ビジネスにハプニングはつきもの。当初の計画通りに物事が進行する方が、むしろ少ない――なんてこともあります。
そんなときに知っておきたいのが「リスクヘッジ」の考え方。元々は金融用語として用いられていたこの考え方ですが、昨今はより汎用的にさまざまなシーンで用いられるようになっています。
本記事では、「リスクヘッジ」という言葉の意味や考え方、使い方などについて紹介します。言葉の意味を理解し、ビジネスシーンで活用しましょう。
リスクヘッジとは
「リスクヘッジ」とは、今自分が行っていることに対するリスクを予測すると同時に、そのリスクが実際に発生したときに備えて対応できる体制を整えておくことを表す言葉です。
元々は金融用語
元々は金融用語で、「1つの銘柄が下落しても、他の銘柄でカバーできるように投資する方法」を表す言葉でしたが、今では金融以外の分野でも広く使われるようになりました。
ヘッジ(hedge)の意味
「ヘッジ(hedge)」は、「防止策」という意味を持つ英単語です。なお、金融用語としては「現物株をもっていながら、将来の値下がりを見越して信用取引で売っておくこと」という意味で使われます。
英語では「hedge」だけで、日本語でいう「リスクヘッジ」と同じ内容を表現できるため、日本でも単に「ヘッジ」と呼ばれることがあります。
また、「hedge」は、「つなぎ売買」や「つなぎ取り引き」という日本語に訳されることもありますので、併せて覚えておきましょう。
言葉の由来
「リスクヘッジ」は、「risk」と「hedge」という英語に由来する言葉です。
「risk」は「危険性」という意味の単語で、「hedge」は先述の通り、投資関連のリスクヘッジに関する言葉です。また、「hedge」には「生け垣」という意味もあり、この「生け垣」から派生して「防衛策」という意味でも使われるようになりました。
上記のことから、「risk hedge」は「危険性に備える防衛策」の意味になったとされています。
リスクヘッジと類似した言葉との相違点
ビジネス用語の中には、「リスクヘッジ」のように、「リスク」という言葉が使われている用語がいくつかあります。
ここでは、いくつかある用語の中から「リスクテイク」と「リスクマネジメント」という言葉をピックアップし、それぞれの意味と「リスクヘッジ」との使い方の違いを紹介します。
それぞれの言葉の正しい意味と適切な使い方を覚え、自信を持ってビジネスシーンで使えるようにしておきましょう。
リスクテイクとの違い
「リスクテイク」は、英語では「risk taking」と言い、「危険を承知で立ち向かうこと」という意味で使われます。
また、金融用語としては、「ハイリスク・ハイリターン」の金融商品に手を出すことを表します。
大きな見返りを得るためには、危険を承知で立ち向かわなければならない状況で使われる言葉のため、危険に対してあらかじめ備える「リスクヘッジ」とは対義語と言える関係です。
リスクマネジメントとの違い
「リスクマネジメント」は、英語では「risk management」と言い、日本語では「リスク管理」「危機管理」と訳されます。
発生しうるリスク(危険性)を予測し、費用・リスクとも影響を最小にするための対応策を検討・実施する管理手法を指します。
このことから、「リスクヘッジ」は「リスクマネジメント」で予測されるリスクへの対応策という位置づけになります。
リスクヘッジの使い方例文
「リスクヘッジ」の意味を把握できたら、次は実践です。
ビジネスシーンで自信を持って使いこなせるよう、例文を参考に「リスクヘッジ」の使い方を覚えましょう。
リスクヘッジが甘い
「リスクヘッジが甘い」は、リスク対策が不十分で、リスクが発生したときにダメージを受けるだろうということを表現しています。
<例文>
- リスクヘッジが甘いので、ほかの対策も考えてみよう
- リスクヘッジが甘いと、いざというときに痛手を負うだろう
リスクヘッジをする
「リスクヘッジをする」は、リスク対応をするときに使います。
<例文>
- 投資では、リスクヘッジをすることで大損を免れることができる
- 新しいことに取り組むときは、リスクヘッジをすることを慣習化しておこう
リスクヘッジが不十分
「リスクヘッジが不十分」はリスク対策が十分でなく、リスク発生時にダメージを受ける可能性があるときに使います。前出の「リスクヘッジが甘い」と同じように使えます。
<例文>
- あの件に関してはリスクヘッジが不十分だったと反省している
リスクヘッジを図る
「リスクヘッジを図る」では、リスク対応策を練ることを表現しています。
<例文>
- リスクヘッジを図ることで、リスクにおびえずに遂行できる
- 提案は受け入れられたが、あらかじめリスクヘッジを図ることを求められた
ビジネスシーンにおけるリスクヘッジの使用例
ここからは、ビジネスシーンにおける「リスクヘッジ」の使い方を見て行きましょう。
状況や対象を的確に把握できていれば、間違った使い方をしてしまうリスクを避けられますので、正しい使い方をマスターしましょう。
アクシデントへの備えを示す場合
「リスクヘッジ」は、「リスク対応策」という意味から、起こり得るアクシデントを予測し、対策するときに使われます。
また、「危険」という意味の「リスク」だけでなく、「突発的事項」である「アクシデント」に備える場合に「リスクヘッジ」を使っても正しい表現になります。
例を挙げると、「天候不順や交通渋滞などで会議に集合できない方がいる」というアクシデントを予想して、あらかじめ電話会議やビデオ会議も用意しておくのも「リスクヘッジ」と表現できます。
危険予測・不安材料・懸念事項を示す場合
本来「リスクヘッジ」は、リスク対策の意味で使われますが、ビジネスシーンでは対策以前のリスク予測や不安材料、懸念事項そのものを表現するために使われることもあります。
「本件ではリスクヘッジとしてどのようなものが挙げられますか」と聞かれたとき、「リスク対策」について答えても間違いではありませんが、リスク自体が明確になっていない場合は「どのようなリスクを予測しているのか」を尋ねられているのだと理解しましょう。
リスクヘッジ能力を高めるポイント
これまで、言葉としての「リスクヘッジ」の使い方を紹介してきましたが、ビジネスシーンなどでリスクヘッジできる能力はどのように養えばよいのでしょうか。
ビジネスの現場でリスクヘッジできるようになるためには、いくつか心がけておきたいポイントがあります。しっかりと把握して実務に役立てましょう。
多角的に考えること
リスクヘッジ能力を高めるために、日頃から物事を多角的に考えるように心がけましょう。
物事を1つの視点からしか考えられない癖がついていると、リスクの予測が難しくなり、対応策も決まりきった案しか浮かばなくなります。
その結果、対策に漏れがあっても気づきにくくなってしまいます。
しかし、多角的に考える力があれば、今まで発生していないリスクを予測することも、新たな対応策を発案することもできるようになります。
論理的な思考を行うこと
リスクヘッジを図るには、論理的思考が不可欠です。
リスク原因と発生しうる結果の因果関係を明確にし、予想される過程も考慮して対策を考えることで、よりよいリスクヘッジにつながります。
論理的思考能力を身につけるためには、日頃から物事の因果関係を考えることが大切です。
さらに、発生した原因について順を追って論理的に考える練習まで発展させることでリスクヘッジの能力が高められるでしょう。
自分に合った方法で落とし込むこと
リスクヘッジに必要となる能力を養う具体的な方法は、人それぞれ微妙に異なります。ここで紹介しているポイントを踏まえ、自分が一番実践しやすい方法を探し出しましょう。
たとえば論理的思考を養う以前に、原因と結果の因果関係を考えるところから始める方は、マインドマップを取り入れてみたり、常に関係図を書くようにしたりすることがおすすめです。
他にも、ニュースで取り上げられるリスクヘッジについて自分なりに考え、ビジネスリーダーのリスクヘッジと答え合わせをしてみるのも良いでしょう。
いろいろな方の意見を聞いてみること
多角的な考え方が身についていない場合は、自分の考え方だけでなく複数の方の考え方に耳を傾けることで、物事を多角的に見られるようになります。
ただし、他人の考えを聞いても、それを受け入れられなければ多角的な見方にはつながりません。
「この方はどうしてこう考えたのだろう」と考え、自分の見方とは違う角度で物事を眺められるようになれば、自然にリスクヘッジの能力も高まるでしょう。
リスクヘッジの英語表現
「リスクヘッジ」は英語の「risk hedge」に由来する言葉であるため、そのまま用いられます。また、「hedge」を動詞として用い、「hedge the risk」と表現するのもよいでしょう。
リスクヘッジ能力を身につけ、業務に活かそう
本記事で紹介した「リスクヘッジ」は、元々は金融関係だけで使われていた言葉でしたが、今ではビジネスシーンのみならず、日常生活の中でも使われています。
そのため、正しい意味と使い方を覚え、言葉としてビジネスシーンで活用できるようにしておくことが重要です。
また、言葉としての活用だけでなく、実務でリスクヘッジを行えるよう、必要となる能力や技術も身につけておきましょう。