最近メディアなどで頻繁に耳にするようになった言葉のひとつに「ファクト」があります。意味は漠然と把握しているけど、正確な使い方が分からない方も多いのではないでしょうか。正しい意味が分からなければ、ビジネスシーンで正しい受け答えができません。
今後ファクトという言葉をビジネスの場面で活かせられるよう、この記事で具体的に解説していきます。
ファクトの意味
ファクトとは、英語で「fact」と綴り、「実際にあったこと、事実」という意味です。理想や噂、作り話ではなく、事実に基づいたものという意味になります。
<使用例>
- 私は推測でも希望でもなく、ファクトを示してほしいと言っているのです
- 批判するのならば、せめて一部の切り取られた情報だけではなくファクトを確かめるべきではないでしょうか?
ビジネスにおけるファクトの意味
ビジネス用語のファクトは、業務上で扱われる事象やデータにおいて、事実に基づいているか確証がとれたものをあらわす意味で使われます。
業務を行っている上で、正しい情報であっても嘘のような数字が出てしまう場合があります。その際に「確かに事実である」ことを強調するために「ファクト」を使うことが多いようです。
ビジネスにおけるファクトを用いた表現と例文
ファクトはさまざまな使い方が可能です。語彙力を増やし会話力を磨くことは、結果としてコミュニケーション力の向上につながります。
ここでは、ビジネスにおけるファクトを用いた表現と例文を解説します。シーンに合わせて活用してみましょう。
ファクトな情報
「ファクトな情報」とは、「確かに事実である情報」という意味になります。
「本当ですか」や「事実ですか」と尋ねると、まるで相手を疑っているのかと誤解されかねません。「ファクトはありますか」と尋ねることで、あくまでも事実確認がしたい、という意図を協調できます。
<使用例>
- あの企業が新規参入を検討しているとの話ですが、ファクトはありますか
- 製造業、不動産業への債権回収リストについては、ファクトな情報のみ採用したい
ファクトに基づいた資料
「ファクトに基づいた資料」とは、「根拠のある資料」といった意味合いです。取引先や上司などから、ファクトに基づいた資料を求められた際は、「事実である根拠」を同時に用意するとよいでしょう。
<使用例>
- マーケティング市場における調査の件だが、ファクトに基づいた資料を求めたい
- その資料は公的な調査結果をもとに作成したため、ファクトに基づいた資料といえます
ファクトに関連するビジネス用語
「ファクト」のみならず、ファクトに関連する用語についても学びましょう。それぞれビジネスシーンに応じて使い分れることが大切です。関連語も使いこなすことで、ボキャブラリーの幅を広げられます。
正しい意味を知って、ビジネスシーンで戸惑うことのないよう対策をしましょう。
ファクトベース思考
「ファクトベース思考」とは、ビジネスにおいて、事実やデータに基づいた思考法のことです。「論理」を司るロジカルシンキングには、ファクトベース思考という存在が欠かせません。筋道立った合理的な思考には、ファクト(事実)が必要不可欠です。
ベースである情報や考え方が「ファクト」であることが、「ファクトベース思考」の根本です。
<使用例>
- 戦略的に企業広告を打つために、このデータは有効である。まさにファクトベース思考にのっとったものだといえる
ファクトチェック
「ファクトチェック」とは、「事実か、確認すること」「文書や発言の中で事実として提示されていることに間違いがないか調べること」です。ビジネスにおいて新たな情報やデータを手にした際は、それらの正確性を調査することが重要です。
<使用例>
- この仮想通貨の流通が解禁されたという情報をファクトチェックしてください
ファクトシート
「ファクトシート」とは、リリースには書ききれない、製品やサービスに関する細かい事実をひとつにまとめたものです。
例えば、開発経緯や開発者のインタビュー、製品やサービスのエビデンス、メカニズムなどです。企業サイトなどにファクトシートが掲載されているものもあります。
<使用例>
- 現地法人からの依頼だ。人材派遣エージェントA社のファクトシートをチェックしてください
- ファクトシートから読み取れる事実を活用し、ブログ記事を作成する
ファクトフルネス
「ファクトフルネス」とはデータや事実に基づいて世界を読み解く習慣のことをいいます。先入観や主観を捨てて、事実を見つめて判断する考え方です。
<使用例>
- ファクトフルネスをもちながら俯瞰する習慣を身に付ける
- プレゼン資料を作成し、顧客を説得する際に大切なのはファクトフルネスである
- 仮説を作って分析し、検証する必要がある。ここではファクトフルネスが欠けてはならない
ファクトブック
「ファクトブック」とは、企業の経営内容や業績、歴史などの情報を事実に基づいてまとめた冊子のことです。主に報道機関向けに発行され、広報などが制作を担当します。
<使用例>
- 事業内容が大幅に変わったため、ファクトブックの修正が必要である
ファクトファインディング
「ファクトファインディング」とは、顧客の事実を掴む・顧客の課題を見つけ出すという意味のマーケティング用語です。マーケティングにおいて顧客の課題を見つけることはとても重要なこと。ファクトファインディングという言葉もよく出てくるので、マーケティング職の人はもちろん、そうでない人も覚えておくといいでしょう。
<使用例>
- 新商品の開発にあたってファクトファインディングが必要だ
ファクトの類語
ここではファクトの類語をいくつか紹介します。似ている言葉でも、使うシーンや文脈によって、相手への伝わり方が変わってきます。意味やニュアンスの違いを正しく理解し、状況に応じて使い分けられるようにしましょう。
事実
事実とは、実際に起こったことや現実に存在する事柄です。
ファクトは事実に基づいた「根拠があるもの」といった意味合いで使われます。事実は「データ、出来事そのもの」を示す意味が強く意味は似ていますが、ニュアンスが多少異なります。
<使用例>
- この歴史認識は事実なのか。そうだとしたらこの小論文の構成にも光が見えてきた
- アルバム制作会社Aは、納期の速さから評判が良いという話は事実なのか
- このURLに記載されているシャツ、キャップ、財布の商品情報が事実かどうか検証を頼む
実正
「じっしょう」と読み、確かなことや偽りや間違いのないこと、またそのさまを表します。
この言葉は、現代ではあまりなじみのない言葉です。明治期の文学や、室町期の狂言など古典芸能などで使用されています。
<使用例>
- いよいよ実正と知れてから手を着けたい
- 実正な方だ
本当
嘘ではない、虚偽ではなくて実際にそうであるという意味合いです。言葉としては、事実よりやや柔らかい印象になります。
<使用例>
- その噂が本当かどうか、納得のいく説明を求める
- 因みに君がアルバイトをしているというのは本当か。うちは副業禁止である
- この駐車場跡地が売却されたというのが本当なら、他の用途に転用可能かどうか調べたい
真実
嘘いつわりがないこと、本当のこと、またそのさまを指します。事実、ファクトと比べて言葉の印象に感情的な要素がプラスされます。
<使用例>
- 真実に基づいた行動の徹底をお願いした
- 先日のコンサルティングでクレーム事案が発生した件について、担当者Aの発言が真実かどうかを見極めたい
ファクトの対義語
ファクトの対義語の中から、ここでは、「嘘」「フェイク」について紹介します。意味や用法を知り、さまざまなシーンに応じた使い方ができるようにしましょう。
嘘
事実でないことや、相手を騙すための事実と異なる言葉、また偽りという意味です。にわかに信じられない話を聞いた際に、感嘆詞として「嘘」と使う場合もありますが、「自分の話を疑われた」と感じる方もいるため注意しましょう。
<使用例>
- レジャー施設建設に際して、くぬぎ山はできる限り伐採しないと約束したのは嘘だったのか
- この映画には、真実と嘘を見分けるさまざまなファクターがちりばめられている
フェイク
ニセモノや模造品、まやかしという意味です。英単語の「fake」を由来とするカタカナ語であり、ビジネス用語としても日常会話でもよく使う言葉です。
<使用例>
- このアパレルメーカーの特長は、ウールのような天然素材から廉価なフェイクファーを使用したものまで、幅広く取り扱いがあることだ
- 何をもってこの情報が正しいと言えるのか。すでにファクトチェック済みである。これはフェイクニュースである
ファクトの英語表現
英語で「fact」と綴り、(~という)実際(の状況)、現実、事実という意味です。また、作り話に対して本当の話、実話、真実という意味があります。
<使用例>
- Un motionable facts
動かざる事実 - Know the facts
事実を知る - This verification proved that the case was a fact.
この検証から、当事案は事実だと証明された
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以上、ファクトの意味、用法、類語や対義語、英語表現などについて解説してきました。今回おさらいした「ファクト」それに関連する用語をビジネスにおいてさまざまな場面で活かしていきましょう。