「対岸の火事」という言葉をご存知ですか? 聞いたことはあっても、正しく意味を把握していない、曖昧に聞き流してしまっていた、という方は多いでしょう。また、漠然とした意味しか分かっていないため、会話で正しく使える自信がない、という方もいるのではないでしょうか。

本記事では、「対岸の火事」の意味や使い方について解説していきます。類語や対義語、英語表現なども紹介するので、ここで得た知識をビジネスシーンや日常会話の幅を広げるために活用しましょう。

  • 紙に何かを書いている人

    対岸の火事について学びましょう

対岸の火事の意味

対岸の火事とは、「大変なことが起きているが、自分には関係がないのでなんの苦痛もない」という意味の言葉です。読み方は「たいがんのかじ」です。

火事のように大きな被害が生じる事態が起きていても、対岸である、つまり自分のところまでその被害が及ばない、というような場合に使われます。

  • 芝生の上に座っている人

    対岸の火事の意味を正しく理解しましょう

対岸の火事と似た言葉との違い

対岸の火事には字面などが似た言葉があります。せっかく言葉を覚えたのに、似た言葉と意味を取り違えてしまっては大変です。ここでは、特に間違いやすい「高みの見物」と「他山の石」について紹介します。それぞれの言葉の意味や、対岸の火事との違いについて知りましょう。

高みの見物

高みの見物とは、関係のない第三者の立場から、物事の成り行きを眺めることを言う慣用句です。対岸の火事は「大変な物事が起きているが自分には関係のないこと」を意味し、高みの見物は「自分には関係のない物事を傍観すること」を意味します。

また、「高見の見物」と間違えないようにしましょう。この高みの「み」は旨みや苦みの「み」と同じで、物事の程度を表す接尾語です。

他山の石

他山の石は、他人の誤った言行も自分の行いの参考となる、という意味の言葉です。字面は対岸の火事とよく似ていますが、意味は大きく違います。

他山の石は中国の詩集に書かれている故事から生まれた故事成語です。「よその山から出た粗悪な石でも、自分の宝石を磨くことに利用できる」という様子から、「他人のつまらない行いも、自分の成長の助けになる」といった意味を表します。なお、中国語では「他山之石」と書きます。

  • パソコンの前で頬杖をついている人

    似ている言葉でも意味が違う場合があります

対岸の火事の使い方・例文

「自分の身には危険が迫ってこない、他人事だ」という意味を持つ対岸の火事は、日常会話で使う際にはあまり気にする必要はありませんが、ビジネスシーンでは使い方に注意が必要です。

例えば、同僚が「あれは対岸の火事だから」と何度も言っていると、少し危機感が足りないのではないかと、マイナスに感じられたりします。状況によって、「対岸の火事ではない」など否定の形で使う方が良いでしょう。ビジネスシーンにおける対岸の火事の正しい使い方を見ていきましょう。

自分を戒める形で使う

<使用例>

  • 競合他社の失敗を対岸の火事とは思わず、気を引き締めていこう。
  • 彼の失敗を対岸の火事とは考えず、みんなで理由と対策を考えよう。

このように、「対岸の火事」と「思わない・考えない」という否定の言葉を組み合わせて、他人事だと切り捨てるのではなく、明日は我が身だと自分を戒めるような使い方ができます。

自分自身に関係のある場合に使う

<使用例>

  • 業績悪化により同僚がリストラされた。もはや対岸の火事ではない。

こちらの場合は対岸の火事であることを否定して、自分自身と関係があるということを表します。映画や小説などで、今までは他人事だと思っていた事件が、自分にも火の粉が降りかかってきたときなどに使われます。

  • 何かの話し合いをしている人たち

    正しく使うことで理解が深まります

対岸の火事の類語

対岸の火事にはいくつか類語があります。同じような意味の言葉を知ることで会話や表現の幅を広がりますし、言葉の連想で記憶が定着する助けにもなります。ビジネスシーンでその言葉を聞いた際に、「これは対岸の火事の類語だ」とすぐに気づけるよう、知識の幅を広げましょう。

山門から喧嘩見る

「高みの見物」と同義語です。これは仏教のことわざで、仏寺の山門のような安全で静かな場所から、巷の喧騒を眺めることを意味します。あまり聞いたことがないという方も多いかもしれませんが、この機会に覚えていきましょう。

川向こうの火事

自分には少しも影響のないことの例えとして使われます。「対岸」が「川向こう」に変わっただけです。また、川向こうの喧嘩とも言い換えられます。上記の「山門から喧嘩見る」にも喧嘩という言葉が使われていますが、こういった共通点に注目すると覚えやすくなるでしょう。

  • パソコンで何かの作業をしている人

    対岸の火事の類語を知りましょう

対岸の火事の対義語

対岸の火事の対義語に「隣の火事に騒がぬものなし」ということわざがあります。対岸の火事には冷ややかでも、隣の家が火事になっては、落ち着いていられません。

自分のもとに飛び火して被害が及んでくるかもしれない、つまり利害関係が迫ってくる可能性があるとき、人はじっとしていられないことを意味する言葉です。

  • 火の中に立っている人

    対岸の火事の対義語を知りましょう

対岸の火事の英語表現

対岸の火事を英語で直訳すると「fire on the opposite shore」となります。しかしこれでは、ことわざとしての「対岸の火事」の意味は通じない場合がほとんどです。対岸の火事に似た意味の英語表現について紹介します。

私とは何の関係もありません

対岸の火事を、「私とは何の関係もない」と表現する英語を紹介します。英語で「to do with」は「~に関係する」という意味です。「nothing」でそれを否定することで「自分には関係ない」という意味を表現できます。

<英語での使用例>

  • It has nothing to do with me.(私とは何の関係もない)
  • regard ~as having nothing to do with one.(~を何の関係もないものと見なす)

それは他の誰かの問題です

対岸の火事を、「誰かの問題である」と表現する英語を紹介します。「problem(問題)」と「somebody(誰か)」を使って、まったくの他人事である様子を表した英文です。

<英語での使用例>

  • It's somebody else's problem.(それは誰かの問題である)
  • like it's someone else's problem.(まるで他人事のようだ)

逆にこれは他人事ではないぞ、というときは「It's not somebody else's problem.」となります。

  • パソコンとマグカップ

    対岸の火事を英語で表現できるようになりましょう

対岸の火事の意味と使い方を理解しよう

対岸の火事の意味や類語、対義語などについて紹介しました。今まで知っていたけれど使ったことがないという方も、知識が深まったのではないでしょうか。

覚えた言葉は使うことで忘れにくくなります。ビジネスシーンや日常の会話の中で機会があれば積極的に活用していきましょう。