富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が2020年10月から発売している13.3型ノートPC「LIFEBOOK UH-X/E3」は、重さ634gを達成した世界最軽量モデルである(13.3型ノートPCとして。同社調べ)。世界最軽量を達成、発売したあとも、同モデルの進化は続いているようだ。

というのも、本誌がキャッチしたLIFEBOOK UH-X/E3の特別モデルを実際に計測してみたところ、629gとさらに軽かった。カタログスペックから5gの軽量化は、標準的な15.6型ノートPCなどなら個体差といえる範囲のものだが、LIFEBOOK UH-X/E3のクラスになってくるとかなり大きな要素だ。実際、塗装を一層増やすだけで最大で5g増加するといわれ、もともとそうした部分まで削りに削り、部品を吟味しながら達成した634gである。そこから5gのさらなる軽量化を達成しただけでも驚きだ。

  • 世界最軽量の13.3型ノートPC、富士通クライアントコンピューティング「LIFEBOOK UH-X」の特別モデル

写真をよく見て欲しい。
勘のいい読者ならば、かなり驚いたのではないだろうか。

このLIFEBOOK UH-X/E3、ボディがガーネットレッドの塗装となっているのだ。上述のとおり、塗装を一層増やすだけでだいたい5gも増量する。そのため、世界最軽量の634gを実現したLIFEBOOK UH-X/E3のラインナップは現在、塗装する層が少なくて済むピクトブラックのボディカラーに限定されている。

FCCLのコーポレートカラーを象徴するガーネットレッドは、22.5時間のバッテリー駆動(公称値)を持つ「LIFEBOOK UH90/E3」などに採用されているものだ。つまり、今回目にしたガーネットレッドのLIFEBOOK UH-X/E3は、塗装する層が標準モデルよりも多く、軽量化にはマイナスとなる赤い塗装を施した特別モデルなのである。

天板、キーボード面、ボトムケースの3層が、ガーネットレッドによる塗装となっており、実質的には10~15gの重量増が見込まれる製品だ。634gのカタログスペックから単に5g軽いというだけでなく、そこからさらに10~15gも軽量化したという計算が成り立つ。

  • 天面もガーネットレッド

FCCLによると、「これは非売品として製造したものであり、もっとも塗装のいい状態のものを組み合わせた。2度と入手できないといえるほど、世界で唯一のモデル」とのこと。エンジニアが時間をかけて塗装を厳選し、実現した唯一無二のモデルだという。

実は、FCCLのエンジニアたちは、LIFEBOOK UH-X/E3の発売後も世界最軽量を維持するための努力を続けている。世界最軽量モデルは「油断をすると太ってしまう」傾向があるからだ。

塗装が一層増えるだけで5g増加するとなれば、量産工程で塗り直しが発生しただけで、あっという間に5gアップ。また、ネジひとつまで見直して軽量化したモデルだけに、入手できるネジの形状が少し変わっただけでも重量増の可能性もある。

  • 側面もガーネットレッド。写真は左側面

  • 右側面。フラップ式のGigabit Ethernet有線LANポートを採用

サプライチェーンが混乱をきたしているコロナ禍のなか、世界最軽量の状態を維持しながら出荷を継続することは、これまでの世界最軽量モデル以上に困難といっていい。だが、そうした状況でもガーネットレッドの塗装において629gの本体を達成してみせたことは、FCCLが継続的にさらなる努力を続けていることの証しといえる。

FCCLの齋藤邦彰社長は、「これからも世界最軽量の座は譲らない」と宣言する。2021年1月25日に開催した「FCCL DAY1000 Memorial Reception」と題したオンライン記者会見では、引き続き世界最軽量のノートPCを開発中であることを公表した。

「次世代の最軽量ノートパソコンは、クリエイティビティとコネクティビティを強化し、さらに軽さと強さを実現し、強力なパフォーマンスとセキュリティを実現するものになる。5Gの採用によって、いつでもどこでも、使える場所が広がる仕様になり、美しい画面、長時間のバッテリー駆動、UH(編注:LIFEBOOK UHシリーズ)を超えて進化するUHになる」(齋藤社長)

  • 特別モデルのCPUは第11世代Intel Core i7-1165G7、目盛りは8GB、SSDはNVMe 1TB(WDC PC SN530)でした。パームレストのガーネットレッドも映える

FCCLの社内関係者によると、2021年2月から齋藤社長は、従来モデルに比べて2倍以上のバッテリー駆動時間を持つ特別モデルを使い始めたようである。この特別モデルの誕生は、上記の「FCCL DAY1000 Memorial Reception」において、新生FCCLのスタートから1000日目を迎えたことに対してお祝いのビデオメッセージを送ったNECパーナルコンピュータおよびレノボ・ジャパンのデビット・ベネット社長のコメントがきっかけになっているようだ。

ベネット社長は「素晴らしい製品だ」とLIFEBOOK UHシリーズを手に持ったものの、「ちょっとバッテリーが切れそうなのでPCを交換する」と言って、NECパーソナルコンピュータのLAVIE Pro Mobileを取り出した。そして「こちらは24時間もバッテリーで動くので、まだ大丈夫」と述べ、バッテリー駆動時間が約11時間であるLIFEBOOK UH-Xとの差を指摘。斎藤社長はどうもこれに触発されたようだ。

齋藤社長は、「これで文句は言われない。早く会わないといけない」と、ベネット社長に見せつける機会をうかがっていることを周囲に漏らしているという。相当に悔しい思いをしたに違いない。

かつてノートPCの開発に携わっていた齋藤社長が自ら特別モデルを手に取り、率先して効果や重量増などを検証しているようだ。バッテリー駆動の長時間化は、次世代の世界最軽量モデルにおいて、重要な要素のひとつになるのかもしれない。

また、開発を担当したエンジニアたちの間からは、「世界軽量化は当たり前。なにか新たな要素を加えたい」という声も聞かれており、そこにバッテリー駆動時間をはじめとした様々な要素が加わる可能性もあるだろう。新たな世界最軽量モデルへの挑戦が楽しみだ。