入社して数年経つとある程度の仕事を覚え、後輩の教育を任されようになってきます。しかし、人材育成はなかなか思うようにいかず、教育や指導で悩んでしまう方も少なくありません。そのような人材育成の場で有効とされているのが「ピグマリオン効果」です。
ピグマリオン効果のことを理解し、活用できれば人材育成の成功につながります。ただし活用する際は、いくつかの注意点もあります。事前にピグマリオン効果の意味や正しい活用法などを把握しておきましょう。
ピグマリオン効果の意味
ピグマリオン効果とは、誰かに期待をしてもらうことで勉強や仕事などの成果が高まるという心理効果です。
人材育成の場合、相手の成長性に期待することで、教わったことをしっかりと身につけたり、早く成長したりするなどの効果につながります。
ピグマリオン効果の由来
ピグマリオン効果の「ピグマリオン」とは、ギリシャ神話に登場する王様の名前です。ピグマリオンは自分で彫った女性の像に恋をしてしまいます。ピグマリオンは恋をしたその女性の像がいつか本物の女性になることを期待していたところ、その様子を見た神様が女性の像に命を与えたのです。
このギリシャ神話が由来となり、期待をかけることで結果が得られる、という意味でピグマリオン効果と名付けられました。
ピグマリオン効果と逆の意味のゴーレム効果
ピグマリオン効果とは反対に「ゴーレム効果」があります。他人から期待されるとピグマリオン効果によって成果が高まることがありますが、他人から全く期待されないと、ゴーレム効果により成果が下がる恐れがあります。
ゴーレム効果が人材育成の際に起こってしまうと、対象者は「自分は期待されていない」と感じ、その結果仕事の質が上がらなかったり、成長が遅くなったりしてしまうのです。
こちらも注目 :
「ゴーレム効果」に足を引っ張られてない? 知っておきたい心理学効果
ピグマリオン効果の実験
ピグマリオン効果を発表したのはアメリカの教育心理学者であるローゼンタールです。ローゼンタールは学生にテストを受けさせ、その結果に関係なくランダムに選んだ学生に対して、教師から期待していることを伝えました。
テストの結果に関係なく選んだはずの学生でしたが、教師から期待をかけられた学生はその後に学力を大きく伸ばしたのです。この実験から、人は期待されることで成果を高めるという心理効果があるとわかりました。
このことから、ピグマリオン効果は「教師期待効果」とも呼ばれます。
ビジネスシーンにおけるピグマリオン効果の活用方法
ピグマリオン効果をうまく活用すれば、成果を向上させる効果が期待できます。ピグマリオン効果はビジネスシーンで活用されることもあるため、どのような場面で役立つのか把握しておきましょう。ここからは、シーン別の具体的な活用例を解説します。
部下や後輩など人材育成
ピグマリオン効果が活用される定番は、部下や後輩などの人材育成の場面です。部下や後輩は仕事を覚えている段階でミスをしてしまうこともあります。
しかし、その際に失敗したことをただ怒るのではなく、「そのミスを成長に活かすことを期待している」「ミスは減ってきているので期待している」などの言葉をかけると良いでしょう。
部下や後輩は期待されているということを知れば、ピグマリオン効果によって、その後の成長に変化が現れる可能性があります。
自分のモチベーションアップ
ピグマリオン効果は他人だけが対象となるわけではありません。自分自身に対してピグマリオン効果をかけることも可能です。目標やポジティブな言葉を紙に書いて目につく場所に貼ったり、小さな挑戦を繰り返したりすることで、自分の持つ可能性をポジティブに捉えられるようになります。
自分の可能性をポジティブに捉えることを習慣化すれば、ピグマリオン効果が働いて、目標達成や成果を高めるためにモチベーションを上げられるでしょう。
ピグマリオン効果の注意点
ピグマリオン効果は、ただ対象者に期待をかけるだけではその効果を得ることはできません。また、ピグマリオン効果を活用する際にその使い方を誤ってしまうと、逆効果になる恐れがあります。
ピグマリオン効果を活用し十分な効果を得るために、事前に注意点を把握しておきましょう。
一方的な理想像の押しつけ
対象者にかけられる期待が、対象者の希望するものではない一方的な理想像を押しつけるようなものであった場合、対象者はその期待に応える必要がありません。
そのため、期待に応えようとする意欲が湧かないため、ピグマリオン効果が起こらない可能性があります。
過剰な褒め言葉や期待
対象者にかける期待が過剰になると、その期待をプレッシャーに感じてしまい、対象者が萎縮してしまう可能性があります。
ピグマリオン効果を得たい場合は、対象者に合わせた期待の度合いを考えましょう。
細かすぎる指示や要求
対象者に期待していることを伝える際に、細かい指示や要求を出しすぎてしまうと、対象者が本当は期待されていないと不信感を持ってしまいます。
対象者には期待されているということを実感してもらう必要があるため、本人にある程度の裁量を与えることも大切でしょう。
ピグマリオン効果とハロー効果の違い
「ハロー効果」とは、対象者の持っている大きな特徴や成果などが、その他の特徴や成果の評価に影響を与えることです。
ハロー効果もピグマリオン効果も、対象者の評価に変化を与えるため、似たような心理効果と考える方もいますが、一致するのは「評価のされ方に影響を与える」という点です。
対象者自身に変化が起き、評価の変化につながるピグマリオン効果とは異なるので注意しましょう。
ハロー効果の種類
ハロー効果が影響を与える方向には、評価を上げるポジティブなものと、評価を下げてしまうネガティブなものの2種類があります。
対象者が良い特徴や成果などを持っていれば、それに引っ張られて、全体的に評価が高まりやすくなりますが、逆に、対象者が悪い特徴や成果などを持っていれば、全体的に評価が下がりやすくなってしまうのです。
こちらも注目 :
ビジネスにも使えるハロー効果って何? - 具体例を紹介
ピグマリオン効果を学び活用しよう
ピグマリオン効果の概要や活用方法、注意点などについて解説しました。ピグマリオン効果は対象者の成果を向上させる効果が期待できます。上手にピグマリオン効果を活用して、人材育成や自分のモチベーション向上に役立てましょう。