一般にイヤホンは音楽を聴くための製品とされています。その基本的な役割は今もこの先も変わらないと思いますが、一方で世の中にスマホが普及してから、音楽は携帯音楽プレーヤーの代わりにスマホで聴くという人が増えています。
スマホ系メーカーによる、左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンとしては、直近の数年間にアップルの「AirPods」や「AirPods Pro」、グーグルの「Pixel Buds」、サムスンの「Galaxy Buds」、ファーウェイの「FreeBuds」、OPPOの「Enco」、シャオミの「Mi完全ワイヤレスイヤホン」などが続々と登場。しかし価格はピンキリ、性能もさまざまで、どう選べばよいかわからないかたもいるかもしれません。
本企画では、この機会に初めての、または新しい完全ワイヤレスイヤホンを手に入れてみたいと考えている方に向け、スマホメーカーの製品を選ぶ際に気になる疑問を連載形式で解説していきます。
スマホメーカーの完全ワイヤレスイヤホンが続々出てきたワケ
スマートフォンが普及し、スマホの画面が大きくなるにつれて、音楽を聴くだけでなく映画やゲーム、ビデオ通話など、スマホが幅広い用途に使われるようになりました。そんななか、スマホメーカーによる完全ワイヤレスイヤホン製品も増えてきています。
その理由の1つは、テレワークを含むコミュニケーションの需要が増えてきたことが挙げられるでしょう。
今ではマイク付きのワイヤレスイヤホンが、スマホによるコミュニケーションを支えるコンパニオンデバイスとしても重宝されています。街なかで、イヤホンを使いスマホの画面を見ながら話している人を見かけることも増えました。
もう1つは、効率的にワイヤレスイヤホンを製造できるようになってきたことです。クアルコムなど半導体メーカーがBluetoothオーディオ向けに提供するSoC(システムICチップ)の品質が向上したことや、スマホメーカーから依頼を受けてイヤホンを受託生産するメーカー(多くは中国に生産拠点を置く企業)がノウハウを蓄積してきたことなどが、スマホやパソコンのメーカーによるワイヤレスイヤホンの登場を後押ししています。
スマホメーカーとオーディオメーカーのイヤホンは何が違う?
スマホメーカーの完全ワイヤレスイヤホンの中には、代表格であるアップルのiPhoneとAirPodsシリーズのように、スマホと組み合わせるとワンタッチペアリングなど様々な便利機能が使える製品があります。
スマホによる音楽再生やハンズフリー通話の品質が向上する場合もあるので、使い勝手に関係する“便利機能”は、スマホメーカーの完全ワイヤレスイヤホンを選ぶ時の大事な決め手といえます。
オーディオメーカーの場合、多くは完全ワイヤレスイヤホンのサウンドにも強いこだわりを持って作り込んでいます。
音を生むドライバーの種類や筐体の構造など高音質化を目的とした様々な要素に目を向けてつくり込んだイヤホンには、その製品にしか鳴らせない音があります。特に老舗と呼ばれるオーディオメーカーの製品を聴き比べてみると“違い”がよくわかると思います。
誤解のないように説明を加えるならば、スマホメーカーのイヤホンが音質的に劣っているわけではありません。ただ、ワイヤレスイヤホンの弱点と言われている音途切れやノイズの発生を徹底的に抑えたり、音楽やハンズフリー通話の音声をストレスなく楽しめる環境をユーザーに届けるためのノウハウなども、比べると一日の長があるオーディオメーカーの方がまだ多いように筆者は感じています。
完全ワイヤレスイヤホン、どんな価格帯で選べばいい?
価格についてはメーカーの属性に依るところではありません。今ではスマホメーカー・オーディオメーカーの双方に、5,000円近辺の比較的安価なものから、アップルの「AirPods Pro」やゼンハイザーの「MOMENTUM True Wireless 2」のように3万円を超えるハイエンドクラスの製品があります。
完全ワイヤレスイヤホンを使ったことがなく、どういうものかとりあえず試してみるならば「とにかく安いもの」を選ぶ手もあるでしょう。ただ、もし今後も長く愛用できる1台に出会いたいのであれば、音楽をいい音で聴くことも含めて自分が完全ワイヤレスイヤホンに期待する要素を整理、絞り込んでみることをおすすめします。
結果として、あらかじめ検討していた購入予算よりも少し背伸びして、自分の期待にもっと合う製品を選んだ方が納得できる買い物ができるかもしれません。“最終的に高い満足度が得られる”という意味での個人的なオススメは3万円前後の製品です。
次回はスマホと完全ワイヤレスイヤホンによる連携機能のトレンドに迫りたいと思います。