新型コロナウイルスのパンデミックと、Zoomの普及で身近になったオンラインツアー。このほど、島根県邑南町とHISにより開催された「島根県邑南町・魅力発掘ツアー」が、内容充実&コスパ良好だったので紹介したい。

  • 島根県邑南町・魅力発掘ツアーに参加

自宅から出ずに島根を堪能

長引くコロナ禍のため、旅行を控えている人は少なくないだろう。旅行会社などでは、新しいコンテンツとしてオンラインツアーを企画し、好評を得ているようだ。

島根県邑南町。なんと読むかお分かりだろうか? 正解は「おおなんちょう」。島根県邑智(おおち)郡に属し、人口1万342人(2021年1月31日)という小さな町だ。2021年2月28日、「大パノラマの絶景&人気スポット“天空の駅”へご案内 島根県邑南町・魅力発掘ツアー!」というタイトルで、オンラインツアーが実施された。

オンラインツアーってどんなもの?

今回の邑南町ツアーは、申し込み→資料や特産品受け取り→当日という流れ。

特産品は、こんな感じの愛らしい箱が2つ届いた。

  • クール便で特産品が到着

1つの箱には、チーズケーキ、ミルクジャム、缶バッジが入っていた。もう1つの箱には、手作り感あふれるこんにゃくが2個。地方の直売所や道の駅で売っているような、素朴なこんにゃくだ。

  • チーズケーキやジャムが愛らしく詰められていた

  • 手作り感あふれるこんにゃくが2つも

パンフレットや旅のしおりなどの資料も、しばらく旅をしていない身には心躍る。旅行会社や自治体の意気込みも十分に感じられた。

  • 資料を読んでいるだけで旅情がかきたてられる

地元の人の案内が親しみやすく臨場感あり

ツアー開始時間までに、受け取っていた特産品や資料を準備し、パソコンやタブレットの前に集合。Zoomミーティングのリンクが、ツアー訪問先の現地写真とともに送付された。現地写真はZoomのバーチャル背景に設定すると、雰囲気が出てお勧めだ。

定時にツアー開始。最初は、前述のこんにゃくを作ったレストラン「京ら屋」だ。夫婦で営んでおり、季節の田舎料理を提供する。こんにゃくを手作りする様子をカメラ越しに見せてくれて、「そうやって作ったものが、これなんだ」と思うと感慨深いものがある。

  • ワサビ醤油でいただいた

おいしく食べる方法を書いた紙が同封されており、お勧めに沿ってまずは刺身でいただくことに。市販のパック詰めこんにゃくとは違い、表面はザラザラ・ボコボコで、手作りならではの風合いが嬉しい。トロッとやわらかいが、しっかりとした歯応えもあり、実に美味。

参加者の中には、「もう前日の夜に食べてしまった!」という人も。おいしそうなので、その気持ち、分かります。

次は「瑞穂ハンザケ自然館」へ。邑南町は国の特別天然記念物であるオオサンショウウオの生息地で、同館では、全国初 のオオサンショウウオの人工ふ化に成功したという輝かしい実績も。

「ハンザケ」というのは、口が半分に裂けているように見えることからついたあだ名のようなもの(「ハンザキ」と呼ぶ地域もある)。

同じ両生類のウーパールーパー(メキシコサラマンダー、アホロートル)と似た、とぼけたような顔、ぽっちゃり系のムチムチ指が並ぶ足と、よく見ると愛嬌のある生物である。

  • オオサンショウウオの水槽にクローズアップ

オオサンショウウオは夜行性で日中はおとなしいが、この日は活発に動くところを見せてくれてラッキー。

続いて、「Milk&Beans Mui(ミルク&ビーンズ ミューイ)を訪問。自然放牧で育てた牛から良質なミルクを得て、さまざまな加工品を作っている。お隣の鳥取県には「白バラ牛乳」があるが、島根県も負けていない。

  • 店頭のお勧め商品を分かりやすく解説してくれる

特産品セットの中に、ミルクジャムが1瓶。パンにつけていただき、なめらかな口どけと濃厚なコクが楽しませてもらった。

廃線となった「聖地」も気軽に訪問できる

最終訪問地は「宇都井(うづい)駅」。2018年4月1日より廃線となったJR三江(さんこう)線の駅で、地上からの高さ日本一の高架駅と言われていた。廃止後も鉄道ファンなどが遠方からやってくる「乗り鉄の聖地」だ。

  • 駅ホームから臨場感あふれるガイドをしてくれた

  • 特産品として届いたオリジナルコースターと資料で三江線の予習

駅ホームは地上20m、116段の階段を上ったところにあり、エレベーターもエスカレーターもない。案内者がカメラを回したまま階段を上ってくれたが、息が切れて、おまけに風も強く大変そうだった。ツアーならそんなこともないので、良かったかも(笑)。

最後はZoom上で、記念の集合写真を撮って終了。リアルの旅行だと、空港に出かける、チケットの手配・管理などの手間があるが、オンラインなら自宅内で完結するのがいいところ。スーツケースの片づけも必要ない。

類似のオンラインツアーがある中、邑南町ツアーは参加者によるチャットも活発で、開催者は手応えを感じたと言う。

「コロナ禍でリアルのツアーができないため、オンラインツアー実施に至りました。邑南町はまだ観光的にはマイナーですが、旧三江線を活用したトロッコ列車を試運転させるなど、今後の注目が期待されます。"旅マエコンテンツ"としては有効な手段だと改めて認識しました」と、一般社団法人イワミノチカラ代表の伊藤康丈さん。

旅行が難しい今、地元の人のガイドでその土地を実際に歩いているような臨場感を持てるオンラインツアーは見知らぬ地方を理解し、地域を応援する手段としてアリではないでしょうか。