「笑止千万」という四文字熟語、なんとなく字面から意味が推測できそうですが、正確な意味を説明するとなったら、きちんと説明できるでしょうか?
この記事では笑止千万の正確な意味や由来、使い方や類語表現などを紹介しています。普段あまり使わない四字熟語は、自分ではわかっているつもりでも、思い込みであったり、間違って覚えていたりするケースが少なくありません。
本記事で笑止千万の正確な意味や使い方をマスターし、ビジネスや普段の会話に活かしてみましょう。
笑止千万の意味とは
笑止千万は「しょうしせんばん」と読み、意味は2つに大別できます。
一つは「非常に滑稽な」「ばかばかしい」「おかしい様子」といった、「笑」という漢字にまつわる意味です。そしてもう一つは「とても気の毒な様」という意味です。古い書物などで使われるケースがありますが、ほぼ例外的な意味合いと言えます。
一般的には前者のような、相手をあざ笑うような意味で使用されることがほとんどですが、知識として両方覚えておくとよいでしょう。
笑止千万の由来
多くの場合、四字熟語は漢字二文字の熟語同士を組み合わせたものですが、笑止千万もその一つで、「笑止」と「千万」という二つの熟語から成っています。
「笑止」は漢字の通り、「笑いが止まらない様子」を表しますが、もともとは「勝事(しょうし)」の当て字でした。この「勝事」は「めったに見られないすばらしいこと」を意味しています。
あまりにもすばらしいものを目にすると、笑いがこみ上げてくることがあります。そこから時代を経て、「めったに見られない~」という要素を残しつつ、意味が変化していったと言われています。一方の「千万」は千の万倍で、「とても数が多い」「はなはだしい」と強調する意味を持ちます。
笑止千万は本来の意味から徐々に変化していった言葉と言えるのです。
笑止千万の使い方
笑止千万を普段の会話で使うことはめったにないでしょう。あったとしても、時代劇や物語のセリフで聞いたり使ったりする程度ではないでしょうか。また、笑止千万には相手をあざ笑う意味があるため、他人に向かって使用すると失礼になる場合があります。
ここからは、笑止千万の使い方がわかる例文などを紹介していきます。
馬鹿げた言動に対して使う
馬鹿げた言動に対し笑ったり、あきれたり、あるいは否定したりするときに使用します。笑止千万を形容動詞として使うと表現の幅が広がり、日常会話でも使いやすくなります。
<例文>
「アイドルと結婚して左うちわで暮らそうって、笑止千万だよ」
「あなたから見たら笑止千万な行動かもしれませんが、私は本気です」
「笑止千万な考えだけれど、気持ちはわかる気がするね」
職場のスピーチなどで使う
非常にばかばかしい、滑稽だという意味で使用すると、その意味を強調できます。そのまま使うと相手に失礼な印象を与える笑止千万ですが、否定形を使うことでその意味を打ち消す表現ができます。また、目上の人に使う際には誤解を与えないように注意が必要です。
<例文>
「最初に聞いたときは、失礼ながら笑止千万な計画だと思いましたが、実現できたのは本当にすばらしいことです」
「昨今の出来事は笑止千万だと、嘆かわしく感じております」
笑止千万の類語表現
笑止千万にはいくつかの類語表現があります。聞いたことがある言葉も多いのではないでしょうか。しかしそれぞれ微妙にニュアンスが異なっているため、しっかりと確認が必要です。
それぞれの意味と例文を紹介していきますので、正確な意味を知って、使い分けていきましょう。
笑止の沙汰
「沙汰(さた)」の意味は、命令、司令、便り、知らせ、物事を処理すること、うわさ、裁決・裁判、問題となるような事件などです。「地獄の沙汰も金次第」「警察沙汰」などの表現があります。
「笑止の沙汰」は、とんでもなくばかばかしい出来事や知らせを表し、笑止千万とほぼ同じ意味です。笑止千万は形容詞的に使いますが、笑止の沙汰は出来事そのものを示す使い方になります。
<例文>
「あの警備体制の厳しいビルに忍び込もうとするなんて、笑止の沙汰だ」
「君がマドンナに告白するのかい。笑止の沙汰だよ。いい度胸しているね」
片腹痛い
片腹痛いの読み方は「かたはらいた(い)」です。実力以上のことを行っているのが、滑稽で不愉快に感じる様を表します。
腹の字があることで、お腹が痛くなるほど笑うという意味だと思われることがありますが、ただ面白いという意味ではなく、「苦々しい」や「ばかばかしい」という意味を含んでいますので、注意が必要です。
<例文>
「そんな見え透いたウソでごまかそうとするなんて、片腹痛い」
「その程度の実力で社長になろうって言うなんて、片腹痛いよ」
噴飯物
噴飯物は「ふんぱんもの」と読みます。食べかけの飯を噴き出してしまうほど、おかしくてたまらない様を表しますが、ただ面白いのではなく、ばかばかしいという意味を含んでいます。
噴の字が使われているためか、「腹立たしくて仕方ない」という意味と思われやすいですが、本来は笑止千万と似た意味ですので、注意しましょう。
<例文>
「あのだらしない彼に整理整頓しろと説教されました。噴飯物だ」
「このレベルで偉そうにするなんて、噴飯物ですね」
へそで茶を沸かす
「へそが茶を沸かす」は、ことわざです。腹がよじれるほど、おかしくてたまらない様子、ばかばかしくて仕方のない様子のたとえです。「へそで湯を沸かす」は、間違いなので気をつけましょう。
この言葉も、おかしいばかりではなく、ばかばかしいという意味やあざ笑う意味を含んでいます。
<例文>
「それはありえない話だ。へそで茶を沸かすようだよ」
「1週間で10㎏痩せようなんて、へそで茶を沸かすようなことだ」
笑止千万の英語表現
ここからは、笑止千万の英語表現を紹介していきます。英語でもいくつかの言い方がありますので、それぞれの使い方や例文を学んでいきましょう。
なお、四字熟語を直訳しようと考えると難しくなりますので、「それぞれの意味を英語に訳す」と考えるとよいでしょう。英語を使用する場面で活かしてください。
highly ridiculous
「highly」は「非常に、大いに」、「ridiculous」は「おかしい、ばかばかしい」という意味です。日本語の笑止千万に近しい意味合いである英語と言えます。
<例文>
「His behavior is a highly ridiculous thing.(彼のふるまいは笑止千万です)」
「It is a highly ridiculous thing.(笑止千万だよ)」
absurd
「absurd」は「ばかげた、ばかばかしい、不条理な」という意味です。「highly ridiculous」と違う点は、「absurd」には「不条理」という意味がある点です。
「不条理」とは「筋道が通らない」などを意味する言葉です。つまり「absurd」は、「筋道が通っていなくてばかばかしい」というニュアンスの英単語になります。
<例文>
「It is absurd not to give them the chance.(彼らにチャンスを与えないのは笑止千万だ)」
「This is absurd.(笑止千万だよ)」
笑止千万の意味を理解してシーンに合わせて使ってみよう
笑止千万は、非常におかしい、ばかばかしいなど、対象をあざ笑うニュアンスを持つ四字熟語です。
使い方によっては相手に不快な思いをさせることがありますから、注意が必要です。それよりも、ばかばかしいことやくだらないことを強調する意味で使用すると効果的です。
笑止千万の正しい意味と使い方をマスターして、シーンに合わせて使ってみましょう。