サロガシー(代理母出産)やLGBTを描く『サロガシー』で「第32回フジテレビヤングシナリオ大賞」を受賞した的場友見さんがこのほど、取材に応じ、作品に込めた思いや、地上波ドラマに対する期待などを語った。
第1回受賞の坂元裕二氏以来、野島伸司氏、安達奈緒子氏、野木亜紀子氏など、数多くの人気脚本家を輩出してきた「ヤングシナリオ大賞」。1,567作品の応募から大賞に選ばれた『サロガシー』は、堀田真由主演でドラマ化され、3月24日(24:55~25:55 ※関東ローカル)に放送される。
ストーリーの着想は「ゲイの友人とランチをしているときに『僕の場合はもう結婚とか子供を持つライフイベントはなくて、楽しいことが何もない』と言っていたんです。『じゃあ子供を持ちたいという願望はあるの?』と聞くと、海外だとサロガシーという代理で生んでもらう方法があり、実際に彼の友人にはそれで子供を持っている人もいるというのを知って、書きたいなと思ったのがきっかけです」という的場氏。
さらに、「並行して別の友人と話しているときに、『セクシャルマイノリティの人は“かわいそう”とか“つらい思いをしている”と決めつけがあると』言っていて、“セクシャルマイノリティはかわいそうで、ストレートなら幸せ”という区切り方に疑問を抱いて、サロガシーという題材で、固定概念を崩すとか、違う視点になるきっかけになるものを書きたいと思いました」と執筆に取りかかった。
こうして締め切り直前、2日間で一気に書き上げ、見事大賞を獲得。「今まで、ヤングシナリオ大賞は4作品応募させていただいたんですけど、この『サロガシー』だけじゃなくて、私が書いているのはセクシャリティとかジェンダーに関わるものが多いんです。自分の書いてきたものがちょっとずつ時代にマッチしてきてるんだろうなと思っておりまして、(ジェンダーなどの問題について)みなさんが興味を持っていただいているこのタイミングでドラマ化できて、すごくタイムリーで良かったなと思っています」と話す。
描写において気をつけたのは、「ゲイのカップルを普通の男女のカップルと変わらないようにする」という点。「ゲイのカップルを特殊に見られるのが嫌だなと思ったんです。ゲイのカップルが出ているだけで、“LGBTモノ”とか“BLモノ”みたいな見え方はしてほしくないと思ったので」と明かした。
撮影現場も訪問したが、「(堀田演じる)環の役がすごい複雑で、演じるのも難しいなと思っていて、全くイメージがついてなかったんですけど、実際現場を見せていただいたら、本当に想像をはるかに絶して、完全に環だったんですよ! 結果論ですけど、完全にベストマッチングのキャスティングだなと思いました。他の家族役の皆さんも、イメージ以上だったのでうれしかったです」と喜んだ。
昨今、配信ドラマが勢いを増しているが、地上波のドラマに期待することを聞いてみると、「最近の若者って、SNSで普段の生活圏では関わらない人とも関わるから、理解と共感が幅広くて優しい人が多いというのを聞いたことがあって、それってまさに地上波のテレビが担う役割だなと個人的には思うんです。SNSだと情報のソースが不確かだったり、本当に困ってる方はSNSでも発信できないくらいの状況だし、地上波のドラマだからこそ、フィクションだからこそ伝えられることもあるので、そこに情報を込めて伝えることができると思っております」との考えを回答。
それを今作に置き換え、「サロガシーを現実のノンフィクションとして見せると、批判を浴びてしまう人がリアルにいると思うんですけど、あくまで創作なので、創作の中でサロガシーという選択をせざるを得ない今の日本の状況とか、大手を振って『サロガシーしました』と言えない状況とかを知っていただけたら」と期待を込めた。
なお、CS・フジテレビTWOでは、3月14日~17日に野木亜紀子氏の『さよならロビンソンクルーソー』(田中圭ほか)や、桑村さや香氏の『輪廻の雨』(山本裕典ほか)など、「ヤングシナリオ大賞」受賞の過去8作品を一挙放送。「第33回フジテレビヤングシナリオ大賞」は、3月末まで応募を受け付けている。
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