大手企業や金融機関の副業解禁。コロナ時代における新しい働き方。テレワークによる場所の制約を受けない生き方。そんな新時代に注目される、ライターや作家という仕事の最前線を走ってきたのが日本放送作家協会・理事長のさらだたまこ氏です。
さらだ氏は、「人口と同じ、1億2,000冊の本ができていい」と語ります。今回は、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏とさらだ氏が対談を実施。その様子をご紹介します。
放送作家の仕事とは
井上一生氏(以下、井上)――本日はありがとうございます。たまこさんは、作家やライターの育成をしながら著者としても活躍され、日本放送作家協会の理事長も務めていらっしゃいますね。まず、「放送作家」とはどのようなお仕事なのでしょうか。
さらだたまこ氏(以下、さらだ)――放送作家の仕事は、実は多岐に亘ります。テレビやラジオの台本を書く仕事がメインですが、今はYouTubeの台本を書くこともあります。テレビと一言に言っても、ドラマやバラエティもありますし、ワイドショーやフリートークの番組にも台本がありますから、それらを書くことも放送作家のお仕事です。
ニュース番組にはニュース原稿がありますが、ニュース番組のなかに特集コーナーがあるでしょう? そのグルメやコスメなどの特集の台本を書くこともあります。台本は、リサーチしたり取材したりして書いていきます。放送作家が取材に同行することも多いですね。
他にも、番組やコーナーの企画書を書いたり、ロケの前に想定台本を書いたり、取材・撮影してからナレーション台本を書いたりもします。さらに、放送だけじゃなく、仲良くなるとタレントのプロデュースをすることもあります。ディナーショーの台本を書いたり、舞台台本を書いたり、時に商品開発などもします。本当に多岐に亘るので楽しいですよ。
井上――それはすごい。そんなに幅広いことをしているとは知らなかったです。放送作家というと裏方のイメージですが、とても夢がある仕事ですね。
伝説的な放送作家に弟子入り
井上――たまこさんは、どのようにして放送作家としてのキャリアをスタートさせたのでしょうか。
さらだ――伝説的な放送作家として知られる奥山侊伸さんに弟子入りしたのがきっかけですね。奥山さんは青島幸男さんの弟子で、『8時だョ!全員集合』や『クイズダービー』『ザ・ベストテン』『新春かくし芸大会』『ミュージックフェア』『オールナイトフジ、夕『やけニャンニャン』などの有名番組に広く携わっていました。スター放送作家で、放送作家でありながらテレビにも出演していたので、当時のテレビを見ていた人は「表に出る番組ディレクター」と思われていたかもしれませんね。
井上――兄弟子が秋元康さんなのですよね。すんなり弟子入りできたのですか?
さらだ――それがそうもいかず……。知り合いのツテを頼ったのですが、最初は「奥山さんに紹介できる力をつけるまで紹介できない」と断られました。当時はバラエティやお笑いを教える放送作家の学校はなく、シナリオライターの学校にまずは通って、アナウンサーの学校にも通いました。それでラジオ番組に出演するアシスタントになれて、また奥山さんに弟子入りを試みたのですが、当時奥山さんは男性の弟子しか取らなかったんです。しばらくしてから男女問わず取るようになったので、そのときにようやく弟子にしてもらいました。
本を出したことで人生が変わった
井上――たまこさんは、放送作家として活躍しながらもたくさんの本を書いていますね。出版するきっかけはなんだったのでしょうか。
さらだ――著書があると、ステータスを上げることにつながるし、仕事が決まりやすくなります。なので、雑誌ライターの仕事も並行して始めて、出版を目指して早くから動いたのです。来る仕事を何でも受けていると作家としての得意分野が見えにくいのですが、本を出していると「じゃあこのテーマならあの放送作家に」とオファーも明確になります。講演の依頼や、コメンテーターの仕事も来ます。
『とびきり愉快なワインの話(学陽文庫)』という本は、ただのワイン好きということから書き出した本なのですが、やがてワインブームが来て、ワイン講座の講師もしました。また食べることが好きで本を書いたら、食品メーカーから商品開発の仕事が来たり。本を書くとなると、いろいろと調べるので自然と詳しくなるんです。それが本来の放送作家というお仕事にも活きてきます。
私の場合も、本を出したことで人生が変わりました。『パラサイト・シングル(WAVE出版)』という本を出版したときは、NHKや民放の番組にもよく出演させていただきました。『不倫の作法(牧野出版)』は不倫を勧めているわけではありませんが、恋愛のなかに不倫はあるわけで。自分の経験もさらけ出すリスクはありましたが、私は作家だから覚悟を持って本に書きました。なかには「これから社会にでる娘に読ませたい愛の教科書」と褒めてくれた人もいたので、出版して良かったと思います。
最新刊は『親も自分もすり減らない!? シングル介護術(WAVE出版)』。私の両親介護の経験で得た知識をハウツー本的にまとめた内容ですが、仲のいいケアマネさんから「介護のバイブルになる」と太鼓判を押してもらいました。すると、ある地域包括センターの方から依頼があり、認知症の方々が集うカフェ活動から派生したプロジェクトに関わることになりました。一冊の著書からの仕事の広がりを実感しています。
井上――ビジネスパーソンも、自分の本が一冊あるだけで印象が違うでしょうね。
さらだ――そうですね。名刺代わりにもなりますし、ブランディングにもなると思います。それだけ、一冊の本が武器になりますよ。
(次回に続く……)