カシオ計算機は2月18日、オンライン学習ツール「ClassPad.net」の機能拡張とリニューアルを発表しました。高校の6教科(英語・国語・数学・地歴・公民・理科)に対応したデジタルノートとコンテンツが融合した学習サービスで、電子辞書EX-wordのオンライン版と授業支援機能も利用可能。料金は、生徒1人あたり(高校在学の3年間で)税込13,000円となっています。
開発の背景「教育ICT化が加速」
これまでもカシオは、数学ツールとして関数電卓を、語学ツールとして電子辞書を国内外に展開してきました。いずれも販売台数でトップクラスを誇り、その理由について「教育現場の声を聞いて、ニーズをすぐ製品に反映する体制・ノウハウがあるため」(カシオ計算機 太田伸司氏)と説明します。
新しい学習サービスのClassPad.netには、「辞書ではない新しい教育ツールを作るんだ、という開発スタッフの強い思いを込めた」と太田氏。開発を後押ししたのは、昨今の教育分野におけるICT化の流れでした。文部科学省が推進するGIGAスクール構想も、新型コロナウイルス感染症の拡大が影響し、教育現場ではその取り組みが急加速中。例えば高校では、25の都府県が1人1台の端末整備を予定しており、そのうち11県では2021年3月末までに配備を完了する見込みです(日本教育新聞による)。
一方で、「端末の導入だけで手一杯」「アプリのインストールまで手が回らない」という学校も少なくないそう。どの端末を導入したかによって(WindowsパソコンやChromebookなど)、利用できるアプリが異なるのも事実です。その点において、Webサービスとして開発されたClassPad.netは、「PC、スマートフォン、タブレット、どの環境からもアクセスできる」「アプリのインストールが不要」といったメリットがあります。
どんな利用シーンを想定?
ClassPad.netは、生徒および教員がWebブラウザからアクセスし、学校IDとパスワードを入力して利用を開始。メインサービスは「デジタルノート機能」で、利用者は真っ白なキャンパスに、テキストふせん、手書きメモ、画像、Webページのリンク、YouTube動画などを自由に貼り付けていけます。電子辞書、数学ツールなどもシームレスに活用できる仕様となっており、このあたりはカシオ計算機の資産とノウハウをうまく活用しています。
「EX-wordふせん」では、「ジーニアス英和・和英辞典」「明鏡国語辞典」をはじめとする高校6教科に対応した辞書コンテンツが利用可能です(2022年版では22コンテンツ。以降も拡大予定)。調べた単語の意味を、付箋としてデジタルノートに貼り付けておくような使い方を想定しています。
そして電卓開発のノウハウと技術を生かしたオリジナルツールが「数学ツールふせん」です。高度な関数計算、グラフや図形の描画、統計計算など、豊富な機能を備えています。数式を入力するだけで瞬時にグラフが描画されるなど、使い方も簡単。教員にとっては板書の時間を削減でき、生徒にとっては(図形やグラフが動くことで)理解の促進・定着を後押ししてくれます。
このほか「授業支援」として、先生と生徒の間で課題・答案を送受信、生徒の答案を一覧表示(それを授業中に投影して共有)、生徒の答案にメッセージを書き込む、といった機能も提供しています。
なお「EX-wordモード」として、辞書機能だけを単体で起動することも可能。電車の中で「スマホでちょっとした調べものをしたい」といったときにも便利に利用できそうです。教育出版社(7社)と連携しているので、確かな情報にすばやくアクセスできるのも安心のポイントです。
ClassPad.netは、2021年4月に(一部の機能を試せる)ベータ版を提供開始。2021年9月にVer1.0の提供を開始する見込み。2021年3月13日には、学校と自治体関係者を対象にオンライン説明会を実施する予定です。
オンライン発表会の質疑応答としてはまず、利用にはオンライン環境が必須で、オフラインの利用には対応していないとのこと。購入の形態に関しては、学校で一括して購入するほか、個人でも購入できるそうです。問題集の追加は「今後どのように使われるか見ていきたい。学習のお役に立てるような、様々な種類のコンテンツを検討していきます」とのこと。このほか事業目標について、太田氏は「初年度で売上高(目標額)約10億円、導入校数は200校を目指していきます」としました。