コロナ禍で多くの企業が苦境に立たされていますが、業績絶好調な業界もあります。それは巣籠もりで人との関わりが薄れてしまう中でも楽しみを与えてくれる、ゲーム業界。中でもとりわけ好業績が目立ったのが、Nintendo Switchで大ヒットを飛ばしている任天堂です。
ゲーム業界の銘柄ではどのように株価が推移しているのか。任天堂だけでなく、ゲームソフトを販売する関連銘柄にも注目して解説していきます。
任天堂は大幅増益
2020年度、ハード機では発売から5年目にして過去最高の販売台数を更新中のNintendo Switch。2020年12月末までで累計7,987万台、ソフトでは2020年度に100万本の販売を記録した自社タイトルが20本にのぼるなど、その勢いはとどまるところを知りません。
当然の結果として、2020年4月-12月期の累計では売上高が前年同期比37.3%増、純利益が91.8%増と大幅に成長。四半期ごとの数値を見ても素晴らしい推移を見せています。
Nintendo Switchの爆売れで注目したい関連銘柄
さらにNintendo Switchの好調な販売は任天堂以外の企業にも好業績をもたらしています。ここでは特に業績の良い3社を紹介します。
コナミHD(9766)
まずは2020年11月に「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」を販売したコナミHD(9766)です。桃鉄は2021年1月末時点で250万本を出荷しており、好調な売り上げとなっています。 任天堂の2021年1月の月間ダウンロードランキングで1位になっている他、各販売サイトでもランキング上位にランクインしているため、今後も販売台数の増加が期待されます。
マーベラス(7844)
続いてマーベラス(7844)です。2020年11月に販売した「天穂のサクナヒメ」や「ノーモア★ヒーローズ」シリーズのタイトルが予想を上回る売り上げを記録しています。
また2021年2月には主力IPである「牧場物語」最新作の発表も控えており、今期の経常利益を30%上方修正。配当の増額も行っています。
イマジニア(4644)
3つ目はイマジニア(4644)です。2020年12月に全世界で販売本数100万本を達成した「Fit Boxing」の最新作「Fit Boxing2 -リズム&エクササイズ- 」を発売し、2021年1月には累計出荷台数が50万本に及ぶヒットとなっています。
さらに「すみっこぐらし」や「リラックマ」のスマートフォン向けアプリが好調で、2020年10-12月期では売上高が+80.1%、純利益が+246.2%と急成長しており、こちらも今期の経常利益を15%上方修正、配当の増額も行っています。
今後の展望という点でいうと、現在販売好調なタイトルを抱える企業はもちろんですが、新タイトルの発売を控える企業にも注目です。
先に挙げたマーベラスに加え、カプコンは3月に「モンスターハンター ライズ」の販売を控えており、予約段階で高い注目を集めています。
もちろん、ハード機にとどまらずソフトでも有力タイトルを多数持つ任天堂に注目ですが、関連企業の行方にも目を向けてみると面白いかもしれません。
今後の株価の行方は、来年の業績次第?
このように、大幅な増益を見せたNintendo Switch関連企業ですが、株価にはどのような影響があったのでしょうか。これまでの推移を見てみましょう。
2020年3月のコロナショックで相場が急落した際につけた安値と比較すると各社100%近い上昇を見せており、コナミHDに至っては200%近い上昇となっています。業績の好調さに相まって株価も急上昇してきたことがわかります。
合わせて1月末から2月初旬の決算発表からの推移を見てみると、各社好調な業績を発表していましたがマーベラスはやや下落しているなど、各社更なる急上昇というわけではなくなっています。
この値動きから、株価は過去の実績ではなく、将来の業績を表しているということがわかるのではないでしょうか。発表された決算は過去の成績であり、株価にとってはこの成長が未来も続くかどうかが重要なのです。
また決算発表までに好業績がどれだけ株価に織り込まれていたかも重要になります。
ゲームの場合、ハード機やソフトの売れ行きは販売サイトのランキング等を見ればある程度予測することができ、それに伴い業績の好調さも見通せる状況でした。
そのため決算までに好業績を株価が織り込んでいる場合は、予想通り好業績が発表されたとしても材料出尽くしとなり、その後の上昇にはつながらないケースもあります。
このように、決算にまつわる株価の値動きに関しては、事前の予想に対し実績でどれだけサプライズがあるか、そして今後の業績はどうかといった複数のファクターがあります。単純に直近の業績の良し悪しだけで評価するのは難しいのです。
将来への期待感、今後のハード・ソフトの売れ行きに注目を
とはいえ、各社の株価の値動きを見てみると、決済後も概ね崩れることなく堅調に推移しているため、将来への期待感も強いことが読み取れます。
実際、Nintendo Switchの売り上げは、発売から5年たった今でも伸びが続いています。
過去のハード機の売り上げを例にとると、例えば2000年代に発売されたニンテンドーDS(累計販売台数1億5,402万台)は発売から4年目で伸びが鈍化し5年目にピーク、Wii(累計販売台数1億163万台)では3年目に売り上げのピークを迎えています。少なくともWiiの累計販売台数超えは、射程圏内に入っていると言えるのではないでしょうか。
また、人々の生活様式も変わっている中、さらなる販売台数の蓄積も期待できる状態であると言えるでしょう。
今後の株価の観点では、今までの好調な売れ行きも振り返りつつ、Nintendo Switchハードの売れ行き、そして有力タイトルのソフトの売れ行きに着目してみてはいかがでしょうか。
Finatextグループ アナリスト 菅原良介
1997年生まれ、Z世代のアナリスト。早稲田大学 政治経済学部 経済学科に在学中は「株式投資サークルForward」の代表を務め、大学生対抗IRプレゼンコンテストで準優勝を獲得。2年間の長期インターンを経て、2020年Finatextに入社。現在はFinatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当。コミュニティ型株取引アプリSTREAM内で開催されるイベントのモデレーターも務める。