マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話します。今回は、新型コロナウイルスとGDP成長率について語っていただきます。
米国や日本、英国など多くの国で、コロナの新規感染者数は1月中旬以降に減少傾向を鮮明にしています。世界的にみても新規感染者数はようやくピークアウトしつつあるようにみえます。
新規感染者数が減っているのには、以下の要因が考えられます。 - 行動規制やロックダウン(都市封鎖)の効果が出てきた。 - 外出時のマスク着用や手指消毒などのルールが浸透してきた。 - クリスマスや年末年始に増えた外出・外食が落ち着いてきた。 - ワクチン接種の効果が出てきた。
いずれワクチンの普及によって、コロナ禍は終息に向かい、経済活動は正常化していくとみられます。早ければ、今年半ばあたりからそうしたシナリオが現実味を帯びてくるとも期待されます。
ただし、現時点で、新規感染者数の減少は行動制限やロックダウンの効果が大きいように思われます。そして、それらの措置は同時に経済活動への強い下押し圧力ともなっています。
G7各国のGDP(国内総生産)の成長率は昨年前半、とりわけQ2(第2四半期、4-6月)に大きく落ち込みました。経済活動が後退したことを意味します。積極的な金融緩和や財政出動を背景にQ3(7-9月期)に大きく反発したものの、Q4(10-12月期)には再び勢いを失いました。
そして、今年Q1(1-3月期)にはさらにマイナス成長が予想される国が増えています。2期連続でマイナスのGDPが予想され、明確なダブルディップ・リセッション(景気の二番底)となりそうなのは英国ぐらいです。しかし、ドイツも昨年Q4にマイナス成長は回避したものの、ほぼゼロ成長でした。また、フランスやイタリアは昨年Q4がマイナス成長であり、今年Q1もゼロ成長に近い状況が予想されています。
英国や欧州大陸などでも、行動制限やロックダウンを段階的に緩和しようとの動きは出てきました。ただ、まだまだ手探りであり、フル解除にはほど遠い状態です。新規感染者数が再度増加に転じることで再導入される可能性も否定できません。
プラス成長が続くと予想される米国で、GDPの10%近い規模の経済対策が議論されているのは皮肉にみえます。景気回復の基調が崩れていないことは、共和党が大型の対策に反対する論拠の1つになっているようです。もっとも、大型経済対策の成立が期待されるからこそ、プラス成長が見込めるということでしょうが。
英国や米国ではワクチン接種が進んでいます。遅れている欧州やその他の国でもワクチンの普及が進めば、行動制限やロックダウンが緩和・解除されて、景気回復を後押しするでしょう。ただ、まだしばらくは「行動制限やロックダウン強化⇒新規感染者減少⇒行動制限やロックダウン緩和⇒新規感染者増加⇒再び強化」のイタチごっこが続くかもしれません。