角換わりの力戦から永瀬王座が渡辺明王将の端攻めを逆用して快勝

将棋のタイトル戦、第70期王将戦七番勝負(主催:スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社)の第5局、▲渡辺明王将-△永瀬拓矢王座戦が3月1、2日に佐賀県「大幸園」で行わました。結果は110手で永瀬王座が勝利。開幕から3連敗を喫した永瀬王座ですが、これで2連勝。依然渡辺王将が有利なスコアですが、番勝負のゆくえは分からなくなってきました。

角換わりの将棋となった本局は、渡辺王将が序盤早々に桂を跳ねていく速攻策に出ました。永瀬王座はこれに対して早繰り銀で対抗します。

駒交換がどんどん行われる激しい展開になるかと思いきや、互いに歩を持ち駒にしただけで序盤は収まりました。渡辺王将は桂を跳ねた後は自陣に手を入れ、一気に攻め倒そうとはしません。永瀬王座も繰り出した銀を相手の銀と交換せずに、7筋を抑え込む駒として活用しました。

永瀬王座とは異なり、右銀の活用がなかなか見込めない渡辺王将は1筋の端攻めで手を作っていきます。しかし、本譜はこの端攻めを永瀬王座がうまく逆用します。まずは序盤で中段に跳ねてきた相手の桂に自陣の桂をぶつけ、桂交換。そして1筋と3筋を絡めた歩の攻めで、香得を果たしました。

そうして手にした桂香を永瀬王座は盤上に次々と投入し、馬との協力で渡辺玉を攻め立てました。なんとか攻めをしのいで反撃のチャンスを得ようとする渡辺王将でしたが、永瀬王座の飛車にまで自陣に成り込まれては勝負あり。最後は金打ちで上部脱出の望みを絶たれた局面で、渡辺王将の投了となりました。

この勝利で永瀬王座は2勝目を挙げました。依然カド番のままですが、次の第6局は先手番。今年度永瀬王座は先手番で22勝5敗、勝率8割1分5厘という好成績を挙げています。タイトル戦やリーグ戦等で強敵と当たることが多いにも関わらず、この成績はすごいの一言です。


両対局者の今年度成績。先後とも同勝率の渡辺王将に対し、永瀬王座の偏りが目立つ

永瀬王座が追い付いてフルセットに持ち込むのか、それとも渡辺王将が悪い流れを断ち切り、3連覇を達成するのか。注目の第6局は3月13、14日に島根県「さんべ荘」で行われます。

カド番に追い込まれてから2連勝の永瀬王座(提供:日本将棋連盟)
カド番に追い込まれてから2連勝の永瀬王座(提供:日本将棋連盟)