所得税は所得をもとに計算されますが、個人の所得税を計算する際に用いる控除は「所得控除」と「税額控除」の2つに大別できます。そのなかでいくつか「特別」の名を冠する控除があるのかをご存じでしょうか?

本記事では複数の特別控除について解説します。条件と申請方法を確認して正しい条件で控除を受けましょう。

  • 所得税の仕組み

    特別控除は特別な条件を満たした場合に、所得税が軽減できるよう設けられています

所得税の仕組み

所得税とは、個人の所得に対してかかる税金のこと。1年間の収入からそれぞれの事情を考慮するために所得控除が差し引かれた額に税率をかけ、そこから税額控除を引くことで算出されます。

計算式は以下の通り。

【所得税の計算式】

所得税=(所得ー所得控除)×税率ー税額控除

税額控除は、二重課税の排除や特定の政策を推進することを目的として設けられています。

一般的には所得控除より税額控除の方がより高い節税効果が期待できます。しかし、サラリーマンで普段は会社の年末調整で所得控除のみを受けている方が税額控除を受ける場合には、自分で確定申告をしなければ適用されません。対象となる控除が存在する場合には、忘れずに申告をするようにしましょう。

所得控除の種類

ここからは所得控除と税額控除について詳しくみていきましょう。まずは所得控除からです。所得控除は、全部で15種類あります。

  1. 雑損控除
  2. 医療費控除
  3. 社会保険料控除
  4. 小規模企業共済等掛金控除
  5. 生命保険料控除
  6. 地震保険料控除
  7. 寄附金控除
  8. 障害者控除
  9. 寡婦控除
  10. ひとり親控除
  11. 勤労学生控除
  12. 配偶者控除
  13. 配偶者特別控除
  14. 扶養控除
  15. 基礎控除

上記のうち「15. 基礎控除」は、確定申告や年末調整をする場合に、年間所得額が2,500万円以下であれば誰でも受けられます。また「8. 障害者控除」「11. 勤労学生控除」「12. 配偶者控除」「13. 配偶者特別控除」「14. 扶養控除」のように、本人や家族の状況に応じて受けられる控除もあります。

そのほか、「3. 社会保険料控除」「5. 生命保険料控除」「6. 地震保険料控除」のように、保険料や掛け金を支払い一定の条件を満たした場合に受けられるものもあります。

この中で「特別」を冠する控除は「13. 配偶者特別控除」です。以下で詳しく説明していきます。

配偶者特別控除

「配偶者特別控除」とは、納税者の年間所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下の場合に受けられる控除です。

通常の配偶者控除においては、配偶者の年間所得による段階分けはなく、納税者の年間所得に応じて控除額が3つに区分されます。一方、配偶者特別控除の場合、配偶者の年間所得が9段階、納税者の年間所得が3段階に分けられており、これらによって控除額が変化します。

普段は配偶者にかかる控除を受けていない場合でも、育休中などで配偶者の年収が下がっている場合には、配偶者特別控除が適用される場合があります。

もっと詳しく : 配偶者特別控除の書き方をマスターしよう! 受けられる条件や控除額も解説
  • 所得控除における特別控除は「配偶者特別控除」

    配偶者特別控除とは

税額控除における特別控除

次に、税額控除における「特別控除」の代表的なものをいくつか紹介します。

住宅借入金等特別控除

住宅借入金等特別控除とは、自宅として住んでいる戸建てやマンションなどの住宅ローンなどについて、年末の住宅ローン残高から算出した金額を所得税額から控除する制度です。

2011年以降に居住した住宅の場合は、控除期間が10年(2019年10月1日~2020年12月31日の間に居住した場合には、取得費用に含まれる消費税率(8%か10%)によって、控除期間が13年になる場合があります)で年末の住宅ローン残高の1%(居住開始年により20万円~40万円限度)が控除されます。

例えば、年末のローン残高が3000万円の場合、30万円が所得税から控除されます。

特例として、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅を新築または取得した人は、控除限度額が居住開始年により30~60万円に引き上げられている「認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除の特例(※2)」が受けられます。

住宅借入金等特別控除の適用条件

  • 新築または取得の日から6カ月以内に住みはじめ、各年の12月31日まで引き続き住んでいる
  • 特別控除を受ける年分の合計所得金額が3,000万円以下
  • 住宅の床面積が50m2以上、店舗や事務所を含む場合は床面積の2分の1以上が居住用
  • 10年以上にわたり分割して返済する方式の住宅ローン等がある

住宅借入金等特別控除の申請方法

  • 1年目 : 普段は年末調整しかしていない会社員の方も確定申告が必要
  • 2年目以降 : 年末調整の際に、税務署から送付される以下書類を勤務先に提出

提出書類は以下の3つです。

  1. 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
  2. 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
  3. 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
  • 住宅借入金等特別控除

    自宅を手に入れてから10年間は特別控除が受けられます

青色申告特別控除

不動産所得、自営業による事業所得、山林所得がある人は、毎年所得税及び復興特別所得税の確定申告が必要です。確定申告を行う場合、青色申告をすると特別控除のほか、青色事業専従者給与、貸倒引当金、純損失の繰越しと繰戻しの得点が受けられます(※3)

青色申告特別控除の適用条件

青色申告には3つの種類があり、それぞれに適用条件が異なります。

青色申告の適用条件 特別控除額
・簡易な記帳(白色申告) 10万円
・複式簿記で記録
・確定申告書に貸借対照表と損益計算書などを添付
・期限内に提出
55万円
・複式簿記で記録
・確定申告書に貸借対照表と損益計算書などを添付
・期限内に提出
・電子帳簿を保存
・e-Taxで提出
65万円

申請方法

青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに所轄の税務署に「青色申告承認申請書」の提出を行います。

なお新規開業した場合や相続により被相続人の事業を承継した場合には、3月15日とは別の提出期限が設定されています。

  • 青色申告特別控除

    青色申告特別控除を満額受け取るにはe-Taxが欠かせません


控除は各々の事情を税金に反映させるために適用されています。

特別控除という名が付く控除は、配偶者特別控除のほか、住宅ローンを借りている場合に利用できる住宅借入金等特別控除など、さまざまなものがあります。適用条件や申請方法は各々異なるため、しっかり調べて漏れなく申請するようにしましょう。

参照 :
(※1)国税庁 No.1480 山林所得
(※2)国税庁 No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
(※3)国税庁 No.2072 青色申告特別控除