誕生月にはがきや封書で届く「ねんきん定期便」、開封してきちんと内容をチェックしていますか?
ねんきん定期便には、主に「これまでの保険料納付額」や「将来受け取れる年金の見込み額」が記載されています。内容を確認しないと将来の家計に影響が出る可能性も。読み方と見るべきポイントを知り、"なんとなく眺めて終了!"を卒業しましょう。
漠然とした老後のお金の不安を解消する手段は?
今は人生100年時代。「95歳まで生きるには、公的年金だけでは老後資金が2000万円不足する」という金融庁の報告書の試算が2019年に大きな問題になったことは記憶に新しいはず。これにより、「老後のお金について何となく不安……」と漠然とした不安を感じた人も多いのではないでしょうか。
老後のお金に対する漠然とした不安を抱えている一方、老後生活のベースとなる「将来の年金額」を把握できている人はどれぐらいいるでしょうか。「自分がどれぐらいの年金を受け取れるか」を分かっている人は決して多くないはずです。
働く私たちの老後のお金に対する「何となく不安」の正体は、自分のお金のことをきちんと把握できていないこと。「自分がどれぐらいの年金を受け取れて、どれぐらい不足しそうか」がわかれば、将来に向けてやるべきことが可視化でき、不安な気持ちが軽減するはずです。そこで将来の年金を把握するために有効なのが「ねんきん定期便」です。
20代・30代・40代の方にとっては「年金を受け取るのはまだ将来のこと」と思うかもしれませんが、一度覚えればずっと役立つ内容です。ぜひ読み方を知っておきましょう。
「ねんきん定期便」で自分の年金情報を把握する
ねんきん定期便は、毎年1回、原則として誕生月に日本年金機構から送られてきます。対象は国民年金・厚生年金保険に加入中のすべての人に届き、35歳・45歳・59歳の節目の年齢の人にはより詳しい情報を記載した封書で、それ以外の年齢の人にははがきで届きます。
また50歳を境に通知はがきの記載方法が変わり、「50歳未満」「50歳以上」の2種類のタイプがあることを知っておきましょう。今回は50歳未満の人の場合で読み方と確認ポイントを解説していきます。
ねんきん定期便は、大きく3段に分かれています。順を追ってそれぞれチェックしていきましょう。
【1段目】1.これまでの保険料納付額(累計額)
まず1段目には「これまでの保険料納付額(累計額)」欄があります。ここでは、今まで自分が納めた保険料の累計額がわかります。厚生年金保険料は、保険料の半分は雇用主である会社が負担していますが(労使折半)、個人負担分の合計金額が記載されています。
上の例の場合であれば、これまでに支払った保険料の合計は360万7720円となります。
【2段目】2.これまでの年金加入期間
次に確認したいのが「これまでの年金加入期間」欄です。この欄には、国民年金保険、厚生年金保険(その他に船員保険もあり)のそれぞれの加入期間と、その合計などをもとにした受給資格期間が記載されています。上段の「国民年金(a)」は学生・自営業などで国民年金に加入していた期間、下段の「厚生年金保険(b)」は会社員などで厚生年金に加入していた期間です。一般的に大学を卒業後に会社員となった人の場合、20歳から大学卒業までの月数が(a)の「第1号被保険者」欄に、会社員として働き始めてから現在までの月数が(b)の「一般厚生年金」の欄にそれぞれ記載されています。
上の例の場合であれば、「第1号被保険者」の期間は「52カ月」、「厚生年金保険計」が「197カ月」(「一般厚生年金」の「174カ月」と「私学共済厚生年金」の「23カ月」合計)で、合計249カ月年金加入期間があるということになります。年金を受給するには、受給資格期間が10年(120カ月)以上必要となりますので、この場合は資格を満たしており、原則65歳から老齢年金を受け取る条件を満たしているということになります。
年金を納めている期間が短くなると受け取れる年金額がそれだけ少なくなります。加入履歴の月数に漏れがないかを必ず確認しましょう。誤りや漏れがあった場合は、ねんきん定期便に記載されている日本年金機構の「お問合せ先」に連絡をしましょう。
【3段目】3.これまでの加入実績に応じた年金額
最後に確認したいのが、「これまでの加入実績に応じた年金額」欄。この欄には今までに支払った保険料で受け取れる年金額が記入されています。あまりに少なくて、がっかりする人が多いのですが、「50歳未満」タイプは、将来受け取れる年金額が記載されているわけではなく、「今までに支払った保険料で受け取れる年金額がいくらか」が記載されています。この後も、公的年金には加入し続けるわけですから、実際はもっと多くの年金額が受け取れるということを知っておいてください。それでは詳しく見ていきましょう。
上段(1)が老齢基礎年金=国民年金、中段(2)が老齢厚生年金=厚生年金の支給額で、 下段が合計額です。 上の例の場合は、
■老齢基礎年金(国民年金) 年35万5920円
■老齢厚生年金(厚生年金) 年27万3670円(一般厚生年金期間+私学共済厚生年金期間)
合計 年62万9590円
現時点での受け取り額は約63万円(年)。この数字を見て「こんなに少ないの?」とがっかりしてしまう人もいるかもしれませんが、これは、あくまでも現時点での金額です。今後働き続けることで実際の年金額は増えていくため、参考程度と捉えるようにしましょう。
毎年届くねんきん定期便は老後資金について考えるきっかけになります。きちんと内容を確認しないと、将来的に家計が苦しくなるかもといった見込みを予測することもできません。できるだけ早いうちに年金について考えることで、将来を見据えた貯蓄や投資をスタートしたり、働き方を見直したり、といった対応を考えることができます。また、さらに詳しく知りたいという方は、「ねんきんネット」の読み方も調べてみましょう。なんとなく眺めて終了……ということがないよう、ねんきん定期便の読み方を理解し、将来のために活用したいものですね。