今や動画はYouTubeのように眺めるだけのメディアではなく、Instagramのストーリーをはじめ、Twitterに追加されたフリートなど、シェアするためのものとして静止画同様に身近なものになりつつあります。そんな折、2020年10月31日に発売されたジンバル付き小型カメラ「DJI Pocket 2」。そのコンパクトさによる手軽さで大人気を博した「Osmo Pocket」の後継機という位置づけで、センサーが大型化して高画素化した他、レンズが広角化してさらに自撮りをしやすくなっているとのこと。というわけで今回は、全く動画撮影の経験がない筆者が「DJI Pocket 2」を体験したレポートをお送りしようと思います。
旧モデル「Osmo Pocket」からの進化ポイントは?
冒頭でも少し触れましたが、本製品はOsmo Pocketの後継機。本体価格は旧モデルの45,650円(税込)から、49,500円(税込)に少し値上がりしました。主な進化点としてはセンサーが1/1.7型に大型化し、画角はフルサイズ換算で20mmに広角化。明るさがF1.8になったことで、強力な手ブレ補正と相まって夜間など暗いシーンでの動画撮影機能もさらに高めています。輝度差の大きなシーンでも破綻なく収録できるHDRには対応していますが、カラーグレーディングを前提としたlog撮影には対応していません。D-Cinelikeモードを使用することで、シャドー部のディテールを保持した撮影ができるそう。主な仕様は以下のとおりです。
製品名 | Osmo Pocket | DJI Pocket 2 |
---|---|---|
センサーサイズ | 1/2.3型CMOS | 1/1.7型CMOS |
画角と明るさ | 換算26mm、F2.0 | 換算20mm、F1.8 |
HDR | ー | ◯ |
バッテリー | 875mAh | 875mAh |
大きさ | 121.9×36.9×28.6mm | 124.7×38.1×30mm |
重さ | 116g | 117g |
税込価格 | 45,650円 | 49,500円 |
画面をスワイプして操作画面にアクセス
まずは外観からチェックしていきましょう。操作系はとてもシンプルで、側面の電源ボタンを除くとボタンは正面の2つだけ。赤い左側のボタンを押すことで録画の開始/停止を行います。ボタンの上部にはディスプレイを搭載しており、ライブビューの他、タッチ操作にも対応して設定の変更を行えます。最初はこのディスプレイがタッチ操作に対応しているとは思わず、設定画面をどこから呼び出すのかわかりませんでしたが、この画面を上下左右にスワイプすることで設定画面を呼び出すことができました。
本体にデータ保存用のストレージを内蔵しないので、まずmicroSDカードを挿入しましょう。最大256GBに対応しているとのことだったので、手持ちの256GBのカードを使ったところすんなりと認識しました。UHS-Iスピードクラス1以上の高速なストレージを推奨しています。
電源オンは正面右ボタンの長押しか、側面ボタンの長押しで起動します。側面ボタンを長押しして起動するとなぜかジンバルが一旦こちらを向き、その後くるりと反転するモーションが入ります。ジンバル付きカメラを触るのは初めてだったので、電源オンでいきなりカメラの「首がすわった」のに驚きました。かなりクイックに応答して姿勢を維持するので、生きているみたいです。
充実の付属品をチェック
同梱品として、カバーや三脚マウント、ミニ操作スティック、スマートフォン用アダプター(USB-CとLightning)が付属しています。なお、同梱品をさらに充実させた「Creatorコンボ」も64,900円(税込)で販売されており、こちらにはマイクロ三脚、広角レンズ、ハンドル、ワイヤレスマイクが付属しています。価格差がおよそ15,000円もあるため悩ましいところですが、「トークの音声収録に使いたい」「充電しながら三脚を使いたい」といった用途ではとても役に立ちそうです。
「Creatorコンボ」でなくとも、スマートフォンと接続して使えるアタッチメントが付属している点がポイント。iOSデバイス向けにLightning端子のものと、Androidデバイス用にType-C端子のものが用意されています。使用法もかんたんで、アプリ「DJI Mimo」を導入し、対応アタッチメントを装着したDJI Pocket 2とドッキングするだけ。アプリはファームウェアアップデートやデータのスマートフォン内への保存、YouTubeなど動画サイトへのリアルタイム配信機能まで備えます。スマートフォンの大画面でライブビューしつつ、iPhone内にデータを保存し、仮想ジョイスティックでジンバルを操作できるのでとても便利。でも合体するとかなり大きく目立ってしまうので、コンパクトな良さはかなり失われてしまうなと思いました。
撮影してみた
動画の撮影機能としては、最大4K(3,840×2,160ドット)60fpsでの撮影を行えます。でも今回は、映画っぽい効果を期待してフルHD(1,920×1,080ドット)24fpsに設定して撮影しました。撮影した動画を見返してみると、ジンバルによる強力な補正でかなりブレが抑えられていますが、製品の構造上、歩いたときの上下のブレは可動域の関係で多少揺れていました。上手に撮影するには歩法を極める必要もありそうです。
中でもすごいなと思ったのは、搭載するステレオマイクの品質が高い点です。ウインドスクリーンがないので強風時には風切り音が入ってしまいますが、本体だけの手軽な撮影でここまで録音もこなせるならかなり便利に使えそうです。下の動画は交通量が多い夜の白山通りで撮影したもので、イヤホンなどで聴くと臨場感を体感できると思います。少し大きな音が出ますので、再生時は注意してください。
適当な三脚に固定するだけで、タイムラプス撮影もかんたん。夕日が落ちる前の青みが強い空を階調豊かに撮影できました。最近はスマートフォンのカメラアプリにもタイムラプスモードが搭載されていることがありますが、画角が固定されてしまってただの定点撮影になりがち。DJI Pocket 2を使うことで、画角がゆっくりパンしていく個性的な動画を撮影できます。ちなみに、タイムラプスの撮影にはある程度長い時間が必要で、設定にもよりますが、15秒程度の動画に2時間ほど時間がかかりました。
静止画撮影でもジンバルはとても有用。パノラマ撮影ではひとりでに首が回って撮影してくれます。絶えず寄せては返している海を撮りましたが、つなぎ目のような違和感もなく、きれいに撮影できました。画角に太陽が入っている関係で少しコントラストが低下しているようですが、おおむね許容範囲内と言えそうです。
参考までに、自撮り時の画角についてもご紹介。デフォルトの状態でもフルサイズ換算で20mmとかなり広角なので、普通に腕を伸ばして撮るだけでも十分広く写せますが、「Creatorコンボ」に入っている広角レンズを使うとさらに広く写せます。
コンパクトボディに手ブレ補正と高品質マイクを凝縮した最強モデル
今回特に強く感じたのは、動画撮影という用途において、コンパクトで威圧感の少ないデバイスがどれほど気軽に使いやすいか、という点に尽きるということです。一眼カメラにしてもスマートフォンにしても、やはりどうしても周囲に撮影しているということを強く意識させてしまいます。静止画ならカメラを構える一瞬で済みますが、動画の場合そうはいきません。レビューに際して人が少ない海岸や河原で撮影を行いましたが、手のひらサイズでレンズも小さい本製品なら、観光地でも周囲に溶け込んで気楽に撮影を楽しめるのではないでしょうか。
このコンパクトさで強力な手ブレ補正が利用でき、さらに周囲の臨場感を高めて伝えるステレオマイクを搭載した本製品。初心者には完成度が高く、あまり目立った不満を洗い出せないほどの製品でした。気兼ねなく外出できるようになれば、きっと役に立ってくれるに違いありません。