■肝臓で行われる「解毒」が間に合わなくなった結果が「二日酔い」

お酒が好きな人ならば高い割合で経験していると思われる二日酔い。「自分流の対策がある」という人もいると思いますが、二日酔いがどのようにして起こるかを正しく知っておくと、さらに有効な対策が立てられるはずです。

体に害を与える物質が、体内に入ってきたり代謝の際に生まれたりしたとき、人間の体はそれを毒性のないものへと変える「解毒機能」を働かせます。そして、解毒の対象となる物質の代表格がアルコールです。

アルコールは人間の体のなかに入ると腸などで吸収され、その後肝臓に運ばれ、最初にアセトアルデヒドという物質に、次に酢酸へと分解されます。そして筋肉などで水と二酸化炭素に分解され、体外に排出されます。

この解毒機能は、たくさんのお酒を飲んだときにフル回転するのですが、それでも解毒が間に合わなくなることがあります。すると、アルコールが分解しきれずに体内に残ってしまったり、アルコール以外に解毒が必要な物質の処理が滞ったりしてしまい、体に悪影響を与える物質が残った状態が生じるのです。これが、「二日酔い」のメカニズムです。

■揚げ物や炒め物はやめて、肝臓への負荷が少ないおつまみをチョイス

こうしたメカニズムを前提に考えると、二日酔いを和らげるには解毒を担う「肝臓の仕事」を減らすことに効果があるとわかります。そのためにはアルコールの量を減らすのが一番の近道なのですが、「おつまみ」のチョイスを変えることも有効です。

管理栄養士としての立場からお酒のおつまみを見ていて気になるのは、高温の植物油で揚げたり炒めたりしたメニューが多いこと。植物油が熱せられて高温になると、酸化といって肝臓で解毒する必要性がある害のある物質が急激につくられます。

つまり、アルコールと一緒に揚げ物や炒め物を食べることは、解毒を要する食材をダブルで摂取していることであり、肝臓にとってかなり負荷の大きい行為なのです。鶏の唐揚げやフライドポテト、炒めたウインナーなどはビールをはじめとしたお酒にあうおつまみの代表格ですが、思いきってこれらをラインナップから消しましょう。

なお、酸化は空気に触れている時間が長くなることでより進むので、調理してから長い時間お皿に置かれたままの揚げ物や炒め物も体によくありません。口にするのは、できるだけ避けたいところです。

同じ理由で、植物油で揚げたのちに包装しているポテトチップスなども、肝臓での解毒に負荷がかかる食品のひとつです。とても手軽ですからつい口にしてしまうことも多いですが、こちらもまた、おつまみのラインナップから消したいですね。

とはいえ、「おつまみに油っ気がないのもさびしい」という人もいるかもしれません。熱して高温になっていなければ油を摂ること自体に問題はありませんから、常温のオイルで食材をあえたりするのはいいと思います。

また、ラードやバターなど動物性の脂肪であれば熱したとしても毒性の物質が発生しないので、肝臓にそれほど負荷はかかりません。揚げ物、炒め物こそNGになりますが、煮込み料理や蒸し料理、中心部まで火を通さないローストビーフなど、お酒とも相性がよく肝臓にもやさしいおつまみは、探せばいくらでも見つかります。

■解毒の王様・グルタチオンを含む食材を使う

もうひとつのアプローチとして、解毒効果を高める物質を含んだ食品でおつまみをつくる方法も紹介しましょう。解毒にはたくさんのビタミンやミネラルが必要になりますが、なによりも知っておきたいのが、「解毒の王様」とも称されるアミノ酸化合物・グルタチオンです。

これは実際に解毒を行う肝臓でも合成されている物質で、アセトアルデヒのようなアルコールの分解時に生じる体に害を与える物質をはじめ、様々な毒の分解を促進してくれる物質です。

レバーなどの肉類などに加え、キウイフルーツやアスパラ、アボカドやブロッコリースプラウトのようなフルーツや野菜にも含まれているので、これらを使ったおつまみは肝臓の解毒を手助けします。濃厚な味わいのアボカドはおつまみに適していますし、ブロッコリースプラウトをカレーパウダーで軽く炒めた一皿などもおすすめ。

カレーパウダーには、クルクミンと呼ばれる肝臓でのグルタチオンの合成を助ける成分が含まれているので、グルタチオンを含むブロッコリースプラウトと組み合わせると、二重の解毒効果が期待できるメニューになるでしょう。

グルタチオンの他にも、二日酔い対策としてよく知られるシジミ汁に含まれているオルニチン、トマトに含まれているリコピンなども解毒効果を補う物質です。二日酔いを抑えるうえで科学的に根拠のある食材なので、上手に活用してください。

■飲酒時に激減するビタミンCの補給も意識しよう

アルコールを肝臓で分解する過程では、体内のビタミンCが大量に消費されます。二日酔いにともなう体の不調には、こうして起きるビタミンCの極端な不足が影響していることもあります。ですから、ビタミンCを補いながらお酒を飲むことは二日酔いを軽減するうえでのポイントとなります。

レモンやグレープフルーツ、シークヮーサー、トマトといったビタミンCを多く含むフルーツや野菜を使ったお酒は、そうした点から体にやさしいお酒です。なお、ビタミンCの補給はお酒を飲んだ翌朝でも効果があるので、二日酔いの症状が出たときには、意識的にビタミンCを含んだものを口にすると少し楽になるかもしれません。ぜひ試してみてください。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/秋山健一郎 写真/櫻井健司