スズキが2021年度からの5年間を対象とする中期経営計画「小・少・軽・短・美」(ショウ・ショウ・ケイ・タン・ビ)を発表した。小さなクルマを取り扱うスズキにとって、電気自動車(EV)を含む電動化車両の開発が最重要課題になりそうだが、これからの5年で同社はどんなクルマを作るのか。
軽の電動化はどう進める?
「小・少・軽・短・美」は「より小さく、少なく、軽く、短く、美しく」を意味するスズキのスローガン。創業以来、同社のモノづくりの根幹となっている。同計画で掲げる数値目標は連結売上高4兆8,000億円(2020年度実績は3兆4,884億円)、営業利益率5.5%(同6.2%)、四輪車の世界販売台数370万台(同285万台)。研究開発費は5年で1兆円を想定しており、ほぼ全額をクルマの電動化に使う方針だ。
新計画発表の記者会見で同社の鈴木俊宏社長は、「日本の軽自動車は地域の足、生活の足として必要不可欠。公共交通機関に代わる足としても使われている。商用車の58%も軽自動車だ」と日本における軽自動車の重要性に言及。「生活の足を守り抜く気持ちで進めていく」として、今後も軽に注力していく姿勢を明確にした。
ただ、経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」には、「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう、包括的な措置を講じる。商用車についても、乗用車に準じて2021年夏までに検討を進める」とある。小さなクルマを取り扱うスズキにとって、価格向上に直結するクルマの電動化をどう進めるかは大きな課題となるはずだ。特に、軽自動車をどうやって電動化するかは気になる。
鈴木俊宏社長の電動化に関する発言を拾ってみると、以下のようなものがあった。
「2025年までに電動化技術を整え、2030年にかけて電動化技術を製品に全面展開すると同時に、さらなる技術の向上を進め、2030~2050年にかけて電動化製品の量的拡大を図る」
「中期経営計画期間中の取り組みとしては、2025年以降もスズキが生き残ることができるよう、電動化技術を集中的に開発する」
「スズキハイブリッドシステムの開発・製品化では、軽自動車用、小型車用、商用車用のハイブリッドシステムの開発、PHEVの開発、搭載車の拡充に努める」
「EVの開発・製品化では、軽自動車EV、小型車EVの開発を行う。開発ではトヨタとの共同開発も活用する考え」
車種の何割を電動化するかという数値目標については「設定していない」ものの、「ストロングハイブリッド、PHEV、EVを適切な時期に全車種に投入していくということで、モデルチェンジなどのタイミングで順次、導入していきたい」とした。スズキは現状、マイルドハイブリッド(MHV)技術を搭載したクルマを取り扱っているが、その上のストロングハイブリッド技術については自社開発を進める方針だ。つまり、協業関係にあるトヨタの技術をそのまま搭載するわけではないようなのだが、同技術の開発に向けてはトヨタの指導を仰いだり、部品の共通化でコスト削減を図ったりして協業関係を活用していくという。
軽の電動化については「価格の問題さえクリアできれば」ストロングハイブリッドもPHEVも投入したいところだが、「PHEVは、なかなか難しいのでは」との考えを示した。軽EVの発売時期については検討中とのことで、期間中に発売するかどうかについても明確にしなかった。