魅力的なミラーレスを多数ラインナップする富士フイルムのXシリーズ。具体的にその魅力を述べれば、コンパクトであること、メカニカルダイヤルを多用していること、フィルムの描写を意識した隙のない絵づくりであること、そして写りのいい交換レンズ群が揃っていることなどでしょう。特に、コンパクトであることは、APS-Cサイズのイメージセンサーの採用で実現したもので、ローエンドモデルからハイエンドモデルまで“ウエアラブル”と言ってよいと感じます。その最右翼とも言えるのが、上位モデルと同じキーデバイスを小型軽量なボディに搭載するX-Eシリーズのように思えます。今回は、その最新モデル「X-E4」を紹介します。

  • 軽量コンパクトなボディに上位モデルと同じキーデバイスを搭載する富士フイルムの最新ミラーレス「X-E4」。ボディカラーはブラックのほかシルバーが選べます。写真は「XF27mm F2.8 R WR」を装着したところです。実売価格は、ボディ単体モデルが税込み108,900円、「XC 15-45mm F3.5-5.6 OIS PZ」が付属するレンズキットが税込み121,000円

グリップを省いたフラットなボディに一新

まずX-E4のボディを見てみましょう。先代モデル「X-E3」もコンパクトでシンプルなボディでしたが、X-E4はさらに磨きがかかりました。ボディ前面と側面は、グリップや指がかりのような目立つ凹凸はなく、これまで以上にすっきりとしたフラットなボディに。トップカバー周りの直線を基調としたエッジの効いたデザイン処理も巧みで、よりスマートな雰囲気を醸し出しています。

  • イメージセンサーは、APS-Cサイズの有効2610万画素「X-Trance CMOS 4センサー」を採用。このイメージセンサーは「X-Pro3」や「X-T4」、「X-S10」と同じものです。ボディ前面にはフロントコマンドダイヤルしかなく、すっきりとした印象

  • 背面は先代モデル「X-E3」などと同様に十字キーはなく、こちらもすっきりとした感じです。フォーカスレバーの位置がちょっと下がっていますが、これまでのXシリーズのミラーレスに慣れたユーザーは戸惑うかもしれません。ボタンは小さく、手袋をした状態での操作は難しいことがありました

同社のホームページを見ると、“レンジファインダースタイル”とうたっていますが、メカニカルダイヤルの存在やファインダーアイピースの位置などを含め、まさにシンプルなつくりであった往年のレンジファインダー機を思い起こすものです。おそらく、多くの人から好意を持って迎え入れられるのではないかと思います。

ただ、ユーザーによってはカメラをホールドしたとき、グリップや指がかりがないため心もとなく感じられるかもしれません。メーカーもそのことは十分理解しているようで、別売のメタルハンドグリップ「MHG-XE4」(実売価格は税込み11,500円前後)に加え、ボディ上部にあるアクセサリーシューに差し込んで使用する金属製のサムレスト「TR-XE4」(実売価格は税込み8,700円前後)が本機と一緒に発売されます。今回のレビューでは、どちらも装着してトライアルしてみましたが、とても快適にカメラをホールドできました。ただし、スマートなボディシェイプのデザインは若干損なわれてしまいますが。

ボディサイズは121.3×72.9×32.7mm(幅×高さ×奥行き)、質量は364g(バッテリー、SDカード含む)。先代のX-E3は121.3×73.9×42.7mm、337gでしたので、X-E4はX-E3よりもサイズ的にわずかに小さくなったものの、質量は反対にちょっとだけ増したことになります。それでも軽量なカメラなので、より安定してカメラをホールドするには、前述したハンドグリップMHG-XE4(86g/実測値)を装着するのがよさそうです。

  • 別売のハンドグリップ「MHG-XE4」とサムレスト「TR-XE4」を装着したところです。フラットなボディは見た目カッコいいのですが、実際カメラを構えると指がかりがなく心許なく思えることがあります。しっかりカメラをホールドしたいのであれば、少なくともハンドグリップはマストと述べてよいでしょう

操作部は細かな変更が多く、既存ユーザーは戸惑うかも

操作部材のレイアウトは“基本的に”これまでに準じています。トップカバーには、シャッタースピードダイヤルと露出補正ダイヤルが備わり、シャッターボタンと電源レバーは同軸としているところも従来と同様です。背面も、先代モデルと同じく十字キー(十字ボタン)はなく、フォーカスレバーでメニューなどの設定を行うのも同様です。ただし、細かく見ていくと、いくつか変更されていることが分かります。

まず、背面上部にあったリアコマンドダイヤルが廃止されました。そのため、Q(クイック)メニューによる操作などは、フロントコマンドダイヤルで行うようになっています。廃止された正確な理由は不明ですが、前述のサムレストを装着したときにリアコマンドダイヤルが使えなくなってしまうことも考えられそうです。他のXシリーズのミラーレスと併用するときなどは、操作に戸惑うかもしれません。ちなみに、従来背面にあったQボタンはトップカバーへ移り、フォーカスレバーはなぜかこれまでとは若干下がった位置となっています。

  • 先代モデル「X-E3」(上側)と並べたところ。トップカバーのシャッタースピードダイヤル、露出補正ダイヤル、シャッターボタンの位置は同じですが、オートモード切り替えレバーが廃止に。代わってQボタンがトップカバーに移動しています。エッジの効いたシェイプは「X100V」を彷彿させます

  • X-E3では独立していたAF-LボタンはAELボタンと共通となりました。Qボタンはトップカバーに、再生ボタンはPLAYボタン隣の液晶モニター上部に移動しています。そしてリアコマンドダイヤルは廃止されています。背面の指がかりはあってもよかったのではと思えます

シャッタースピードダイヤルの脇にあったオートモード切り替えレバーもなくなっています。アドバンスドSRモードと絞り優先AEなどの応用撮影モードに素早く切り替えられたのですが、このカメラを使うユーザーには不要との判断だと思われます。フルオートで簡単に撮影を楽しみたい初心者などは、カメラの扱いに戸惑うことがあるかもしれません。

フォーカスモード切り替えレバーも廃止されてしまいましたが、これは私自身非常に残念に思えてならない部分です。これまで、同レバーはカメラの前面に備わり、素早くしかも直感的にAF-S/AF-C/MFを切り替えられたため、スナップ撮影などではたいへん重宝していました。ですが、X-E4ではメニューの中に移ってしまい、フォーカスモードを切り替えるのに一手間かかってしまいます。フォーカスモード切り替えレバーの廃止は、ボディシェイプをシンプルに見せるためなのかもしれませんが、これまでXシリーズのよき部分と思っていただけに、廃止はいささか本末転倒のような気がしてなりません。

  • 一番気になったのが、フォーカスモード切り替えレバーの廃止です。私自身はスナップ撮影のときなど頻繁にAF-SとAF-Cを切り替えることが多いため、このレバーの存在はとても便利に思えていたのですが、X-E4ではメニューでの設定となり、たいへん使いづらくなってしまいました。簡単に動きやすいので廃止したという理由だとしたら、本末転倒もいいところです

  • フォーカスモードの切り替えはメニューで行うようになりました。直感的で素早くフォーカスモードの切り替えができたレバー操作とは異なり、メニューボタンを押し、フォーカス設定ダブを選択し、「フォーカスモード」からいずれかのモードを選択する必要があるため、否が応でもカメラの扱いに慣れること請け合いです

その他の変更点としては、新たにシャッタースピードダイヤルにP(プログラムAE)ポジションが備わりました。これまでは、レンズの絞りダイヤルとシャッタースピードダイヤルをどちらも「A」(オート)にセットするとプログラムAEとなっていましたが、このPポジションにセットすると、レンズの絞りダイヤルがAにセットされていなくてもプログラムAEが機能します。プログラムAEをよく使うユーザーは便利に思える部分です。

チルト式液晶モニターの搭載も注目したい部分です。ハイアングル、ローアングルの撮影を容易としているほか、上方向へは180度可動し、セルフィー撮影にも対応しています。

  • 液晶モニターはチルト式を採用。これまで固定式でしたので、ローアングル撮影やハイアングル撮影では飛躍的に使い勝手は向上しています。さらに上方向に180度可動するため、自撮りのときも便利になりました

  • アイレットは丸型から平型に変更。こちらは見た目の問題なので深く言及はしませんが、平型のアイレットは三角環を必要としないため、コストダウンしたように思えてしまいます

  • バッテリーは、従来と同じ「NP-W126S」を使用します。メーカー公表値による静止画撮影可能枚数は460枚とのことなので、バッテリーの持ちはよいほうかと思われます。カードスロットはバッテリーボックスのなかに設置されています

センサーやエンジンは上位モデルと共通に、手ぶれ補正機構は内蔵せず

キーデバイスを見てみましょう。イメージセンサーは、待望の有効2610万画素「X-Trance CMOS 4センサー」に、画像処理エンジンも「X-Processor 4」となりました。これは、上位モデル「X-T4」などと同じで、必然的に生成する画像も同様となります。デフォルトのフィルムシミュレーションである「PROVIA/スタンダード」をはじめ、「Velvia/ビビッド」や「ASTIA/ソフト」に関して言えば、階調の豊かさ、絵づくりの艶やかさなど、フィルムメーカーらしいこだわりを感じさせるものです。また、ローパスフィルターレスということもあり、解像感の高い写りが得られるのも特徴です。ちなみフィルムシミュレーションには、このX-Eシリーズとしては初となる「クラシックネガ」「ETERNA/シネマ」「ETERNA/ブリーチバイパス」が追加されています。

  • 新たに追加されたフィルムシミュレーションは「クラシックネガ」「ETERNA/シネマ」「ETERNA/ブリーチバイパス」の3つ。これで搭載されるシミュレーションは全部で12種類となりました。X-E4と同時に発表された中判ミラーレス「GFX100S」に搭載された「ノスタルジックネガ」は見送られています

連続撮影可能枚数はメカシャッター時で最高8コマ/秒。これは先代モデルと同じです。ただし、電子シャッターの場合は大きく向上しており、先代モデルの最高14コマ/秒から最高30コマ/秒となっています。ベース感度はISO160、最高感度はISO12800で、拡張機能によりISO80相当のL80からISO51200相当のH(51200)での撮影も可能としています。高感度でのノイズレベルはよく抑えられており、こちらもキーデバイスを共通とする上位モデルと同じと述べてよいものです。

  • ベース感度はISO160となります。最高感度はISO12800で、拡張機能によりISO80相当のL80からISO51200相当のH(51200)での撮影も可能としています

気になっている方も多いかと思いますが、センサーシフト方式の手ブレ補正機構の搭載は見送られています。これは、コストとボディサイズの制約によるものと思われますが、搭載されていたら本モデルの完成度はより高まったのも事実。もっとも、Xマウントの交換レンズの場合、もっとも手ブレ補正の恩恵を受ける望遠系レンズは、ほとんどの製品にレンズシフト方式の手ブレ補正機構が搭載されていますので、未搭載であることにさほど落胆する必要はないのではと思えなくもありません。私自身としては、あったらうれしいけど、ボディが大型化したり価格的に高くなってしまうのであればなくてもよいかな、と思っています。

EVFについては先代と共通です。0.39型236万ドットで、必要にして十分な見え具合と解像感ですが、そろそろこのクラスにも0.5型369万ドットのEVFが搭載さればなぁと思えてなりません。いつしかお目見えするであろう“X-E5”には期待したいところです。アイピースの光学系もおそらく先代モデルと同様ですが、画面周辺部までしっかりと解像しており、見にくく感じることはありません。願わくなら、視度調整の範囲がもう少し広いと、強い老眼や近視の人に優しいかなと思います。

  • 撮影画面を約1.25倍クロップし、ファインダーの画面に表示された枠内を撮影するスポーツファインダーモードも搭載しています。枠外も表示されるので、スポーツなど動いている被写体の撮影に適しています

液晶モニターは解像度がアップしており、3インチ104万ドットから3インチ162万ドットと進化しています。ライブビューでも撮影した画像でも、解像度の高さからさほど拡大しなくてもピントの状態など把握しやすく感じます。

最後に動画機能について。4K(3840×2160ドット)に加え、より解像度の高いDCI4K(4096×2160ドット)での撮影も可能なりました。最高フレームレートはいずれも30pとなります。さらに、ビットレートはこれまでの100Mbpsから、より高品質の写りの得られる200Mbpsが選択できるようになったことも注目しておきたいところ。前述のとおり、フィルムシミュレーションには「ETERNA/シネマ」や「ETERNA/ブリーチバイパス」が新たに搭載されているので、あたかもフィルムで撮影したような動画が楽しめます。ちなみに「ETERNA」とは同社の映画用フィルムの名称です。

  • RAWの記録方式には、これまでの「非圧縮」「ロスレス圧縮」に加え、「圧縮」も選べるようになりました。「非圧縮」や「ロスレス圧縮」に比べると連続撮影時の記録枚数が増えるほか、メモリーカードへの記録可能枚数も増えますので、効率よく撮影が楽しめます

  • X-T4やX-S10などに搭載される「明瞭度」も、今回新たに採用されました。明瞭度は、弱い輪郭を鮮明にして被写体のディテールや質感などくっきりと再現したり、反対に柔らかくソフトなイメージに再現するものです

  • 手ブレ補正機構が搭載されていないのに「なぜ?」と思ったのが「マウントアダプター設定」。実は、純正の「Mマウントアダプター」を介してレンズをX-E4に装着すると、そのレンズの特性に応じて「歪曲収差補正」「色シェーディング補正」「周辺光量補正」のパラメータが調整でき、しかも記憶しておけるのです。今回は時間がなく詳しく試すことはできませんでしたが、オールドレンズファンには見逃せない機能です。なお、純正でないマウントアダプターの場合、「焦点距離設定」と「レンズ名編集」のみ機能します

操作性の変更は気になるが、X-E3からの置き換えを決断

フラットなボディは好みの分かれるところですが、スマートな印象がより強くなった「X-E4」。同時に発表されたパンケーキタイプの単焦点レンズ「XF27mm F2.8 R WR」がよく似合うように思えますし、この組み合わせで撮影を楽しみたいと考えるXシリーズユーザーも少なくないと考えられます。上位モデルと同じキーデバイスを搭載しながら比較的に手に入れやすい価格も注目点でしょう。

私自身の話で恐縮ですが、「X100V」と望遠ズームを装着した「X-E3」の2台を日常的に愛用しています。理由は、操作部材の位置やそれに伴う操作性がほぼ同じであることなどからですが、X-E4はX100Vとまったく同じキーデバイスを搭載するため、今後X-E3から置き換えるつもりでいます。フォーカスモード切り替えレバーの廃止はちょっと痛いですが、このカメラが発売される日を楽しみに待ちたいと思います。