電力会社や料金プランによって、基本料金が大きく異なります。自分の使い方に合う料金プランを選ぶためには、まずは基本料金の仕組みを理解しておくことが必要です。そこで、電気代の基本料金の仕組みや、電気代を安く抑えるためのポイントなどを紹介します。
電気代の基本料金は大きく分けて3種類
従量電灯の場合、電気代の基本料金は、大きく分けるとアンペア制と最低料金制の2種類です。しかし、容量が小さく使用量が一定の場合など、定額制の電気代が適用されることもあります。電力自由化に伴い最低料金が0円に設定されている基本料金も登場するなど、さまざまな料金プランが登場しています。
■種類1. アンペア制
アンペア制を導入している電力会社の場合、基本料金は契約アンペアに応じて異なります。アンペア制を導入している電力会社には北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、九州電力の従量電灯プランなどがあり、電力会社や料金プラン、契約アンペアなどによって基本料金は細かく分類されます。
例えば東京電力の料金プラン「従量電灯B」場合(※1)、契約アンペアごとの基本料金は下記の通りです。
契約アンペア数 | 契約あたりの料金(税込) |
---|---|
10A | 286円 |
15A | 429円 |
20A | 572円 |
30A | 858円 |
40A | 1,144円 |
50A | 1,430円 |
60A | 1,716円 |
契約アンペアを減らすと基本料金は見直した契約アンペアに応じて下がりますが、電力量料金が変わらない場合や増えてしまう場合もある点に注意して、使い方に合うアンペア数を選びましょう。
■種類2. 最低料金制
最低料金制の料金は、使用電力量に電力量料金単価を乗じて料金を決定。関西電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の従量電灯プランなどで採用されています。
例えば関西電力の料金プラン「従量電灯A」(※2)では、下記のような料金体系です。
単位 | 料金単価(税込) | |||
---|---|---|---|---|
最低料金(最初の15kWhまで) | 1契約 | 341円 | ||
電力量料金 | 15kWhをこえ120kWhまで | 第1段階 | 1kWh | 20.31円 |
120kWhをこえ300kWhまで | 第2段階 | 1kWh | 25.71円 | |
300kWh超過分 | 第3段階 | 1kWh | 28.70円 |
また、Looopでんきや楽天でんきなど、最低料金が0円のプランも登場しています。最低料金はもちろん、電力量料金も電力会社によって異なるので、比較してみてください。
■種類3. 定額制
深夜の一定時間にしか使わない電灯など、容量が小さく使用量が一定かつ定まっている場合には、定額制の料金プランを設定できることがあります。
例えば中部電力ミライズで導入されている料金プランでは、需要家料金として1契約につき55.00円、電灯料金は10Wまでの場合なら89.63円、小型機器料金は50VAまでなら233.91円など、定額制となっています。
一般的な電気プランである従量電灯とは
一般的な電気代で料金プランとして、従量電灯プランが導入されており、「基本料金」「電力量料金」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」などその他の費用で構成されています。電力会社によって算定方法は多少異なりますが、東京電力の料金プランを例にくわしく見ていきましょう。
■基本料金
多くの電力会社では、基本料金が発生します(一部基本料金0円のプランもあり)。例えば東京電力の場合、下記のような料金プランがあり、それぞれで基本料金が異なります。
料金プラン | 基本料金 |
---|---|
プレミアムS、プレミアムL、スタンダードS、スタンダードL、スマートライフS、スマートライフL | 286円~ |
夜トク8、夜トク12 | 214.5円~ |
スマートライフプラン | 458.33円~ |
アクアエナジー100 | 561円~ |
さらに契約アンペアが高くなると基本料金は高くなり、東京電力だけでも使い方に合わせてさまざまな基本料金があります。
■電力量料金
電気代では使用した電力に応じて電力量料金が加算されますが、基本料金の種類によって電力量料金は異なります。東京電力の2種類のプランを比べてみましょう。
<スタンダードS>
基本料金 (10Aにつき) |
電力量料金 | 最低月額料金 (1契約) |
||
~120kWh | 121kWh~300kWh | 301kWh~ | ||
286.00円 | 19.88円/kWh | 26.46円/kWh | 30.57円/kWh | 235.84円 |
<夜トク8>
基本料金(1kW) | 電力量料金(1kWh) | 最低月額料金(1契約) | |
午前7時~午後11時 | 午後11時~翌午前7時 | ||
214.50円 | 32.74円/kWh | 21.16円/kWh | 235.84円 |
料金プランによって電力量料金の基準が異なりますので、使い方に合うプランを選びましょう。
■燃料費調整額
東京電力など国有企業の場合、電力量料金は一定に定められていることが多いです。しかし、毎月算定される平均燃料価格をもとに燃料費調整単価が算定され、電気料金に反映。電気代が高騰している場合には、燃料費調整額が高額になることもあります。
ただし、平均燃料価格が基準燃料価格を上回る場合はプラス調整となりますが、下回る場合はマイナス調整となり、値上げされるばかりではありません。
■再生可能エネルギー発電促進賦課金
国の固定価格買取制度では、「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5種類いずれかで、国が定める要件を満たす事業計画に基づいて新たに発電を始め場合に、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度のことです(※3)。
再生可能エネルギー発電促進賦課金とは、固定価格買取制度で買い取られる再生可能エネルギー電気の買い取りに要した費用です。毎月の電気代に上乗せで請求されます。
東京電力の場合、2020年5月分から2021年4月分までにおける再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は2.98円/kWhで、使った電力量に応じて加算されます。
基本料金から電気代を計算してみよう(従量電灯プラン)
自分の基本料金と電気使用量をもとに、電気代を計算してみましょう。電力会社から送られてくる明細やwebの会員ページを確認すると使用量や燃料調整単価なども記載されています。
■基本料金をチェック
まずは基本料金がいくらなのかを確認しましょう。例えば東京電力のスタンダードSを10Aで契約している場合、基本料金は286.00円で、最低月額料金は1契約あたり 235.84円です。
■電気の使用量を確認して電力量料金を算出
電気料金の利用明細を確認すると、その月の使用量や内訳が記載されています。どんな風になっているのか計算してみましょう。
例えば、東京電力の料金プラン「スタンダードS」を10Aで契約していて、その月の電気使用量が350kWhであった場合、電力量料金は下記の通りです。
120kWhまで | 19.88円×120kWh=2385.60円 |
121kWh~300kWh | 26.46円×180kWh=4762.80円 |
301kWh~ | 30.57円×50kWh=1528.50円 |
電力量料金の単価は公式サイトなどに表示されていますので、確認してみてください。
■燃料調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金も算出
該当月の燃料調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金も計算してみましょう。燃料調整額は毎月変動します。例えば2021年3月分の場合、下記のような計算です。
単価 | その月の料金 | |
燃料調整額 | -4.85円/kWh | -4.85円×350=-1697.5円 |
再生可能エネルギー発電促進賦課金 | 2.98円/kWh | 2.98×350=1,043円 |
ここまで計算した金額を合計すると、電気代は8,308円です。
電気代を安くするには基本料金が安いプランがいい?
電気代の基本料金が0円のプランも登場しているものの、電気の使用量によってはかえって高額になることもあります。少しでも割安な料金プランを選ぶために、選び方のポイントを紹介します。
■電気の使用量がほとんどない場合は基本料0円のプランを選ぶ
電力自由化に伴い登場した新電力会社の料金プランの中には、基本料金が無料の料金プランも登場しています。しかし、電気の使用量に応じて発生する電力量料金は割高になることもあります。
例えば楽天でんきプランSの場合、基本料金は無料で東京電力エリアの重量料金は26.50円/kWhです。東京電力のスタンダードSの場合、120kWhまでの重量料金が19.88円ですので、楽天でんきの方が電力量料金自体は割高になっています。
基本料金0円のプランは、普段は使わない別荘地、空き家などに導入すると便利です。
■電気使用量が多いと基本料金が高いプランの方が安くなることも
家族が多いなど毎月の電気使用量が多い場合には、高額な料金プランを選ぶことで電気代を抑えられることがあります。例えば東京電力のスタンダードSを契約していて、電気使用量が400kWhであった場合の電力量料金は10,205.4円ですが、プレミアムSだと400kWhまでは定額料金なので9,879.63円で済みます。
毎月最低限かかる費用が高額かどうかでなく、最終的にかかる料金で判断しましょう。
■新電力会社を選ぶと電気需要の増加に伴い、電気代が高騰する可能性
電気代が安いことを売りにしている新電力会社は多いですが、場合によってはかなり高額になることもありますので注意して選びましょう。とくに市場連動型の電気料金を導入している場合には、冬場に電気代が高騰する時期などに電力の卸売価格が高騰してしまいます。
■エリアによって選べる電力会社が異なる
新電力会社の中には、地域限定で運営している場合もあります。例えば奈良電力は関西電力エリアのみが対象で、他の地域では利用できません。エリア限定で運営している電力会社もありますので、対象地域を確認して検討してください。
電気代を安くするために工夫できること
少しでも電気代を抑えるために、工夫できることは多いです。一番のポイントは、現在の状況に合う料金プランを選ぶこと。そこで、電気料金プランを選ぶ際に気をつけたいことを紹介します。
■普段の電気使用量に合わせたプランに変更する
普段の電気使用量が極端に少ない場合や多い場合には、それぞれに合わせた料金プランに変更する方が、電気代を抑えられます。
例えば空き家など普段使わない場合には基本料金0円のプランにする、反対に電気使用量が多い場合には一定量以内なら定額制の料金プランを選ぶなど。使用量に合わせて、適した料金プランを選びましょう。
■電気使用量が多い時間帯によって電気代が安くなるプランも
電気代の料金プランの中には、時間帯によって料金が変動するものもあります。例えば東京電力の「夜トク8」を選ぶと、午前7時~午後11時は32.74円/kWhですが、午後11時~翌午前7時は21.16円/kWh。一人暮らしなど日中不在ならメリットが大きいプランとなっています。
自分の生活する時間帯に合わせて、適切なプランを選びましょう。
■オール電化向けの電気プラン
オール電化住宅に住んでいて夜間蓄熱式機器を使っている場合に、適した料金プランがある電力会社も多いです。例えば東京電力のスマートライフSの場合、基本料金は286.00円と他のプランと変わりませんが、電力量料金は午前6時~翌午前1時は25.80円/kWh、午前1時~午前6時は17.78円です。
他のプランと比べると割安ですので、オール電化住宅に住むなら検討してみてください。
■ガスや電話代と一緒に使うとお得な場合も
電力会社のプランには、他の公共料金とまとめて申し込むことで割安になる場合がありますので活用しましょう。例えば東京電力のガスセット割なら、年間約1,200円割引です。他にも電気代と合わせるとお得なプランがあるなど、割引内容は電力会社によって異なります。
地域によって内容に違いもありますので、電気を使いたい地域ではどうなのか、確認してみてください。
■集めているポイントがお得な事業者を選ぶ
集めているポイントがある人なら、ポイントが貯まりやすくなる電力会社を選ぶのもおすすめです。
例えば楽天でんきに申し込むと、楽天市場の買い物がポイント0.5倍上がります。買い物をよくする人ならポイント重視で選ぶとメリットが大きい場合もありますので、ポイントを集めている人は検討してみてください。
電気料金の算定方式電気料金決定の三原則とは
電気料金の算定は、「電気料金の三原則」に基づいて決められています。電気料金の三原則は、「原価主義の原則」「公平報酬の原則」「お客様に対する公平の原則」の3種類です。
■1. 原価主義の原則
原価主義の原則とは、電気料金は能率的な経営のもとで適正な原価に適正な利潤を加えたものでなければならないという原則です。総原価は営業費に事業報酬を加えて、控除収益を除いたもので、電気料金の収入と同じ数値となります。
営業費に含まれるものは下記の通りです。
- 燃料費
- 修繕費
- 購入電力量
- 減価償却費
- 人件費など
原価より低い価格で販売するなど、無理な値下げはできないことになっています。
■2. 公平報酬の原則
公平報酬の原則とは、設備投資など資金調達コストとして、事業の報酬は公正なものでなければならないということです。報酬という名前になってはいますが、電力会社が設備を建設・維持するための資金調達に必要となる、支払利息や配当などのことを意味しています。
つまり過剰な利息を支払ったり、配当を出し過ぎたりすることはできないということです。
■3. お客様に対する公平の原則
お客様に対する公平の原則とは、電気事業という公益性のある事業だからこそ、お客様に対する料金は公平でなければならないということです。
特定の顧客を優遇したり、割引したりすることはできません。電気の使用者はすべて公平に扱い、公表された料金プランのもと計算された電気代を支払ってもらう必要があります。
電気代の基本料金が違うと電気料金の単価も異なる! 使い方に合うプランを選ぼう
電気代の基本料金は、電力会社によって大きく異なります。また、同じ電力会社の中でもさまざまな基本料金があり、使用量や使用時間帯などによって追加で必要な電力量料金も異なり、電気代の差につながるでしょう。
電気代の基本料金は、契約アンペアに応じて基本料金が異なるアンペア制、一定の電力量料金が含まれた最低料金制、定額制の3種類です。最低料金制の中には、基本料金が0円のプランもあります。
電気代は基本的に「基本料金」「電力量料金」「燃料費調整額」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」で構成されており、詳細は電気代の明細などに記載されています。複数の電気代を比較検討するときにとくに注意したいのが基本料金と電力料料金です。電力不足時には電力量料金や燃料費調整額が高騰することもありますので、複数の電気代を比べるときには、参考にするといいでしょう。
参照 :
(※1)TEPCO「従量電灯B」
(※2)関西電力「従量電灯A」
(※3)資源エネルギー庁「固定価格買取制度」