好きなことで食べていく。理想の働き方ではあるけれど、そう簡単にはいかないもの。でも、副業や複業が当たり前になりつつある今のこの世の中なら、好きなことを続けていくことは不可能ではないかも。むしろ、そういう生き方ってカッコイイ?!
パラレルワークは「意識高く」なくてもできる、そんな風に思わせてくれる、パラレルワーカーな4人組ロックバンド「ザ・クレーター」。前回に続き、ボーカルの菊永真介さん、ドラムでリーダーのシモセニアンさん、ベースのOKDさん、ギターのひらのともゆきさんの4人に働き方や生き方について話してもらいました。
今の働き方をどう思うか
バンドマンと会社員、どちらも本業とする働き方、生き方に対し、それぞれどんな思いを抱いているのでしょうか。
菊永さん「20代はいわゆる『ザ・バンドマン』の典型で、深夜のコンビニバイトで生計を立てていました。その後就職したら、今度はライフサイクルが変わってしまい、ツアーができるほどバンド活動が忙しくなったのに、仕事で休みが取れず、心理的に追い詰められていったのです」。
そんな菊永の様子を見かねて、シモセニアンさんが社長を務めるカムストックで働かないかと誘ったそう。
菊永さん「最初は迷いましたが、今は入社して良かったと思っています。あの働き方のままではきっとバンドが終わってたと思うし、僕自身も音楽を続けられていたかどうか。経済的な問題や家族の理解など、さまざまな理由でやめるバンドマンは少なくないですが、こんな歳になっても、バンドを始めた頃と変わらぬテンションで活動でき、良い緊張感を持って生活できるのは幸せだと思いますね」。
OKDさん「僕は得意なことを活かす形で、バンドでも会社でもデザインなどの制作業務を担当していますが、もともと好きでやっていた事なので自身の吸収も良くって、やれることの範囲がすごく増えました。それぞれを並行してこなすことで、得たこと、学んだ要素を、相互に活かし合えるんですよね。そういう機会を会社に与えてもらってるわけですが、この生き方を選んで良かったなぁ!! と」。
ひらのさん「ずっと音楽ばかりやってきた『ふわふわした人生』だったので、世間一般の会社員と比較すると自身の力不足を感じることばかり。会社では、パラレルどころかマルチにいろんな業務を担当しているので、なかなか大変ですね。でも、おかげで、バンドマンと会社員を両立できるよう、時間の使い方に気を配るようになるなど、自分の中での変化は感じています。あと、旅好きなので、平日祝日関係なくツアーで全国各地に行けるのも、いいね! と思います!」。
シモセニアンさん「会社のこと、バンドのことと、時間と場所を分けずにできるのはいいですね。そのために会社を作ったので。バンド活動は僕のアイデンティティ。そこがでっかい幹です。会社経営はそこから生まれた枝葉みたいなもの。従業員もいるので、もちろん真面目に経営者をやっていますが、すべてが一つなんです。この働き方をつらいと思ったことはないですね」。
好きなことは続けるべきか
彼ら4人に最後に投げた質問は、「好きなことは続けるべきか」。それぞれ次のように語ってくれました。
菊永さん「好きなことを続けるために、『好きじゃないこともやらなきゃいけない』ということはよくありますよね。そうした現実を自分の中でうまく消化したり、バランスを取ったりするのが難しい。自分自身を振り返ると、日々そんな葛藤の繰り返しでした。でも、好きな音楽を続けてきてよかったと思うし、僕にとってバンド活動はあらゆる世界の入り口。なので、好きなことは続けてみた方がいいんじゃないかと思います」。
OKDさん「僕は一度、音楽をやめて地元に帰って、学校の先生をやろうかと思ったことがあったんです。でも、そうなっても絶対にまた音楽をやり始めるだろうと。やっぱり自分がバンドをやっていない未来が想像できなかったんですよね。人生って悩んで選ぶ道だから、折角なら、より多くのことが好きなことにつながるように苦楽を続けられる方がいいな、と思います。どう続けるか? なのかな」。
ひらのさん「私にとってバンド活動は、宝探しみたいなもの。見つかるまでは大変ですし、時々疲れるんですが、きっと見つかると思って掘り進んでいる。今もまだその途中にいる感覚です。そんな私からすると、続くことが好きなことじゃないかなっていう気がしますね」。
シモセニアンさん「好きなことはやめられないはずなんですよ。どうせやめられないならやった方がいいよね。その方が面白いよと。僕は若い頃から、一回だけの自分の人生を、できない言い訳を並べ立てるようなものにはしたくなかった。今の世の中、自分に素直に生きることって、そんなに難しいことではないんじゃないかと。きっと本当は、誰にでもできるんですよ。可能性は、自分で作るものですから」
時代が変わり、働き方が大きく変化しています。また、コロナ禍により、すべての人に、否応なしに変化が強いられた部分も。ただ、この波が逆戻りすることはないでしょうし、むしろそのスピードは早まるかもしれません。正解が一つと言えない世の中、彼らの働き方、考え方は参考になるのではないでしょうか。
取材協力:「ザ・クレーター」
歯ごたえのある演奏と、クセのある声で歌うポップなメロディが特徴の、 「泣いて、笑って、歌って、踊れる」歌モノロックバンド。