ソフトバンクは2月18日、データ容量20GBで月額2,480円の新ブランド「LINEMO(ラインモ)」を発表。ブランドを統括する寺尾洋幸常務執行役員が報道陣のインタビューに応じ、現時点の詳細を語りました。
LINEMO向けの端末は?
LINEMOは、国内最大のコミニュケーションサービスであるLINEのブランドを冠したモバイルサービスで、「SoftBank」「Y!mobile」に続く同社の第3のブランドとして位置づけられています。
特徴の1つがメインブランドのSoftBankと「同一ネットワーク、同一品質」という点。昼間の混雑時にもメインブランドと同等の品質で通信できるなど、MVNOに対して有利です。寺尾常務は「ネットワークプライオリティを含めて同一」と話しており、混雑時だからLINEMOだけ遅くなる、ということはなさそうです。
Y!mobile向けには、同ブランド初の5G対応端末としてiPhone 12とiPhone 12 miniが2月26日から発売されることも明らかにされましたが、LINEMO向けには現時点で端末がありません。
これについては「一生懸命検証している」と寺尾常務。基本的には「Y!mobileのサービスが使えるもので準備している」としており、3月上旬には検証済みの端末が発表される見込みです。
eSIMを重視していることから、iPhone 12シリーズやPixelシリーズといったeSIM対応端末の取り扱いには期待したいところ。ただ、「LINEMO専用端末」という意味では「何も考えていない」(寺尾常務)とのことでした。
MVNOの「LINEモバイル」では、ほとんどがSIMのみの契約だったそうで、オンライン専用ブランドで端末を用意すべきかは検討課題としています。「割賦販売のように複雑になってきていることを考えると、まずはシンプルがよいのではないか」(寺尾常務)との認識です。
なお、ソフトバンクのSIMには、iPhone向けのSIMがそのままではAndroid端末で使えないといった問題があります。発表会で寺尾常務は、「LINEMOのSIMはiOSでもAndroidでも使えるようにする。メインブランドのSIMに課題があることは認識していて、解決する方向で準備を進めている。技術的な問題を洗い出して、SIMを同一化する方向で準備している」と話しています。
料金システムなどはとにかくわかりやすさを重視
LINEMOでは、当初の発表とは異なり5分間の音声定額が省かれてオプションになりました。これはKDDIが発表したオンライン専用ブランドのpovoと同じ仕組みです。povoでは、「トッピング」として複数のオプションを自由に組み合わせられる点を特徴としています。
こうした仕組みについて寺尾常務は、「アラカルト(で選べる仕組み)は悩んでいる。色んな料金システム、ネットワークシステムがあるが、“そのときだけ使える”というのを分かりやすく伝えることができるか悩んでいる。ある程度パッケージ化しないとユーザーにとって理解が難しくなるのでは。その辺はおもしろいと思ったり必要だと思ったりしたら投入する」と話し、シンプルで簡単に利用できる点を重視しています。
NTTドコモの同種プランのahamoは、メインプランの家族割や固定回線セット割の回線としてカウントする設計になっています。それに対してLINEMOは対象にならず、そうした複数回線割引やセット割はありません。
その点について寺尾常務は、「社内でも大きな議論だった、SoftBankとブランドをまたがることは技術的にはできるが、ユーザーにどれだけ分かりやすいか。今回はブランドごとにセグメンテーションを分けているので、その中で選んでもらったほうが分かりやすいのではないか。オンラインで重要なのは分かりやすさ、シンプルさだと思うので、最初の段階では対応しない」と考えを示しました。
端末紛失時用のオフラインサポートも視野に
オンライン専用ブランドでは、新規契約やサポートなどをオンラインで対応するのが基本となります。特にLINEMOではそこにLINEを活用する点が特徴です。寺尾常務は発表会のなかで「最初の段階では店舗や電話のサポートは提供しない」とコメントし、今後のサポートに含みを持たせました。その点について問われた寺尾常務は、「サポートで(店舗・電話の)オフラインがゼロなのが本当にいいのか迷っている」と話します。
特に端末紛失などの緊急時に、オンラインサポートのみというのがユーザーの立場にとって本当にいいことなのか。こうした点について「議論が必要」というのが認識です。LINEでのサポートの場合、LINEを使える端末を紛失したらサポートが受けられなくなってしまうわけで、「何らかのサポートの仕組みは用意しなければならない」と寺尾常務。現時点では「オンライン」ですが、緊急時の対応を検討しているそうです。
また、LINEMOでは、LINEのトーク、音声・ビデオ通話をカウントしない「LINEギガフリー」を提供。さらにLINEクリエーターズスタンプの使い放題プランを無料にするサービスも用意します。今後のギガフリーの展開に関しては、「ZホールディングスとLINEの統合でサービスの見直しも行われると思う」(寺尾常務)ということで、現時点では統合の結果を見て判断する意向です。
LINEMOは、MVNOのLINEモバイルがベースとなっていますが、現在のLINEモバイルユーザーが強制的に移行されるわけではありません。移行施策は「現在検討中」とのことですが、3月末の新規受付停止後とも既存ユーザーはそのままサービスを利用でき、「速度や品質の低下は絶対にないように指示している」(寺尾常務)そうです。「これまでLINEモバイルを支えてくれたユーザーが我々のファンでい続けてもらわなければならない」との考えで、当面は従来のMVNOサービスを維持する構えです。
新ブランドの創設には、政府による値下げ圧力が背景にあります。ただ、もともと寺尾常務はウィルコム、Y!mobileを経験し、「通信を安くする側にいた」人物。急激な変化に「久々に死ぬかと思った」と苦笑いする寺尾常務ですが、「あのとき、お客さまと向き合えた」と振り返ります。
SIMロックや乗換時の手数料などの障壁といった各種の問題で、「反省しなければいけないことも多かった」との認識を示し、「100点満点ではないかもしれないが料金は下げられたし、一人ひとりのお客さまに何らかの通信を使ってもらえる環境ができたのではないか」と話します。
LINEMOは使いやすさとシンプルさを重視しつつ、UIやUXは試行錯誤して進める考えの寺尾常務。「UIやUXは進化する」として、サービス提供後もユーザーの声を聞きながら改善していく考えを示しています。