俳優の竹中直人、中尾明慶、味方良介が、フジテレビ系スペシャルドラマ『桶狭間~織田信長 覇王の誕生~』(26日21:00~23:32)の見どころなどを語った。

市川海老蔵が織田信長を演じる同ドラマ。竹中は、信長と斎藤道三の間を取り持つ、今作品のキーパーソンの1人・堀田道空役。中尾は、信長の家臣で、信長の懐に入り込もうと策略を練る木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)役。味方は、同じく信長の家臣で、その戦法やある種の非情さを間近で見ることになる服部小平太役を演じ、自身はじめてとなるナレーションも務めている。

  • (左から)中尾明慶、竹中直人、味方良介=フジテレビ提供

■竹中直人

――今回の出演のお話がきた時の感想は?

僕は、撮影現場は音楽でいう“セッション”のようなものだと思っています。台本はある意味、譜面。声をかけていただいて、現場に行くとそこに共演の方やスタッフがいる。その空気を感じながら、自分がどの音でゆくのか・・・。いつもそんな感じなので、役のことを考えて行くことがないのです。今回も現場を自分がどう感じられるのか、それだけでした。

――海老蔵さんが演じる信長について。

海老蔵さんとは、一度、映画『一命』(2011年)でご一緒させていただいています。今回は、もうそのまま“信長”でしたね。海老蔵さんならではの信長になっている・・・って感じました。

――歴史上の人物を演じることについて。

現代人であろうが、歴史上の人物であろうが、そこで生きている人間っていうことですから、特に意識はしていません。撮影のその瞬間、瞬間をとらえるのが監督の仕事だと思うし、その監督を感じて演じるのが役者の仕事だと思っています。戦国時代の人だからとか、考えたことはないですね。大河ドラマで1996年にはじめて『秀吉』を演じた時も、“とにかく、でたらめにしましょう”っていうことがプロデューサーとの約束だったんです。所作とかそんなものはすべてとっぱらってって。

――そのインパクトが強くて後に何度か“秀吉”のオファーが・・・。

ふと考えると三池監督の映画『「熊本物語』(2002年)や大河ドラマ『軍師官兵衛』(2014年)、昨年はゲームソフトでも秀吉のキャラクターになって。ずいぶん秀吉役はやっていますね。でも戦国の武将は他にも何人かやっているんですよ。信長も実は2回やっていますからね。加藤清正や石田三成もやりました。でも(歴史上の人物だからといって)特に意識はしていないですね。いつも、現場の雰囲気や空気を感じるだけです。

――中尾さんが演じる木下藤吉郎(秀吉)について。

中尾君とは『軍師官兵衛』の時もご一緒でしたし、昔からよく知っていて。今回久しぶりに会うので、とても楽しみにしていました。“久しぶり!秀吉なんだ!”ってね(笑)。共演のシーン、とてもうれしかったです。

――視聴者の皆様に見どころをお願いします。

なんと言っても、“海老蔵さんの信長”だと思います。海老蔵さんの信長、僕自身も楽しみです。広瀬さんとは2019年に、野田秀樹さんの舞台『Q:A Night At The Kabuki』でご一緒でしたが、とてもパワーのある女優さんだなと思いました。今回は共演シーンがなくて残念です。初時代劇だとは知らなかったので、広瀬さんの“濃姫”も楽しみですね。

■中尾明慶

――今回の出演のお話がきたときの感想は?

とにかくやらせてください、その思いだけでした。豊臣秀吉となると・・・もしかしたら僕ではなかったかもしれませんが、あくまで木下藤吉郎ですからね。たくさんの想像を膨らませて、のちの秀吉という期待感も持ちながら、全力で演じたいと思いました。竹中さんは『軍師官兵衛』でもご一緒させていただきましたが、今回久しぶりに会うことをとても楽しみにしてくださっていたと聞いて、とてもうれしかったです。

――役を演じられての感想。

今回、藤吉郎を演じることができたということがすごくうれしいですし、そこに声をかけていただけたということは、僕の“人の懐に入るずるさ”がちょっとばれてしまったかなって(笑)。とにかく偉大な人物ですからうれしかったです。演じてみて、改めてここから天下をとるまで昇り詰めたこの男はやっぱりすごいなあ、と感じました。本当に身分の低いところから始まって、僕だったら間違いなくその時点であきらめていると思います。セリフにも“商人で終わるつもりはない”ってあるんですけれど、そこから何とかして昇りつめていく姿っていうのは格好いいなあって思います。そして信長の懐にも何とか入っていこうとするのですが、そこも基本的にはきっとすべて計算で、まずはこの殿の中で自分が上にいくことを考えて・・・そういう覚悟を決められるっていうのもすごいと思いますね。

――海老蔵さんとの初共演の感想。

海老蔵さんは本当に“殿”ってかんじです(笑)。まさに信長を見ているようでした。一緒にお芝居をさせていただいて、僕が演じやすいようにというか、僕の演じたいことをわかってくださって、それを引き出してくださる・・・すごく相手のことを考えてくれているなって感じました。二人だけのシーンでも、そういうときにきちんと相手の引き出しを引っ張り出してくれて、すごく尊敬しています。海老蔵さんには、お食事にも誘っていただいて、すごく美味しいものをたくさん、ごちそうになりました(笑)。僕のクランクアップの日も朝電話がきて、“今日オールアップだけどすぐに帰るの?”って。“帰りますよ!”って言ったら、“え?帰っちゃうの?”って。そんなやりとりでした。僕の役が藤吉郎だし、そうやって二人の時間を作ってくださって、より演じやすいように考えてくださったのではないでしょうか。

――竹中さんとは久しぶりの共演でしたが。

竹中さんとは、今までに何度かご一緒させていただいて。再会がうれしかったし、“頑張ってね~秀吉だね~”っていう声もかけていただいて、大先輩ですからそこはもうとにかく一生懸命やろうってより一層思いました。

――二度目の共演となる三上さんの印象は?

三上さんとは、前に一度NHKのドラマでご一緒させていただいたことがありますが、あこがれの先輩で。その時、いつかまたご一緒して勉強したいなって思っていたので、うれしかったです。三上さんにしかできないだろうなっていうくらい、三上さんならではの今川義元がそこにいて、義元がすごく輝いていました。他にも、僕は今回共演シーンはなかったですが、佐藤浩市さんをはじめとして豪華なキャストの方ばかりで。本当にすごいドラマに自分が出させていただいて、そんなところで俺、藤吉郎なんて・・・というプレッシャーはありましたけれど、ニコニコして切り抜けようって思っていましたね(笑)

――桶狭間の戦いのシーンはいかがでしたか?

京都の殺陣のチームの皆さんは、素晴らしい方々がそろっているので、絶対にいいシーンが撮れると(リハーサルの時から)思っていましたし、実際にすごく迫力のあるシーンが撮れたと思っています。

――視聴者の皆様へメッセージをお願いします。

最近なかなか時代劇を見る機会も少なくなってしまってきていますし、この戦国時代では合戦がどうしてもフィーチャーされると思うんですけれど、そこにはやはり命をかけて戦ってきた人たちのいろんな葛藤があって。たくさんの人間ドラマがある中で、一人一人がそれぞれの思いを背負って戦う姿は是非見てほしいなって思いますね。そんな中で僕がどんな藤吉郎を演じているかも見てほしいなって思うし(笑)、本当に多くの人に見てほしいです。僕が出させていただいて、こんなこと自分でいうのも何ですけれど、本当にすてきなドラマができたな、と思っています。

■味方良介

――今回の出演のお話がきた時の感想は?

舞台の稽古中にこのお話をいただいたのですが、“僕ですか?”というのが正直な気持ちでした。テレビドラマの撮影は『教場』に続いて2本目でしたし、本格的な時代劇もあまり経験がなく、まずは、本当に驚きの気持ちが強かったです。

――台本を読んでの感想。

僕自身、あまり時代劇を見る機会が少なかったので、“桶狭間の戦いをやるんだ”というワクワク感と高揚感を感じました。我々の中にも脈々と受け継がれている300年ほど前のこの時代は、こうだったんだなと。そして、これだけ丁寧に、純粋に、この時代の織田信長を描くということがすごく興味深かったですね。僕の役(服部小平太)は実は知らない人物でしたので、深掘りしていくうちに、こういう人がいたんだということを再認識しました。

――役を演じるにあたって準備したことなどは?

京都の撮影現場ももちろんなのですが、はじめてのことばかりでしたので、これは中途半端に下準備をしてもしょうがないと思い、あえて“捨て身で行こう”と思いました。もちろん、この時代の歴史の書物は読みましたし、台本もしっかり読み込んで、芯はぶれないように心がけていたので、これといって他に特別な準備はしませんでした。この作品を通してこの時代を知っていく方が大切なのかなとも思って。現場で実際に“殿(信長)”を見て感じたことを大切にしようと思いました。

――実際に演じられての感想。

僕は津島衆と言われる織田信長に少年期から傾倒する家臣団の一人でしたが、信長様が入ってきた瞬間に、“織田信長だ!本物だ!”とすぐにスイッチが入りました。海老蔵さんのたたずまいは、“きっと織田信長ってこうだったんだろうな”と思わせてくださるものがあり、“捨て身でこの人に仕えていこう”と、自然と立ち振る舞うことができました。

――海老蔵さんの印象は?

まねしようとしても一生できないし、吸収しようとしてもできない。それは殿だけが持っているもので、でもそれをそばで感じることが楽しかったです。普段はフランクで優しい方だし、気を使ってくださったのですが、やはりどこかでずっと緊張感を持ち続けていました。

――他の共演者の方の印象は?

信勝を演じる馬場徹さんとは普段から仲良くさせていただいていたので、“この信勝を謀殺するシーンはどうなるんだろう?”という話をしていました。あの瞬間の小平太は、忠誠のかたまりで、味方良介個人としては、抜群に爽快感は感じました。殿、柴田勝家、信勝、毛利新介だけの空間で、独特の空気と緊張感があり、この作品を通して一番緊張感を感じたシーンです。松田さんは、普段は何を考えているのか、どういうふうに思っているのかわからないのですが、柴田勝家を通して対峙(たいじ)すると、とてつもない熱い魂のようなものを持っていて。小平太はずっと勝家のことを疑い続けますが、最後には、納得させられてしまうのは、松田さんの唯一無二の力があったからだと思いました。津島衆の皆さんとは、はじめは探り合いの状態でした。“でも俺たち、同じ殿に仕えているから仲間だよね?”というように、すぐに一体感が生まれたように感じました。

――はじめての京都での撮影現場の感想。

独特ですよね。こんな世界があるんだ、なるほど!これが、今まで映画やテレビで見てきたものなんだ、というワクワク感。そこに踏み込んだ瞬間に背筋がピンとなるというか・・・スタッフさんもキャストの皆さんも、すごいなと思いました。

――桶狭間の戦いのシーンはいかがでしたか?

「僕は殺陣はそこまで得意ではないのですが、河毛監督が“味方は(殺陣が)できる”と胸を張っておっしゃったので・・・できることになっていて(笑)。そんな状況で、殺陣のシーンが次々と行われていくのは怖かったです(笑)。 でも“今川(義元)を討つ”という使命感で、合戦という凝縮されたシーンではいい経験をさせていただきました。生き死にが目の前にあり、必死にくらいつきましたね。この時代は周りがどんどん死んでいく中で命をかけて闘っているのですから、自分も命をかけて闘わないといけない・・・と思いました。殺陣の出来栄えはどうだったかはわかりませんが、最後は“なんとか討ち取った”という実感はありました。

――ナレーションを務めての感想。

ナレーション自体が今回初めてで、とても緊張しました(笑)。(こういうコロナ禍の状況で)撮影から期間があいていたので、当時のことが薄れてはいたのですが、体にしっかり染みこんでいたので、少し間があき、逆によかったなと思いました。記憶を探りながらではなく、自分の中で眠っているものを呼び起こしていく感覚でした。時代劇独特の言葉やイントネーションも事前に調べはしたのですが、自分のクセがでてしまう瞬間があって、自分に対していらだちを覚えました。

――視聴者の皆様にメッセージをお願いします。

本当に“最初から最後まで”が見どころだと思います。“桶狭間の戦い”にフォーカスするのはすごくチャレンジな企画だと思いますが、その中で一人一人の人物や関係性がすごく凝縮されて描かれていて。日本人の熱くなれる魂、パッションみたいなものを感じられる作品だと思いますので、そこを感じながら是非、見てほしいと思います。

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