軽量コンパクトなボディに上位モデルと同じキーデバイスを搭載する富士フイルムの最新ミラーレス「X-E4」。これまで以上にすっきりとしたフラットなデザインに仕上げた点や、比較的に手に入れやすい価格も注目といえます。実写でX-E4の実力をチェックしていきましょう。

  • スッキリとしたスマートなデザインが魅力の「X-E4」。写真は、別売のハンドグリップ「MHG-XE4」とサムレスト「TR-XE4」を装着しています。実売価格は、ボディ単体モデルが108,900円、「XC 15-45mm F3.5-5.6 OIS PZ」が付属するレンズキットが121,000円となっています(いずれも税込み)

フィルムシミュレーションはより精細に、より高画質に

X-E4のイメージセンサー「X-Trans CMOS 4センサー」と画像処理エンジン「X-Processor 4」は、昨今のXシリーズのトップエンドモデルおよびミドルレンジモデルの定番といえる組み合わせで、「X-Pro3」や「X-T4」、「X-S10」に採用されています。そのため、X-E4の写りはそれらと同じ、と考えて問題ないといえます。

もともと、同社の絵づくり機能「フィルムシミュレーション」の描写は定評があり、特に「PROVIA/スタンダード」の艶やかな絵づくりや、「Velvia/ビビッド」のきらびやかで印象的な絵づくりはとても人気があります。そのほかのシミュレーションも特徴的かつ写りの完成度が高く、作品づくりに最適なものがそろっています。キーデバイスの進化により、それらがより高解像度、高画質で楽しめるようになったと考えてよいでしょう。

フィルムシミュレーションには、コントラストの高いカラーネガフィルムをシミュレートした「クラシックネガ」、落ち着いた発色と深みのあるシャドー部を再現する映画撮影用フィルムをシミュレートした「ETERNA/シネマ」、“銀残し”と呼ばれるフィルム現像方法を再現した「ETERNAブリーチバイパス」がX-Eシリーズとして初めて搭載されました。色調などの違いは比較作例をご覧いただきたいのですが、いずれも大いに撮る気にさせる仕上がりであるように思えます。粒状感を画像に施す「グレインエフェクト」もこれまでどおり搭載しており、よりフィルムライクな表現が楽しめるのも魅力です。

  • ▲PROVIA/スタンダード

  • ▲Velvia/ビビッド

  • ▲ASTIA/ソフト

  • ▲クラシッククローム

  • ▲PRO Neg.Hi

  • ▲PRO Neg.Std

  • ▲クラシックネガ

  • ▲ETERNA/シネマ

  • ▲ETERNAブリーチバイパス

  • ▲ACROS

  • ▲モノクロ

  • ▲セピア

  • フィルムシミュレーションは、新たに「クラシックネガ」「ETERNA/シネマ」「ETERNAブリーチバイパス」が追加され、全部で14種類となりました。より表現の可能性が広がったと述べてよいでしょう。「GFX100R」に採用されている「ノスタルジックネガ」の搭載は見送られました 共通データ:XF27mmF2.8 R WR・絞り優先AE(絞りF8)・WBオート・JPEG

モアレの発生は心配なし、高感度の絵作りも好印象

キーデバイスである「X-Trans CMOS 4センサー」の画素数は有効2610万画素。ローパスフィルターレスとしていることもあり、エッジの効いたキレのよい写りが持ち味です。独自のカラーフィルターの配列により、モアレにも強いともいわれています。今回の作例撮影でも、高い解像感であるにもかかわらず、モアレの発生は見受けられませんでした。通常のイメージセンサーではモアレの発生が考えられるような被写体でも、X-E4は安心してカメラを向けることができます。

ベース感度はISO160、最高感度はISO12800となります。高感度域におけるノイズレベルもよく抑えており、フィルムシミュレーションの絵づくりの良さをスポイルしてしまうこともありません。拡張機能により、ISO80相当のL80からISO51200相当のH(51200)での撮影も可能としています。

  • ▲ISO L80

  • ▲ISO 160

  • ▲ISO 200

  • ▲ISO 400

  • ▲ISO 800

  • ▲ISO 1600

  • ▲ISO 3200

  • ▲ISO 6400

  • ▲ISO 12800

  • ▲ISO H25600

  • ▲ISO H51200

  • 拡張のISO50相当からISO51200相当まで撮影。X-E4のベース感度はISO160となります。ISO3200までならばノイズの発生は穏やかで、解像感の低下もほとんどありません。ISO6400および常用の最高感度であるISO12800にしても、解像感の極端な低下および色のにじみなどの発生はこれまでにくらべ少なく感じられます 共通データ:XF18mmF2 R・絞り優先AE(絞りF8)・WBオート・JPEG

動体に対するAF性能も上々、満足度の高い1台

イメージセンサーと画像処理エンジンのもうひとつの見どころがAFの進化でしょう。特に、AF-C(コンテニュアスAF)の被写体追従性は、被写体の動きなどによってはちょっと物足りなく感じるところがあった先代X-E3を凌ぐものです。私は、プライベートでよく子どものサッカーや鉄道車両など撮る機会が多いのですが、X-E4のAF-Cはしっかりと被写体を捕捉し続け、ピントをハズしてしまう、あるいは合焦が追いつかなくなることがぐっと少なくなったように思えます。その反応のよさは、ちょっと前まで「ミラーレスのAF-Cは動体撮影に適していない」といわれていたことが信じられないほどです。運動会などのスポーツイベントをはじめとする動体の撮影でも頼れるミラーレスといってもいいように思えます。

今回の作例撮影では、X-E4と同時に発表された「XF27mmF2.8 R WR」をメインに、同じく「XF70-300mmF4.5-5.6 R LM OIS WR」、そして従来からある「XF18mmF2 R」を使用しました。それぞれの写りも合わせて見ていただければと思います。

  • 今回の作例撮影で使用した「XF27mmF2.8 R WR」(3月11日発売予定、実売価格は税込み51,700円前後)をX-E4に装着したところ。光学系は前モデル「XF27mmF2.8」と違いはありませんが、新たに絞りリングを備え、防塵防滴構造としているのが特徴となります

X-S10のレビューでも書きましたが、筆者の個人的な印象として富士フイルムのカメラはコストパフォーマスがきわめて高いように感じます。本モデルはそれに加え、APS-Cセンサーのメリットを最大に活かしたというべきコンパクトなサイズのボディはとても魅力的。フォーカスモード切り替えレバーの廃止は本当に重ね重ね残念に思えてなりませんが、それ以外の部分に関してはこれまで記してきましたとおり好印象。機能以外でも、ボディカラーがシルバーとブラックから選べるのも嬉しい部分です。今現在、私はX100VとともにX-E3を日常的に使っているのですが、タイミングを見つけて本モデルへの乗り換えを目論んでいるところです。

  • ハイライト部からシャドー部までよく粘り、白トビや黒ツブレは最小限に抑えています。フォーマットサイズが小さいため、画素ピッチも小さいイメージセンサーですが、ダイナミックレンジの広さはフルサイズと遜色ないものと考えてよいでしょう XF18mmF2 R・絞り優先AE(絞りF5.6・1/1250秒)・WBオート・ISO160・JPEG・Velvia/ビビッド

  • 撮影した場所は、通常高い防潮堤に遮られてレインボーブリッジ全体を見渡すことができないのですが、 チルトタイプの液晶モニターを活用してカメラを持った手を大きく上に伸ばして撮影しました。先代X-E3の液晶モニターは固定タイプでしたので、より撮影の可能性は広がったといえます XF18mmF2 R・絞り優先AE(絞りF8・1/680秒)・WBオート・ISO160・JPEG・PROVIA/スタンダード

  • 大気の影響で、拡大して見ると鮮明さにわずかに欠けてしまうのですが、それでもこれだけの解像感が得られれば不足はありません。ローパスフィルターレスのなせる技といってよい写りです。手ブレ補正機構を搭載していないカメラですが、高速のシャッターを選び、なおかつ手ブレ補正機構を内蔵するレンズを使えば、そう恐れることはないはずです XF70-300mmF4.5-5.6 R LM OIS WR・絞り優先AE(絞りF8・1/500秒)・WBオート・ISO160・JPEG・Velvia/ビビッド

  • 明暗比が極端に大きいため、暗部はつぶれてしまっていますが、これはライバルメーカーのフルサイズ機であったとしても同様でしょう。むしろ、APS-Cサイズのイメージセンサーながらここまで暗部のディテールが残っているほうがスゴいように思われます XF27mmF2.8 R WR・絞り優先AE(絞りF8・1/500秒)・WBオート・ISO160・JPEG・Velvia/ビビッド

  • フォーカスモードは、フォーカスエリアと重なった被写体にピントを合わせ続けるAF-C(コンティニュアスAF)での撮影です。望遠ズームを使い、絞りを開いて浅い被写界深度で連続撮影していますが、掲載に至らなかった前後のカットも含めてすべてしっかりとピントが合っていました XF70-300mmF4.5-5.6 R LM OIS WR・絞り優先AE(絞りF5.6・1/950秒)・WBオート・ISO400・JPEG・PROVIA/スタンダード

  • 多摩川の土手を歩いていると、赤いアロエの花が咲き誇っていました。もちろん選択したフィルムシミュレーションは「Velvia」。フィルムを選ぶ感覚で仕上がり設定を変更できるのも、富士フイルムミラーレスの魅力のひとつといえます XF27mmF2.8 R WR・絞り優先AE(絞りF2.8・1/1100秒)・WBオート・ISO160・JPEG・Velvia/ビビッド

  • フィルムシミュレーションは「ACROS」。寂れた小さな桟橋を狙ってみました。モノクロで写すことで、ちょっと違った印象の写真となっています。ちなみにACROS(アクロス)とは、同社が発売しているモノクロフィルムの名称です XF27mmF2.8 R WR・絞り優先AE(絞りF5.6・1/1500秒)・WBオート・ISO160・JPEG・ACROS

  • フィルムシミュレーションの「ETERNAブリーチバイパス」は、落ち着いた発色で定評のある映画撮影用フィルム「ETERNA」を“銀残し”と呼ばれるフィルム現像方法で行ったときの仕上がりをシミュレートしたもの。独特の色調を持つ写真となります XF27mmF2.8 R WR・絞り優先AE(絞りF8・1/900秒)・WBオート・ISO160・JPEG・ETERNAブリーチバイパス

  • 絞り値は開放F2.8。浅い被写界深度ながら、X-E4はフォーカスエリアと重なった被写体に対し正確にピントを合わせます。AF-S(シングルAF)での合焦スピードはストレスを感じることはなく、迷うこともありませんでした XF27mmF2.8 R WR・絞り優先AE(絞りF2.8・1/2700秒)・WBオート・ISO160・JPEG・Velvia/ビビッド

  • こちらも明暗比の大きい被写体です。白トビや黒ツブレしているところもありますが、全体にナチュラルな階調再現性です。ちなみに、白トビや黒ツブレの発生は決して悪いことではありません。限られた階調のなかで写真を再現しなければならないため、当然発生するものなのです XF27mmF2.8 R WR・絞り優先AE(絞りF2.8・1/3200秒)・WBオート・ISO160・JPEG・クラシックネガ