自力は永瀬王座。木村九段は自身が勝って永瀬王座が敗れれば昇級

第79期順位戦B級1組(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の13回戦が3月11日に東西の将棋会館で一斉に行われています。長丁場のB級1組もいよいよ本日が最終日。12回戦で山崎隆之八段が昇級を決めており、残る1枠を永瀬拓矢王座と木村一基九段で争います。また、今期から降級枠が2つから3つに増えたことにより、激しくなった残留争いにも注目です。


第79期順位戦B級1組のリーグ表。各クラスの中で最も対局数の多いリーグもいよいよ最終局

今期最終局である13回戦の対戦カードは以下の通りです(丸山忠久九段は抜け番)。

△山崎隆之八段(9勝2敗、11位)-▲郷田真隆九段(7勝4敗、7位)
▲永瀬拓矢王座(8勝3敗、5位)-△近藤誠也七段(7勝4敗、13位)
▲木村一基九段(7勝4敗、1位)-△深浦康市九段(3勝8敗、4位)
▲久保利明九段(5勝6敗、2位)-△千田翔太七段(5勝6敗、6位)
△松尾歩八段(5勝6敗、9位)-▲阿久津主税八段(4勝7敗、10位)
▲屋敷伸之九段(5勝6敗、8位)-△行方尚史九段(3勝8敗、3位)

昇級の可能性があるのは、8勝3敗の永瀬王座と、7勝4敗の木村九段の二人。郷田九段と近藤七段は順位が永瀬王座よりも悪いため、今期の昇級はありません。

永瀬王座は自身が勝てば無条件、負けても木村九段が敗れれば昇級となります。木村九段は自身が勝った上で永瀬王座が敗れれば昇級です。

永瀬王座-近藤七段戦は、先手の永瀬王座が角換わり早繰り銀を採用しました。若手棋士同士の一戦らしく、序盤はハイスピードで進行。対局開始から1時間程度で40手以上進んでいます。永瀬王座の早繰り銀は近藤七段の腰掛け銀とすでに交換になっており、盤上には存在しません。若手トップ棋士の研究範囲はどこまで広いのかにも注目です。

木村九段-深浦九段戦は立場の全く異なる両者の対戦です。前述の通り、勝てば昇級の目がある木村九段に対し、深浦九段は勝たなければB級2組への降級が決まります。また、たとえ勝利したとしても他の対局の結果次第では降級になってしまいます。

47歳の木村九段と49歳の深浦九段。中堅からベテランの域に入ろうとしている両者ですが、指している将棋は最新のもの。相掛かりの戦型から、深浦九段が7筋の歩を取らせる代償に手得を主張する新しい形の将棋となっています。深浦九段は手得を生かして5筋の位を確保。木村九段の歩得が生きるのか、深浦九段の模様の良さが生きるのかが焦点になりそうな将棋です。

次に残留争いも見ていきましょう。最終局が抜け番で、すでに全日程を終了している丸山九段の降級が決まってしまっており、残る降級枠は2つ。降級の可能性があるのは、危ない順に深浦九段、行方九段、阿久津八段の3人です。それぞれの残留条件は以下の通りです。

阿久津八段:自身が勝利するか、行方九段・深浦九段が共に敗れる
行方九段:阿久津八段が敗れた上で、自身が勝利する
深浦九段:阿久津八段と行方九段が敗れた上で、自身が勝利する

前期好成績を挙げ、今期順位が3位の行方九段、4位の深浦九段がともに苦しんでいるのが印象的です。「鬼の棲家」と呼ばれるハイレベルなB級1組では、紙一重の戦いが繰り広げられている証左でしょう。

B級1組は持ち時間が6時間。終局は本日夜遅くから日付が変わるころとなるでしょう。どんなドラマが起きるのか、楽しみです。

昇級を争う永瀬王座(左)と木村九段。永瀬王座は初のA級入り、木村九段は1期でのカムバックが懸かる
昇級を争う永瀬王座(左)と木村九段。永瀬王座は初のA級入り、木村九段は1期でのカムバックが懸かる