横歩取りの将棋を制した渡辺棋王は9連覇に王手をかけた
渡辺明棋王に糸谷哲郎八段が挑戦している将棋のタイトル戦、第46期棋王戦五番勝負第3局(主催:共同通信社)が3月7日に新潟県「新潟グランドホテル」で行われました。ここまで両者1勝ずつを挙げて迎えた第3局は、133手で渡辺棋王が勝利。棋王9連覇まであと1勝としています。
横歩取りの将棋となった本局は、糸谷八段が新構想を披露しました。ところがその後の手順に誤算があり、渡辺棋王が序盤早々にリードを奪います。糸谷八段は感想戦で、本譜は予定変更の順だったと明かしました。
早い終局も予想される展開になってしまいましたが、そこから糸谷八段が本領を発揮します。相手の攻めを紙一重でかわしていく玉さばきを披露。戦いが始まった時点で5二にいた糸谷玉は、4二→4三→5四→6四→6五→7四→8三と大移動してなかなか捕まりません。相手に決め手をギリギリのところで与えずに、反撃の機会を待ちます。
この驚異的な粘りを受けた渡辺棋王は、「おかしくなっていった。逆転されたかと思った」と局後のインタビューで語っています。実際の形勢は終始渡辺棋王が良かったようですが、手の流れは完全に糸谷八段ペース。本当に逆転してもおかしくないギリギリの場面で、渡辺棋王は踏みとどまる好手を着手しました。
それは詰みがありそうな糸谷玉を詰ましにいかずに、詰めろをかけて受けなしに追い込む手。相手に合駒を使わせたことで、自玉への脅威も軽減しています。すでに自玉も危険極まりない状態にまで追い込まれていましたが、この順で自玉は大丈夫と読み切ったのです。
猛追を受け続け、相手玉を詰まして早く楽になりたい局面。そこで冷静な判断を下せるのが、渡辺棋王が棋界の第一人者たるゆえんです。
糸谷八段は以下数手指し続けたものの、攻防ともに見込みのなくなった局面で投了を告げました。苦しくなってからの、玉さばきと相手玉への追込みは見事だった糸谷八段。それだけに序盤のつまずきがもったいなかったという内容の第3局でした。
本局を制した渡辺棋王は、防衛まであと1勝としました。もし防衛できれば9連覇達成。これは第17期から25期まで保持した竜王戦と並ぶ、自己記録タイの記録です。ちなみに棋王戦の連覇記録は羽生善治九段の持つ12連覇。これも視界に入ってくるでしょう。
渡辺棋王が防衛を果たすのか、それとも糸谷八段が追い付き、フルセットにもつれ込むのか。注目の第4局は3月17日に行われます。渡辺棋王はその前の13、14日に王将戦七番勝負第6局が控えており、大きな勝負が続くことになります。