激動の2020年は、家電業界でもいろんな動きがありました。ひとつ特徴的だったのは、コードレススティック掃除機の新作モデルが多数登場したこと。国産メーカーはもちろん、海外メーカーからも新モデルが発売され、2021年になっても盛りは続いています。さらにコロナ禍によるステイホームは、家族が自宅で過ごす時間を増やして掃除の頻度も高くなり、ここでもコードレススティック掃除機に注目が集まることに。

家庭向けでは家電メーカーの製品が中心となりますが、そんななかでも一定の人気を集めているのが工具メーカーの掃除機。プロ向けの工具と同じハイパワーバッテリーが使えたり、急速充電に対応したり。高い吸引力を持ちながら、コストパフォーマンスに優れたモデルも多いんです。今回は、プロ向けの電動工具メーカー、HiKOKI(ハイコーキ)のマルチボルトシリーズから、個性の異なる2モデルのコードレススティック掃除機を検証してみます。

  • ハイコーキのコードレススティック掃除機「R36DA」(写真下)、「R36DA(SC)」(写真上)

ハイコーキは2017年まで、日立工機という日立グループの工具メーカーとして多彩なプロ向け電動工具を展開していました。2017年に日立グループから離れ、2018年から社名を工機ホールディングスに変更。電動工具などはHiKOKIブランドで販売しています。今回取り上げるのは、ハイコーキが2020年10月に発表した新開発のコードレススティック掃除機です。

ひとつは徹底して吸引力を重視した「R36DA」。高回転ブラシレスモーターを搭載し、吸引仕事率155W(強モード)のハイパワーでダストケースにたっぷりとゴミを集められます。単体の価格(以下すべて税別)は18,100円、バッテリーと急速充電器のセットパッケージは46,800円です。バッテリーと急速充電器はHiKOKIブランドの工具と互換性があるので、掃除機単体でもラインナップしてるわけですね。

  • ハイパワーモーターと濾布(ろふ)製フィルターを採用する「R36DA」

もうひとつは2段サイクロンと高性能(HEPA)フィルターを搭載する「R36DA(SC)」です。1段階目の大型サイクロンが大きなゴミを分離し、続いて2段目の小型サイクロンが小さなゴミを分離。最後にHEPAフィルターで残った微粒子をキャッチする仕組み。フィルターが目詰まりしにくいため、吸引力が持続できるようになっています。単体は21,100円、バッテリーと急速充電器付きで49,800円です。

  • 2段サイクロン方式の「R36DA(SC)」

玄関やガレージの掃除にも向くハイパワー「R36DA」

R36DAは毎分73,000回転の高回転ブラシレスモーターを備え、大きなゴミもしっかり吸引するパワーが特徴。砂利などの重たいゴミも吸引できます。本体サイズは幅112×高さ169×長さ476mm(延長管・床用ノズル取り付け時は1,003mm)。重さは1.6kg(バッテリー含む)です。

ダストケース内には濾布(ろふ)製のハイクリーンフィルターを配置。ゴミとともに吸い込んだ空気は、ここを通って排気されます。吸い込んだゴミはダストケース内に直接たまり、紙パックなどは使いません。R36DAは強力モーターでゴミの集じん性能が高い一方、フィルターの目詰まりには気を配る必要があります。

  • フィルターは水洗い対応。汚れがひどくなったら追加で購入(1枚540円)

ダストケースの内側には、ハイクリーンフィルター表面に付着したゴミを落とす除じんブレードがあります。ゴミを捨てるときに、ダストケースを左右に2~3回まわすことで、フィルター表面に付いたゴミをダストケース内に落とせます。

  • ダストケース内側の除じんブレード

実際に使ってみると、ゴミ取り性能には非常に高いものがありました。小さなゴミを想定して床にまいた重曹もしっかり吸引。砂利のような重たいゴミも、問題なく吸引できました。ただ、細かいゴミはフィルターに詰まりやすいようなので、リビングや寝室といった宅内のメイン掃除機としては向かないかもしれません。玄関やベランダなど、比較的大きなゴミが発生する場所で実力を発揮してくれるでしょう。

微細なゴミを分離して集塵できる「R36DA(SC)」

続いて、2段サイクロンを備えた「R36DA(SC)」です。本体サイズは幅112×高さ180×長さ519mm(延長管・床用ノズル取り付け時は1,017mm)、重さは1.8kg(バッテリー含む)。

結論からいうと、R36DA(SC)は微細なゴミの吸引に向いています。2段階のサイクロン部分でゴミを分離するため、HEPAフィルターが詰まりにくいのがポイント。日常的にフィルターのメンテナンスをする必要がないのもうれしいところです。

  • サイクロン部とダストケース、HEPAフィルター

また、本体内にサイクロン構造を搭載しているため、ハンディ状態でもサイクロン方式の掃除機として利用できます。

  • 本体にすきま用ノズルを取り付けてハンディ掃除機として使えます

実際に掃除すると、ゴミ捨ての部分で上浮きのR36DAと違いを感じました。R36DAでは、ハイクリーンフィルターの表面に重曹の粉が付着して少し詰まっていましたが、R36DA(SC)はサイクロン部分が重曹を分離し、フィルターにはほとんど付着していません。このため、微細なゴミを吸っても吸引力が低下しにくいのです。

R36DA(SC)はもともと、住宅の建築工事などで出る細かな木くずなどが目詰まりせず使えるように開発されたモデル。このため、一般家庭の室内で出る微細なホコリやゴミの吸引に向くというわけです。

電動工具と共用できるハイパワーバッテリー

続いて、両モデルに共通している部分を紹介しましょう。ひとつは、延長管・床用ノズル、すきまノズルなどの付属品です。床用ノズルは、一般的な掃除機のようなローラーブラシは搭載しておらず、モーターが生み出す吸引力でゴミを吸い込むだけのシンプルな構造。

  • 床用ノズルの底面。ブラシローラーなどは搭載していません

もうひとつはバッテリー。ハイコーキ独自のリチウムイオン電池「マルチボルト蓄電池」を採用しており、18Vと36Vの互換性を持つ点が特徴です。18Vの電動工具と36Vの電動工具、どちらでも使えます。対応した電動工具にバッテリーを取り付けると、自動的に正しい電圧で動作する仕組みです。

R36DAとR36DA(SC)に付属するバッテリー「BSL36A18」は、インパクトドライバー、グラインダー、ジグソーといったHiKOKIの電動工具(119モデル)でも使えます。その逆もしかり。複数の電動工具とバッテリーを使い回せるのは、電動工具メーカーのコードレススティック掃除機らしい魅力です。

  • 付属のマルチボルトバッテリー。様々なHiKOKIの工具で使用可能

  • 付属の充電器。USB端子も搭載しており、スマホなどを充電できます

R36DAとR36DA(SC)のバッテリー駆動時間は共通。強モードで約15分、標準モードで約30分、弱モードで約60分と十分な長さ。家の中を一通り掃除できるでしょう。

すごいのは充電の速さ。バッテリーを専用の充電器に取り付けると、約19分で実用充電が完了、約25分で満充電となります。つまり、バッテリーを2つ用意しておくと、標準モードで掃除していれば装着バッテリーが切れる前に予備バッテリーの充電が完了するため、充電待ちの状態がないということ。家中を一気に掃除することが多い人や、時間をかけて丹念に掃除することが多い人は、ぜひバッテリーを2つ持っておくとよいでしょう。

なお、バッテリーの充電中はファンが回り、充電器からそれなりの音がします。充電器にバッテリーをセットしたままにするのではなく、急速充電のスピードを生かして、掃除機をかけるちょっと前に充電する使い方がよいでしょう。

注意点がいくつかあるものの、魅力的なコードレススティック掃除機

R36DAとR36DA(SC)の掃除性能をチェックしてみました。フローリングの床に重曹や砂、細かい砂利などをまいて掃除してみたところ、十分に実用的な吸引性能です。

R36DAは強力な吸引力で、重たくて大きめのゴミもしっかり吸引していきます。ゴミによってはフィルターが汚れていくのが気になりますが、掃除機は汚れるもの。これは仕方ないでしょう。

一方のR36DA(SC)も、テストした範囲では吸引力の差はわずか。砂利もそれなりに吸い取れました。繰り返しになりますが、サイクロン構造がゴミを分離してくれるため、メンテナンスの手間がかからないのは使い勝手に優れるところです。

  • 重曹、土、砂利などを用意して、R36DAとR36DA(SC)で掃除

  • 掃除した跡。ゴミがなくなっている左側がR36DA、右側がR36DA(SC)です。砂と重曹はほとんど差がありません。砂利はわずかにR36DAのほうが取り漏らしが少ない結果でした

ただし、いくつかの注意点があります。ひとつは、販売している店舗が少ないこと。ホームセンターや工務店などが中心となり、家電量販店では取り扱いがないようです。また、オンラインストアも限定的。原稿執筆時点では、AmazonにはR36DAのバッテリーと充電器が付属しないモデルのみありました。

もうひとつは、バッテリーと組み合わせられるのがプロ向けの電動工具だということ。HiKOKIは、プロ用工具、DIY工具、園芸工具という3つのラインを展開していますが、R36DAとR36DA(SC)はプロ用工具のラインナップとなっており、DIY工具のドリルドライバーなどとはバッテリーの互換性はありません。

本格的な電動工具を使いたいと考えている場合には、R36DAやR36DA(SC)はとても魅力的です。充電器やバッテリーが1つあれば、工具本体だけ買えばいいので、コストパフォーマンスがよくなります。たとえば、R36DAはバッテリー充電器付きで実勢価格が33,800円ですが、本体のみなら約20,000円。複数の工具をそろえていくほど、お得になります。

屋内を掃除するなら微細なゴミに強い、サイクロン方式のR36DA(SC)がおすすめ。玄関やベランダ、ガレージなど、土足の空間を掃除することが多いなら(砂や砂利など、重たく大きなゴミを吸う機会があるなら)、R36DAに注目してみてください。