パナソニックは2月17日、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」の戸建住宅向け新モデルを発表しました。第7世代となる2021年度モデルは、セルラー方式のLPWA(Low Power Wide Area)通信機能を搭載。ネットワークにつながるIoT機器になりました。ネットワークから取得した気象情報をもとに、最適な発電を行う機能を搭載します。保守点検作業の効率化も実現しました。発売は4月1日。価格は導入ケースによって異なります。
エネファームとは、都市ガスやLPガスを使って、家庭で電気を作り出す家庭用発電システム。ガスから取り出した水素と空気中の酸素を反応させて発電します。同時に、発電時に発生する熱でお湯を沸かして給湯に利用したり、床暖房などに再利用したりも。発電所から自宅へ送電すると、送電時に電気のロスが発生しますが、エネファームは自宅で発電するので高いエネルギー利用率が特徴です。さらに発電の熱を給湯に活用するため、省エネ製品として注目を集めています。
エネファームは「災害時に強い」のも魅力のひとつ。停電してもガスがあれば発電できます。パナソニックの新エネファームは電気ヒーター給湯機能を搭載しているため、ガスが停まった場合でもお湯を作れます。また、エネファームには給湯用の貯水タンクがあり、もし断水してもいつでも130L(熱源機別置型は100L)の生活用水を確保できるのも大きなメリットです。
新エネファームは停電の発生を予測する
冒頭の通り、今回発表された新モデルは「LPWA(Low Power Wide Area)通信機能」を標準で搭載。従来のエネファームでネットワーク接続するには、家庭のLAN環境を経由する必要がありました。LPWA通信機能ありの新エネファームは、エネファームとパナソニックのサーバーが直接通信します。このため家庭の通信環境を選びません。
新エネファームがネットにつながることで、さまざまなメリットが生まれます。注目は気象情報サイト「ウェザーニューズ」が提供している「1kmメッシュ天気予報」との連携です。たとえば、雷や大雪などで停電の可能性があると予測すると、新エネファームは「停電そなえ発電」を実施。本当に停電しても、専用コンセントから最大500Wの電気を最長8日間、利用できるようになります。停電時に充電されていないという不安を大きく減らせる機能です。
発表会ではウェザーニューズの常務取締役である石橋知博氏も登壇。ウェザーニューズが手がける気象情報の高い予測精度は、独自の「WxTech(ウェザーテック)」によるものと説明しました。気象データや地形データのほか、全国に数多くいるサポーターからの停電報告といった過去データの相関関係を解析し、精度の高い未来の「停電リスク」を予想できるとしました。
天気を予測できることで追加された機能として、「おてんき連動」もあります。新エネファームのほか、太陽光発電を併用しているユーザー向けの機能です。天気予報から「今日は雨なので(太陽光発電ではなく)エネファーム優先で発電する」など、より効率的でお得なタイミングで発電できるように、太陽光発電と新エネファームを運用します。
パナソニックは、エネファームを2009年に発売しました。当初は、省エネ性やCO2排出削減による環境への貢献といった点が大きく取り上げられたものです。今回の発表では、省エネ性や環境に対するメリットに加えて、災害時の備えとしての機能に注目が集まったのが印象的。導入には工事が必要なうえに決して安い製品ではありませんが、災害の多い日本においては、一部のインフラが使えなくなっても生活を維持できるという安心感は大きいもの。新築やリフォームなどの機会に、導入を検討してみるのもよいかもしれません。