「企業がフェアに挑戦できる未来をつくる」そう語るのは、株式投資型クラウドファンディング・FUNDINNO(ファンディーノ)を運営する日本クラウドキャピタル・代表取締役COOの大浦学氏。FUNDINNOの登場によって、ベンチャー・スタートアップ企業への投資は、どのように変化していくのでしょうか。

今回は、そんな大浦氏に起業のきっかけやビジョン、FUNDINNOの可能性について、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏が対談を行いました。

  • 株式投資型クラウドファンディング・FUNDINNO(ファンディーノ)が資金調達の世界を変える【前編】

株式投資型クラウドファンディングとは

井上一生氏(以下、井上)――本日はありがとうございます。FUNDINNO(ファンディーノ)は、テレビCMなどでも知られる有名なサービスですが、普通のクラウドファンディングとはどのような違いがあるのでしょうか。

大浦学氏(以下、大浦)――普通のクラウドファンディングとの違いは、「株式投資型クラウドファンディングは物販や寄付ではない」という点です。クラウドファンディングにはさまざまな種類がありますが、一般的に知られているのは購入型クラウドファンディングです。

購入型クラウドファンディングは、Eコマースに近い性質があります。例えば、「時間が経っても冷めないコップ」をベンチャー・スタートアップ企業が開発したとして、それを量産するためにクラウドファンディングを活用するとします。

投資したリターンとして、その冷めないコップを受け取ることができる。他には、本を出版するためにクラウドファンディングを活用し、投資家はリターンとして本を受け取ったり出版記念パーティーに招待されたりする。そのような購入型クラウドファンディングは、前払いのEコマースと言えます。

  • 日本クラウドキャピタル・代表取締役COO 大浦学氏

株式投資型クラウドファンディングの場合、投資先はベンチャー・スタートアップ企業で、投資したリターンとして株式を受け取ります。企業が成長したとき、その株式を売却するなどして大きなリターンを得ることが期待できるのでs。株式投資型クラウドファンディングは免許が必要で、弊社も第一種少額電子募集取扱業者として金融庁に登録しています。

井上――個人版ベンチャーキャピタルのようなイメージですね。大浦さんのなかで、ベンチャー・スタートアップ企業の資金調達の課題感があったのでしょうか。

大浦――そうですね。ベンチャーキャピタルの場合、プロの投資家が投資先を選ぶわけですから、ごく一部の人しか投資できない閉ざされた世界です。ベンチャー・スタートアップ企業側から見ても、プロの投資家から出資を受けるにはハードルがあります。それをITの力で変えていきたいという想いがあり、限られた一部のプロの投資家だけでなく、一般の人もベンチャー・スタートアップ企業に投資できる環境をつくりたい。また、出資を受けるベンチャー・スタートアップ企業にとっても、資金調達以外のメリットもあるようにしたいと考えています。

井上――ベンチャーキャピタルの場合、結果的にはベンチャーキャピタルだけが儲かるケースもありますし、大きな出資を受ける分、会社を牛耳られてしまうなど制約がいろいろとありますよね。FUNDINNOのスタイルは、株式の本来の姿と言えますね。どのような経緯で、このビジネスを着想されたのですか。

企業がフェアに挑戦できる未来をつくる

大浦――私は、大学院ビジネススクール時代にIT会社を起業してアプリ開発などの受託を3~4年ほどしていました。その会社経営のなかで、外部からの資金調達なども経験したのですが、企業側から見ると株価の計算などの情報が少ないなと感じたんです。投資家は投資のプロですから致し方ない部分もあるのですが、企業が投資家にプレゼンする際の武器になる情報が少なくて、投資家側が優位に思えました。

そこでITの力を活用して、「もっとフェアに起業家が挑戦できないか」「もっとベンチャー・スタートアップ投資を大衆化できないか」と考えたことがFUNDINNOにつながっています。FUNDINNOのようなサービスはイギリスやアメリカが先行している分野で、調べていくとITの領域ではなく金融の領域だった。それで金商法などについて学んでいき、第一種少額電子募集取扱業者の登録も行いました。

井上――FUNDINNOには、一部の人しかアクセスできなかった金融サービスの裾野を広げる可能性をとても感じますね。次回はFUNDINNOについてもっと教えてください。

  • 大浦氏とSAKURA United Solution 代表・井上一生氏(右)

(次回に続く……)