いずれの企業もコロナ禍にありながらエンゲージメントスコアを向上させ、それを組織改革や業績アップといった具体的な成果につなげていたことだ。

  • ベストモチベーションカンパニーアワード 大手企業部門(企業表彰) 提供:リンクアンドモチベーション

    ベストモチベーションカンパニーアワード 大手企業部門(企業表彰) 提供:リンクアンドモチベーション

例えば、5位に入った日本ユニシスグループは、経営トップがエンゲージメントにコミットする場やエンゲージメント調査を活用した現場改善活動により風土改革を推進。売上高、営業利益率、株価とも右肩上がりの成長を続けている。

トークセッションに登場した日本ユニシスの人事本部長である白井久美子氏は、エンゲージメントの高い会社をつくる秘訣をこう語る。

「エンゲージメントに着目したのは、SIerのビジネスモデル破壊に対する危機感からです。ビジネスモデルを革新するためには、失敗を許容する文化に変えていく必要がありました。そこで、組織における自律的な取り組みの定着を目指すアクションプランの実践や、組織長がコミットして情報をオープンにする社内コミュニケーションの充実等を図りました」。

小笹氏の総括にもあったが、エンゲージメント高めるためには社員間のコミュニケーションを密にして意思の疎通を図ることが重要なようだ。

アルバイト職が「長く続けばいい」と思う職場が1位に輝く

この日本ユニシスグループ以上に高いエンゲージメントスコアで、1位に輝いたのが関西でスーパーマーケットを運営する佐竹食品グループだ。しかし、今でこそ高いスコアをマークする同社だが、従業員エンゲージメント調査を始めたきっかけは意外なものだった。

トークセッションに登場した同社の代表取締役社長である梅原一嘉氏がこう語る。

「私はもともとアンチ理念経営派でした。ところが、店舗巡回のとき、極端に品質の落ちたアスパラを破棄せず安売りしている現場があったのです。理由を質してみると、『安ければ売れますよ』というものでした。損得ではなく良し悪しで商売する当社の理念が理解されていなかったことにショックを受けました」

同社では、この反省から「日本一楽しいスーパー」という理念を掲げ、エンゲージメントを高める取り組みを続けてきた。実際、トークセッションでアルバイト職のインタビュー映像が流れたが、「とにかくこのバイトが長く続けばいいと思っている」と語っていたのが印象的だった。

ビジネスパーソンにとって、従業員満足度の高い企業がいい企業であることは間違いないが、それだけで働きがいを得ることは難しい。エンゲージメントも企業を選ぶ際の指標にすることをおススメしたい。