Twitterは2021年1月に、2020年のゲームやeスポーツに関連するツイートの統計をまとめたブログを公開しました。ブログでは、コロナ禍によって大きく増加したゲーム関連のツイートのなかで、最もツイートされたゲームタイトルやゲームイベント、eスポーツチームなどのランキングが公表されています。
今回は、このブログの内容を踏まえて、Twitterのゲームコンテンツパートナーシップ グローバル統括責任者を務める、リシ・チャダ氏にインタビューを行いました。eスポーツシーンのツイートにおける日本と海外の違い、日本のeスポーツがより発展するためのヒントなど、eスポーツに関するトピックスを中心にお話をうかがっていきます。
Twitterでも大きな変化が起こったコロナ禍の1年
――2020年、Twitter上でのゲームやeスポーツの話題について、どのような傾向が見られたか教えてください。
リシ・チャダ氏(以下、リシ):2020年は、ゲームやeスポーツにとって、大きな1年でした。世界各国の人たちが家にいなければならない状況で、今まで以上に皆さんがゲームに時間を費やし、より多くの人がオンライン上でやり取りをしたのではないでしょうか。
Twitter上では、ゲームに関するツイート数が年間20億を超えました。2019年と比較すると、75%増加。ゲームについてツイートした利用者のユニークユーザー数は49%増加し、過去最高を記録しました。
――ブログでは「ゲームに関して最もツイートしている国」で日本が1位となっていました。これについて、日本ならではの傾向を踏まえて詳しく教えてください。
リシ:日本のマーケットには、いくつか興味深い傾向があります。まず1つに、日本の皆さんがより多く会話されるゲームの種類は、モバイルゲームであること。これ関しては、ゲームの開発側がモバイルゲームからTwitter上でシェアをすることに対して、インセンティブを提供していることも一因となっているでしょう。2番目にツイートが多いアメリカでは、コンソールゲームやPCゲームの投稿が多い傾向です。また、全体的に日本の皆さんは、ツイートやシェアを多く行う傾向があると感じますね。
具体的なタイトルを挙げると、最も多く会話されていたのは『あつまれ どうぶつの森』。日本のみならず世界各国で非常に多く会話されていて、ゲームの勢いは、国境を超えて伝播していくのだと感銘を受けました。
日本でのeスポーツに関する会話は、まだ小さな規模
――日本における、eスポーツに関する会話の傾向はいかがでしょうか?
リシ:ゲーム全体での会話に対して、eスポーツに関する会話の規模は、まだ非常に小さいですね。日本においてeスポーツに関する会話は、新しいトレンドとして出てきたばかりなのでしょう。これから発展していくものと捉えています。
本来であれば、もっとeスポーツイベントが開催されて、会話も増えていた可能性がありますが、2020年はコロナの影響でイベントの実施が難しい時期が続きました。日本では「EVO Japan」のように非常に成功している事例がありますから、eスポーツに関する会話の規模もこれから成長していくのではないでしょうか。
――eスポーツに関する会話に限定した場合、ツイートが多い国のランキングはどのような結果でしたか?
リシ:eスポーツに関する会話が多い順に、アメリカ、ブラジル、イギリス、フランス、カナダ、スペインです。西洋の国が多いですが、最近は中南米での盛り上がりが大きく、ブラジルが2番目に多くなっています。
――それらの国と日本を比べたとき、会話量にはどれくらいの差があるのでしょうか?
リシ:日本におけるeスポーツの会話は、最も会話されているアメリカと比べると、1/11ほどの量。ただし、『Apex Legends』など、日本を含むアジアで大きな勢いを持っているタイトルもあります。
eスポーツチームの発信、日本と海外との差は?
――ブログにあった「日本で最も会話されているeスポーツチーム」の半数以上が、海外チームであることに驚きました。これにはどういった理由があると考えられますか?
リシ:その理由としては、やはりまだ日本のeスポーツシーンが発展の過渡期にあることが関係すると考えられます。
例えば、日本で多く会話されているeスポーツチームに「FNATIC」がありますが、日本で行われている「FNATIC」についての会話は、世界全体で行われている「FNATIC」についての会話の5%以下なんです。つまり、残りの会話はすべてほかの国で起きているということですね。
――eスポーツチームの発信に関して、日本と海外で差がある要素を教えてください。
リシ:まず、世界的にこれほどeスポーツの会話が盛り上がった背景の1つには、eスポーツチームが多くのゲームをサポートする体制を確立してきたことがあります。例えば、最もツイートが多かったeスポーツチームである「FaZe Clan」は、『Fortnite』や『Call of Duty』をはじめとする人気のタイトルで、いくつもの部門を持っています。
このようにeスポーツチームが幅広いタイトルをサポートすることにより、ある意味で1つの頑強なエコシステムがつくり上げられている。これがより多くの会話を促すことに、貢献しています。
もちろん日本のeスポーツチームも、だんだん複数のタイトルをサポートする体制になってきています。eスポーツの会話があまり起きていないモバイルゲームを、サポートする日本のチームも増えてきました。しかしながら、海外のチームではすでに積極的に取り組まれてきたことなんです。
もう1つ、話題に取り上げられるeスポーツチームが注力していることに、コンテンツクリエイターの確保が挙げられるでしょう。チームにコンテンツクリエイターを迎え入れることによって、ゲームの一般オーディエンスへの働きかけにも力を注いでいます。
動画ツイートを活用し、海外を視野に入れた発信を
――日本のeスポーツシーンで活動するチームや選手に向けて、Twitterの活用法についてアドバイスがあれば教えてください。
リシ:ブランド確立や認知度向上のための秘訣は、動画コンテンツを活用することです。大会でのハイライトなど、動画を載せたツイートは非常に有効ですので、ぜひとも活かしていただきたい。実際に、先ほどのランキングでも挙がっていたような、「FaZe Clan」や「G2 Esports」などのチームは、かなり動画を駆使しています。
あとは、日本人だけをターゲットにするのではなく、海外のオーディエンスもターゲットにすることです。日本語だけではなく英語も添えるなど、海外のファンにも語りかける意識を持つと良いでしょう。動画コンテンツの活用と多言語での発信、この2つを組み合わせることが効果的だと言えます。
――日本のeスポーツが発展するためには、何らかのブレイクスルーが必要だと考えている関係者もいます。日本のeスポーツが発展するために、どんなことが必要だと感じますか?
リシ:私としては、日本でもっと国際大会が開催されると、より良いのではないかと思います。2020年1月には、私も「EVO Japan 2020」に参加するために日本に行きましたが、とても活気づいていました。
その後は残念ながらイベントの開催が難しくなり、せっかくの勢いが衰えてしまいましたが、これはあくまでもコロナによる影響です。なので、コロナの状況が落ち着いたら、ぜひ積極的に日本で国際大会を開催していただきたい。そうすれば、より勢いもつくし、日本のeスポーツに対する海外からの注目をもっと集めることができると思います。
――日本では最近、携帯キャリアなどもeスポーツ大会を主催していますが、Twitterが大会を主催する展望はありますか?
リシ:たしかに将来的には、そういう可能性もあるかもしれません。ただ、今は私たちの既存のパートナーの方々がエキスパートとして携わっておられるので、パートナーの皆さまが成功するためのサポートに注力したいと思っています。
――それでは最後に、日本のゲームやeスポーツのファンに向けて、メッセージをお願いします。
リシ:日本の皆さんが、Twitter上でこれほどゲームやeスポーツの会話をしてくださっていることを、とても誇りに思い、そして感謝しています。2021年も、さらに日本のeスポーツが発展していくことを願っています。
また今後、情勢が落ち着いたら、私自身も再び日本に行って、日本で開催されるeスポーツイベントに参加したいと思っています。皆さまには、ぜひ引き続きTwitterを活用いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。