ガソリンスタンドでおなじみの出光興産が超小型電気自動車(EV)の開発・販売に参入する。自動車の販売やEVの開発などを手掛けるタジマモーターコーポレーションと手を組み、2022年にも市販車の生産を開始する予定だ。いったい、どんなクルマを作るのだろうか。
2022年に発売予定! 気になる価格は?
出光がタジマモーターの関連会社であるタジマEVに出資し、商号を出光タジマEVに変更して事業を始める。計画段階だが、車両のボディサイズは全長2,495mm、全幅1,295mm、全高1,765mm、乗車定員は4人(カーゴタイプは1人)の予定。バッテリー容量は10kWh、フル充電(100Vで8時間)での走行可能距離は120キロ前後を想定しているという。最大出力は15kW、最高速度は時速60キロ以下だ。
新型車両は2021年10月の東京モーターショーで発表し、2022年には売り出す計画だ。販売には出光が全国6,400カ所に展開するサービスステーション(SS、いわゆるガソリンスタンド)を活用する方針。カーシェアリングやサブスクリプション、あるいは整備費や電気代を含めたパッケージでの提供も検討していく。気になる価格だが、タジマモーター代表取締役会長で出光タジマEVの代表を務める田嶋伸博さんは「150万円以下」を目指すとしている。
タジマモーターが2019年の東京モーターショーで超小型EVを展示した際、来場者から最も多くの質問を受けたのは価格に関することだったという。その中には、「高速道路を使ったり遠出をしたりしないから、その分の性能を下げてでも価格を下げられないか」という声が多かったそうだ。高価なバッテリーを使用することから価格が高くなりがちなEVだが、出光タジマEVでは安全面を担保しつつ、なるべく低価格の車両を開発していく方針だ。
出光興産とタジマモーターは、超小型EVに年間100万台の潜在需要があると見込んでいる。どうやってこの数字を導き出したのか。出光興産の説明によれば、「子供の送り迎えに自転車や原付バイクを使っている人」(電動アシスト付自転車の販売台数は年間68万台)、「ペーパードライバー」(クルマの大型化などにより運転をあきらめている人、2,700万人)、「乗用車・軽自動車からの乗り換え」、「免許返納に悩む高齢者」(年間60万人程度が免許を返納しているそう)、「営業車両」などをターゲットになりうる母数と考えて、潜在需要を考えたそうだ。
新型車両の試作はタジマモーターのR&D施設で実施する。量産は出光の施設で行うほか、新たな企業との協業も視野に入れる。生産拠点を全国に分散する考えもあるそうだ。出光は素材開発の技術をいかし、新型車両に軽量で耐熱性に優れる高機能プラスチックなどの素材を使用できないか検討していく。使用するバッテリーについては未定だが、今は国内外から取り寄せて性能を検証しているところだそう。EVの使用済みバッテリー(だいたい8割程度の容量が残っているとのこと)をリサイクルして活用することにも関心を示している。